「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

ダブリンでクリスマスを

2017-12-24 | 2017年イベント
というわけで、アイルランド共和国の首都ダブリン Dublinに来ました。
北アイルランドの首都ベルファスト Belfastから列車で南へ約2時間の距離にあるアイルランド島最大の都市です。都市圏には100万人以上の人口が集中する、アイルランドの政治・経済・交通・文化の中心地ですね。
実は、ダブリンに来たのは私にとって初めての体験です。

 


まず、アイルランド最古の名門大学トリニティー・カレッジ Trinity Collegeに足を運びました。1592年にエリザベス1世に創設された、伝統ある大学です。北アイルランドのクイーンズ大学ベルファスト Queen’s University Belfastの創立年が1845年ですから(ただし前身となる学術機関は18世紀以前まで遡る)、言うまでもなく、アイルランド島で最古の学術機関です。数多くの政治家、思想家、文筆家、自然科学者を輩出しており、ヨーロッパでも屈指の名門大学といえるでしょう。ケンブリッジ大学のトリニティー・カレッジと時折間違われることもありますが、もちろん、異なる組織です。
ここにはStar Warsのジェダイ図書館のモデルとも言われるアイルランドが誇る「オールド・ライブラリー Old Library」があります。そして、そこにはアイランドの至宝「ケルズの書 The Book of Kells」が所蔵されています。今回は残念ながら時間がなく、オールド・ライブラリーの内部は見学しませんでしたが、一生に一度は拝見したいものですね。

 


次に、クライスト・チャーチ大聖堂 Christ Church Cathedralと聖パトリック大聖堂 St Patrick’s Cathedralを観ました。ともにダブリンを代表する大聖堂ですが、さすがに圧巻の迫力でしたね。聖パトリックはアイルランドにキリスト教を広めた守護聖人ですね。聖パトリックの命日3月17日は、現在のカトリック教会では任意の記念日とされるものの、アイルランドやアイルランド移民の多いアメリカでは「聖パトリックの日 St. Patrick's Day」として盛大に祝われており、聖パトリックの色である「緑色」が町中を彩ります。

私の拙い言葉では、ダブリンの素晴らしさをなかなか伝えきれませんが、本当に素敵な街だと思います。アイルランド島は、グレートブリテン島に比べると地味というか、日本にはあまり知られていませんが、なかなか面白いです。ダブリン、ベルファストをはじめ、興味深い見どころは沢山あるように感じます。
来年も留学は続きますが、色々とあちこちへ足を運ぶ機会を設けたいと思います。




福島第一原発作業員、白血病の労災認定

2017-12-14 | 2017年イベント
福島第一原発で事故後に作業に従事していた方が白血病を発症し、労災認定されたと昨日報道がありました。白血病としては3人目、他に甲状腺がんで認定された方が1名いらっしゃるとのことです。下記はNHKニュースから引用しました。


『東京電力福島第一原子力発電所の事故で、原子炉格納容器への注水作業などに当たっていた東京電力の40代の社員が、白血病を発症し、厚生労働省は、被ばくしたことによる労災と認定しました。
労災認定されたのは、去年まで19年余り、福島第一原発で機器の保全業務などを担当していた東京電力の40代の男性社員です。

厚生労働省によりますと、男性は、事故直後から9か月にわたり津波の被害の確認や1号機や3号機の原子炉格納容器への注水作業に当たっていたということで、去年2月白血病を発症し、労災を申請しました。

男性の被ばく線量は99.3ミリシーベルトで、厚生労働省は、白血病の発症と相当な因果関係があるとして労災と認定しました。

福島第一原発では事故以降、ことしの5月までに、およそ5万6000人の作業員が収束作業に当たっていて、白血病や甲状腺がんを発症して労災が認められたのは、今回で4人目となります。』


事故後累積被ばく線量は96ミリシーベルトということで、問題は100ミリシーベルト以下であることですね。過去に認定された方も100ミリシーベルト以下でした。このような低線量域での放射線影響をどのように評価するべきなのか、放射線生物学的な課題としてはきわめて重大なのですが、正直、まだよく判っていないのです。私はこういう点に切り込みたいと願って放射線研究に取り組んできましたが、しかし、まだ力及ばずです。

