先日、連合から2009年の春季生活闘争方針が発表されました。サブプライムローン問題に端を発する世界的な金融危機、その結果、日本国内で派遣切り、内定取消し問題が吹き荒れるなか、連合から出された春闘の要求はどのようなものなのでしょうか。今回は、そのことについてみてみたいと思います。
連合の2009年春闘生活闘争方針
・賃上げの要求
連合は春闘に向けて、「賃上げ」を前面に掲げた要求を打ち出していくといいます。物価の上昇に見合った賃金が必要だというのです。
・まったく的外れな状況認識
確かに実質賃金の下落が生活を圧迫していることは事実です。しかし、本当にこれが今、ナショナルセンターが行うべき最重要課題なのでしょうか?
サブプライム問題の影響で、厚生労働省や、首相までが異例の対策を打ち出さなければならないほどに、非正規雇用の雇用が破壊されています。厚生労働省の発表では、確認できるだけで3万人以上が解雇されました。私たちの知る情報では、報道ベースだけで、製造業派遣労働者に限定しても2万人を超える解雇が確認されていいます。
また、入職前の「内定切り」もかなりの数に上っているといいます。
彼らの雇用の維持がナショナルセンターの掲げるべき最大の課題ではないでしょうか。
・厳しさの中にある非正規雇用
ここでサブプライム危機の結果、特に大きな被害をこうむっている製造業非正規について、状況を確認しておきたいと思います。製造業非正社員(期間工、派遣)は、地方の正規労働からリストラされた人、学校卒業後に正規の就職先が見つからなかった人たちが大量に流れ込んでいる職場です。
彼らの多くは派遣会社、製造メーカの寮に住んで働いています。また、賃金水準が低いために、生活費を派遣会社から前借していることも珍しくありません。もちろん、貯金をすることもとても困難です。
こうした低賃金で不安定な労働市場が作られてきたこと自体も問題ですが、今生じていることは、このような限界ぎりぎりを強いられてきた人たちの雇用が、数万という規模で破壊されているということです。彼らの多くにとって、職を失うこととは、寮を追い出されることを意味し、住居を失う問題に直結します。前借をしていれば、最後の月の賃金は返済に回されてしまいますから、一文無しで路上に放り出されることになってしまう。これは、緊急を要する事態です。一部の報道では、愛知県の解雇された派遣労働者が、ネットカフェに流れ込んでいるということも言われています。
・福祉からの排除
こうした派遣・期間工の少なくない部分が雇用保険に加入していません。政府は基本的に非正規雇用を雇用保険の対象からはずす方針をとってきたためです。彼らから言わせると、非正規雇用にとって雇用保険は「退職金」のようなもので、少し働いて、すぐにやめては受給するという具合に、無駄遣いの材料にされてしまう、というのです。
こうして雇用保険は一年以上継続して就労が見込まれる労働者に限って加入できるという制度になってしまいました。そのため、本当に受給が必要とされている非正規雇用労働者の加入者が少ないという、逆転現象が生じています。
しかも雇用保険の受給期間は継続して加入した期間によって決まります。つまり、不安定な労働をしているほど、いざというときの給付期間は短くなる仕組みになっています。こうした福祉からの非正規雇用の排除政策を見直し、緊急の対策を行う必要があります。連合の政治力があれば、こうした施策を政府に要求することができると思います。
・労働組合として要求できること
また、労働組合だからこそ要求できることに、解雇された労働者の雇用継続や、寮の継続使用などが考えられます。また、解雇するにしても、それなりの生活保障手当てを支払うことなども考えられます。こうした要求についても、連合に期待したいところです。
・正社員の賃上げを見送ってでも、雇用の維持を
12月2日のニュース番組、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」で、連合の幹部の方がインタビューを受けておられました。そこで発言された内容は、「賃金の問題とは切り離して、雇用の維持についてはしっかり取り組む」というものです。
これに対し、番組のコメンテーターからは、そこが切り離せないから問題なのだ、連合は雇用維持に専念すべきではないか、と批判されていました。
これは、一定程度支持されてしまう批判なのではないかと思います。これでは、ますます労組への社会的な批判を高める危険性があります。第一義的に必要なことと、二義的なものが逆転してしまっているような印象を受けます。(実際には企業はまだまだ高収益体制にありますし、これまでの蓄積も半端ではありません。これを少し分配にまわすだけで、賃上げも雇用維持もできないことはありません。ですから、連合の主張が完全に間違っているわけではありありません)。
賃上げ要求よりも、今まさに路上に投げ出されている労働者の雇用を維持すること、これは場合によっては正規雇用の賃金を少し引き下げてでも、要求するべき内容です。少なくとも、これを賃上げよりも優先する課題として打ち出す必要があります。連合にとっても、こうした取り組みによって社会的支持を獲得し、組合員を増やすことができるのではないでしょうか。
(こうした記事を書いているうちに、連合の会長が首相に申し入れを行いました。その内容は雇用維持への対策を要求するもので、それなりの内容です)。
→政労会見
→要請内容
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