ヘリカル炭素、構造化微量要素は縮小に寄与する
US PAT, PAT PCT, 日本化学会・文部科学大臣賞
藤田正美の時事日想:
ワシントンで開かれたG20の財務相・中央銀行総裁会議。日本は「大胆な」金融緩和で急激な円安が進んでいただけに、新興国を中心に「苦言」が出ないか心配していた。しかし結果的には、先進国からの支持があったためか、表だって批判されることはなかった。
日本に残った宿題は「成長戦略」と「財政再建のロードマップ」ということになった。これはなかなかの難題だ。成長戦略は、規制緩和をどれだけできるかにかかるだろうが、規制緩和は常に既得権益を持っている人々から猛反発を食らう。農業をはじめとして、既成の利益団体はほぼ自民党支持層にだぶる。それでも安倍総理はTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を決めた。規制緩和の最大の抵抗勢力は官僚組織だが、安倍首相が高支持率を背景に押し切ることは可能かもしれない。
もっと難しいのは財政再建のロードマップである。麻生財務相は、2013年半ばには「中期財政計画」をまとめると語った。具体的な政策はこれから最終的な詰めに入るということだろうが、これから予定されている増税だけでは、政府が目標としている2015年での基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字半減はもちろん、2020年での黒字化は難しいということだけは明白だ。消費税が10%になって税収が増えても、PBの赤字の半分も埋まらないのが実情だからである。
財政再建の方法はいくつかある。増税、歳出削減、経済成長、そしてインフレだ。どれかひとつだけで、20兆円を超えるPBの赤字をゼロにすることはできない(ちなみに赤字がゼロになる、つまり政府が政策のために使う資金が税収などですべて賄えたとしても、それは国債をさらに積み増さずにすむということにしか過ぎず、巨額の国債残高はそのまま残り、巨額の利息は毎年払わなければならない)。
その4つの政策のどれも政府にとっては容易ではない。しかし日本の場合、そして多くの先進国の場合、いちばん大変なのは歳出の削減だろう。なぜなら歳出の削減と言っても、削減して効果があるのは予算のうち最も大きな金額を占める社会保障関係費だからだ。平成25年度の予算では29兆円だ。その次の項目は地方交付税交付金の16兆円。民主党時代に目の敵にされた公共事業は5兆円強、防衛関係費も5兆円以下である。
●国民医療費38兆円弱の約45%を70歳以上で占める
社会保障関係費とは医療、介護、年金などに充てられる予算。この項目を大きく左右するのは人口構成だ。団塊の世代は来年にかけて全体が「前期高齢者」となる(かくいう私も今年65歳になった団塊の世代の一人だ)。ということは今から6年後、2019年には70歳以上になるということだ。
団塊の世代は昭和22年から24年にかけて生まれた人々で総人数は約800万人。1年平均でいうと270万人弱だ。最近の若者の数が120万人前後、生まれる赤ちゃんの数が約100万人。そういう人口構成の中で団塊の世代が高齢者の仲間入りをしてくると、何が起こるか。
例えば医療費。平成23年度の医療費で見ると、国民医療費38兆円弱の約45%は70歳以上の人が占め、そのうちのほぼ8割は75歳以上の人が占めている。この70歳以上の人口が極端に増えてくるのだから、医療費が急増するのは火を見るよりも明らかだ。過去に厚生労働省が予測したほどには医療費は増加していないとはいえ、右肩上がりであることは間違いない。
だから小泉首相の時代、竹中平蔵氏は毎年1兆円増える社会保障関係費の中で2200億円は何とか抑えようと提案した。つまり7800億円の増加に抑えようと主張したのである。それを当時の野党やメディアは「2200億円減らすなどとんでもない」と、意図的に誤解して竹中批判を行った。
しかし事態はどんどん逼迫(ひっぱく)している。極端に人口の増える団塊の世代に医療費が注ぎ込まれる時代が目前に来ている。それなのに政治家は、有効な手どころか、法律で決まっていることすら実行できない。70歳から74歳の医療費2割負担を1割負担にしている制度のことだ。