放射線は難しい……

運命は勇者に微笑む ~羽生永世七冠~

2017-12-06 | 2017年イベント
12月4-5日に行われた第30期竜王戦第5局で羽生善治棋聖が勝利し、竜王位を奪取、そして永世七冠を達成しました。2008年にまさかの3連勝後の4連敗を喫してから9年、ついに偉業が成し遂げられました。羽生ファンとして私にとっても待ちわびた瞬間でした。
近年、人工知能が将棋、囲碁でついに人間を凌駕し、これらの盤ゲームを競うプロを取り巻く環境は劇的な変化を迎えています。その中で羽生さんがこれまで約30年にわたって王者であり続けているのはどうしてなのか。将棋に限らずともまさに「一芸は道に通ずる」というのでしょうか、一流の一流たるゆえんというものを羽生さんは体現しているようにも見えます。つまり、常に挑戦し続け、自己変革していくことが大事なのだと。

運命は勇者に微笑む

この言葉は羽生さんの好きな言葉として広く知られていますが、勇気をもって果敢に挑むことの大切さを私たちに教えてくれます。運命の女神はきっと、どんな苦境においても勇気を奮って一歩踏み出すものにこそ、笑顔を見せてくれるのでしょう。
私には羽生さんのような卓越した才能はありません。しかし、それでも勇気をもって、せめて努力し続けたいと改めて思いました。

北朝鮮ミサイル発射

2017-11-28 | 2017年イベント
私はニュースを見ていなかったのですが、知人から「また日本にミサイルを撃ったみたいだよ」という連絡があってBBCを見たら、今度は本州のすぐ近くに落ちたとのこと。排他的経済水域ですね。
私の所属する研究センターには北朝鮮籍の方はいません。私も今は北朝鮮人とどんな顔して会えばいいのかよく判らないので、周辺に北朝鮮の人たちがいないこの状況は助かると言えば助かるのですが、いずれ英国にいる北朝鮮人の意見も聞いてみたいところではあります。

純粋な疑問なのですが、現時点で日本の主要都市にミサイルを撃ち込まれた場合、それを防ぐ手段はあるのでしょうかね。
現実にミサイルが次々と発射されている訳で、「発射するのを防ぐ」という外交的な試みはことごとく失敗しているわけですから。もはや撃たれた後のことをちゃんと考えないといけないと思います。政府レベルにおいても、私たちひとりひとりの市民レベルにおいても。仮に自分の近くにミサイルが落ちた時に自分が吹き飛んだ後の場合のことは考えなくていいとしても、私自身は無事でありながら知人、親戚を含めてどこかで死傷者が出たような場合にはどうするか。あまり考えたくはありませんが。

Belfast Waterfront で国際学会

2017-11-27 | 2017年イベント
Belfastでは27日(月)から30日(木)まで欧州個別化医療学会が開催中であり、このクソ忙しいのに私も参加せざるを得ないという立場なので、Waterfrontというカンファレンス会場まで足を運んでいます。ウェルカムパーティーの招待状も届きましたが、残念ながらドレスコードに適した服が手元にないですし、色々と忙しいのでそちらは断りました。欧州中から個別化医療のエキスパートが集まるという大々的な宣伝ではありましたが、残念ながら、参加者数はそこまで大した規模ではないようです。おそらく日本人の参加者も私だけでしょう。
しかし、医療の方向性として、早晩、Personalized Medicine(個別化医療)、Precision Medicine(精密医療)に向かわなければならないのは明らかであり、今後、この学会の重要性もより増してくる可能性があるとは思います。2015年に当時の米国オバマ大統領がPrecision Medicine Initiativeを発表して以来、「個別化」を目指す世界の医療競争は激化しています。米国に負けないように、欧州も精一杯の様子ですね。

私たちひとりひとりは、言うまでもなく、それそれが唯一の存在です。たとえば、厳密に言うと、薬の効き方もひとりひとりで微妙に異なっていて、中には副作用が強く出る人もいれば、そうでない人もいるわけです。このような個人差に着目して、ひとりひとりに適した医療を提供するべきであるという考えが、近年、強くなってきています。それでは、具体的にはどうするべきか。様々な遺伝子やバイオマーカーが報告されているわけですが、それらをどうやって臨床現場に持ち込むべきなのか。まだまだ判らないことが多いです。
私は放射線感受性の個人差に関する発表を行う予定ですが、普段はお会い出来ないような他の参加者の方々と色々とお話しできる機会はやはり貴重ですね。