1割負担にするために毎年2000億円もの公費が投じられてきた。安倍政権は、法律どおり(もともと自民党と公明党の連立政権のときに、2割負担を暫定的に1割負担にしたという経緯がある)2割負担にするとしているが、結局、それが決まるのは7月の参院選後ということになるだろう(その前に争点になると票に響くという計算である)。
それを前提としても、問題はその先にある。医療費が膨張し続けるのは、薬の無駄遣いや病院の検査漬け、過剰診療が主たる理由ではない。病気がある程度治るようになったから医療費が増加する。例えばガンでも、手術や投薬、あるいは放射線などの物理療法で延命率が上昇している。つまりガンを抱えたまま「普通の生活」を送ることが可能になっているということだ。
もちろんガンだけではない。心臓発作や脳梗塞といったかつては「致命的」だった病気にかかっても、ある程度の生活を取り戻すことができるようになった。言い換えれば、医療技術や医薬品が進歩すればするほど医療費は増加するということである。つまりこれから日本は、高齢化による医療費や介護費の増加に加えて、医療技術の進歩による医療費の増加がすごい勢いで進むということだ。
そうなる前に手を打たなければならないが、実際のところ、日本の政治は社会保障についていつも手をこまねいてきた。安倍首相が果たしてどこまでこの問題に切り込めるかは、まだ分からない。参院選の結果によっても変わるだろう。それでも安倍首相の歴史的評価は、まさにこの社会保障にどう切り込んでいくかで決まる。
そしてそこに切り込まない限り、財政再建のロードマップを描くことができず、麻生財務相の国際公約が反故になってしまう可能性が高い。そのときは、大げさに聞こえるかもしれないが、日本が信用を失って、国債が暴落し、金融収縮が起きて、日本経済が大打撃を受けるときだ。
[藤田正美,Business Media 誠]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130424-00000021-zdn_mkt-ind
US PAT, PAT PCT, 日本化学会・文部科学大臣賞
藤田正美の時事日想:
ワシントンで開かれたG20の財務相・中央銀行総裁会議。日本は「大胆な」金融緩和で急激な円安が進んでいただけに、新興国を中心に「苦言」が出ないか心配していた。しかし結果的には、先進国からの支持があったためか、表だって批判されることはなかった。
日本に残った宿題は「成長戦略」と「財政再建のロードマップ」ということになった。これはなかなかの難題だ。成長戦略は、規制緩和をどれだけできるかにかかるだろうが、規制緩和は常に既得権益を持っている人々から猛反発を食らう。農業をはじめとして、既成の利益団体はほぼ自民党支持層にだぶる。それでも安倍総理はTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を決めた。規制緩和の最大の抵抗勢力は官僚組織だが、安倍首相が高支持率を背景に押し切ることは可能かもしれない。
もっと難しいのは財政再建のロードマップである。麻生財務相は、2013年半ばには「中期財政計画」をまとめると語った。具体的な政策はこれから最終的な詰めに入るということだろうが、これから予定されている増税だけでは、政府が目標としている2015年での基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字半減はもちろん、2020年での黒字化は難しいということだけは明白だ。消費税が10%になって税収が増えても、PBの赤字の半分も埋まらないのが実情だからである。
財政再建の方法はいくつかある。増税、歳出削減、経済成長、そしてインフレだ。どれかひとつだけで、20兆円を超えるPBの赤字をゼロにすることはできない(ちなみに赤字がゼロになる、つまり政府が政策のために使う資金が税収などですべて賄えたとしても、それは国債をさらに積み増さずにすむということにしか過ぎず、巨額の国債残高はそのまま残り、巨額の利息は毎年払わなければならない)。
その4つの政策のどれも政府にとっては容易ではない。しかし日本の場合、そして多くの先進国の場合、いちばん大変なのは歳出の削減だろう。なぜなら歳出の削減と言っても、削減して効果があるのは予算のうち最も大きな金額を占める社会保障関係費だからだ。平成25年度の予算では29兆円だ。その次の項目は地方交付税交付金の16兆円。民主党時代に目の敵にされた公共事業は5兆円強、防衛関係費も5兆円以下である。
●国民医療費38兆円弱の約45%を70歳以上で占める
社会保障関係費とは医療、介護、年金などに充てられる予算。この項目を大きく左右するのは人口構成だ。団塊の世代は来年にかけて全体が「前期高齢者」となる(かくいう私も今年65歳になった団塊の世代の一人だ)。ということは今から6年後、2019年には70歳以上になるということだ。
団塊の世代は昭和22年から24年にかけて生まれた人々で総人数は約800万人。1年平均でいうと270万人弱だ。最近の若者の数が120万人前後、生まれる赤ちゃんの数が約100万人。そういう人口構成の中で団塊の世代が高齢者の仲間入りをしてくると、何が起こるか。
例えば医療費。平成23年度の医療費で見ると、国民医療費38兆円弱の約45%は70歳以上の人が占め、そのうちのほぼ8割は75歳以上の人が占めている。この70歳以上の人口が極端に増えてくるのだから、医療費が急増するのは火を見るよりも明らかだ。過去に厚生労働省が予測したほどには医療費は増加していないとはいえ、右肩上がりであることは間違いない。
だから小泉首相の時代、竹中平蔵氏は毎年1兆円増える社会保障関係費の中で2200億円は何とか抑えようと提案した。つまり7800億円の増加に抑えようと主張したのである。それを当時の野党やメディアは「2200億円減らすなどとんでもない」と、意図的に誤解して竹中批判を行った。
しかし事態はどんどん逼迫(ひっぱく)している。極端に人口の増える団塊の世代に医療費が注ぎ込まれる時代が目前に来ている。それなのに政治家は、有効な手どころか、法律で決まっていることすら実行できない。70歳から74歳の医療費2割負担を1割負担にしている制度のことだ。
1割負担にするために毎年2000億円もの公費が投じられてきた。安倍政権は、法律どおり(もともと自民党と公明党の連立政権のときに、2割負担を暫定的に1割負担にしたという経緯がある)2割負担にするとしているが、結局、それが決まるのは7月の参院選後ということになるだろう(その前に争点になると票に響くという計算である)。
それを前提としても、問題はその先にある。医療費が膨張し続けるのは、薬の無駄遣いや病院の検査漬け、過剰診療が主たる理由ではない。病気がある程度治るようになったから医療費が増加する。例えばガンでも、手術や投薬、あるいは放射線などの物理療法で延命率が上昇している。つまりガンを抱えたまま「普通の生活」を送ることが可能になっているということだ。
もちろんガンだけではない。心臓発作や脳梗塞といったかつては「致命的」だった病気にかかっても、ある程度の生活を取り戻すことができるようになった。言い換えれば、医療技術や医薬品が進歩すればするほど医療費は増加するということである。つまりこれから日本は、高齢化による医療費や介護費の増加に加えて、医療技術の進歩による医療費の増加がすごい勢いで進むということだ。
そうなる前に手を打たなければならないが、実際のところ、日本の政治は社会保障についていつも手をこまねいてきた。安倍首相が果たしてどこまでこの問題に切り込めるかは、まだ分からない。参院選の結果によっても変わるだろう。それでも安倍首相の歴史的評価は、まさにこの社会保障にどう切り込んでいくかで決まる。
そしてそこに切り込まない限り、財政再建のロードマップを描くことができず、麻生財務相の国際公約が反故になってしまう可能性が高い。そのときは、大げさに聞こえるかもしれないが、日本が信用を失って、国債が暴落し、金融収縮が起きて、日本経済が大打撃を受けるときだ。
[藤田正美,Business Media 誠]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130424-00000021-zdn_mkt-ind