来週、某国際学会に参加する予定で、日本に帰国します。今年もそろそろ12月になりますが、忙しいせいか、時間の流れはあっという間です。残念ながら、今回もまた日本に滞在できる時間も限られておりますが、出来るだけのことをしたいとは思います。来年も日本と英国の間を頻回に往復することになりそうです。

Christmas Market クリスマス・マーケット 2017

2017-11-19 | 2017年イベント
今年もChristmas Market クリスマス・マーケットがBelfast City Hallで始まりました♪
私にとっては2度目のマーケットですが、これが始まると「いよいよ年の瀬だな~」という印象ですね。18日土曜日から12月23日まで開催される今年のマーケットでも、各国の食べ物などが屋台で売られていて(残念ながら和食は今年もなさそうでしたが)、とても活気があります。会場では、地元の人たちだけでなく、観光客の姿も多く見ることが出来ました。

今年もあっという間に月日が経っていきました。
「少年老い易く学成り難し一寸の光陰軽んずべからず」という言葉がありますが、なかなか凡人には難しいものです。目前の楽は将来の苦であると知りつつも、水が低きに流れるように、ついつい楽な道を選んでしまいます。
ラストスパートを今から始めましょう。

World Diabetes Day 世界糖尿病の日 2017

2017-11-14 | 2017年イベント
本日11月14日は「World Diabetes Day 世界糖尿病の日」として知られています。どうして今日が糖尿病に関係するのか長い間ずっと疑問だったのですが、最近Google先生に教えてもらったら、「インスリンを発見したカナダ人医師フレデリック・バンティング Dr. Frederick Banting の誕生日に由来する」とのことですね。
この日はあちこちでブルーサークルが掲げられ、ブルーのライトアップで彩られます。Belfastにも特別なブルーのライトアップがあるかなと思って、大学周辺を探してみたのですが、残念ながら私には見つけられませんでした。

さて、1921年にバンティング医師らが発見したインスリンについて、東北大学関係者の端くれとしては、熊谷岱蔵(くまがいたいぞう)にも言及しなければならないでしょう。バンティング医師とほぼ同時期に、独立に、日本でも血糖値を制御する因子(つまりインスリン)を報告し、解析していた医学者がいました。それが東北帝国大学医学部教授の熊谷岱蔵でした。

Kumagai, T., Osato, S. Experimentelles Studium der inneren Sekretion des Pankreas. Erste Mitteilung. Tohoku Journal of Experimental Medicine 1920;1:153-166.

論文は東北大学が刊行する総合医学誌Tohoku Journal of Experimental medicine創刊号に掲載されています。このドイツ語論文が1920年ですから、バンティングらがインスリンを精製して物質的基盤を与えた1921年よりも前ですね。研究業績の大きさとしては、やはり実際にインスリンを精製し、臨床応用したバンティングに軍配が上がるとは思いますが、熊谷の研究が世界のトップを競っていたことがよく判ります。
インスリンの他にも熊谷教授は様々な医学テーマに取り組まれ、多彩な業績を残しています。その後、東北帝国大学第7代総長(最後の東北「帝国」大学総長でした)、附属抗酸菌病研究所(現:加齢医学研究所)初代所長などを歴任しました。

北里柴三郎の後、明治時代後半には日本の医学研究は西洋に追いつき、第二次世界大戦前も一部では当時のノーベル賞受賞者らをも凌駕する成果を挙げていました(山極勝三郎らの発がん実験の成功、高木兼寛らの軍艦「筑波」による航海実験の成功など)。熊谷岱蔵もその1人だったと言えるのかもしれません。

私は浅学非才の若輩ですが、偉大な先達のせめて足元くらいには及ぶように、頑張りたいものです。

イラン・イラク地震

2017-11-13 | 2017年イベント
11月12日に発生したイラン・イラク地震は徐々に状況が明らかになりつつあります。マグニチュードは7.3とのことですが、震源地はイラン・イラク国境近辺のだいぶ内陸になるようですね。東日本大震災のような津波による被害はないようですが、地震によって多くの方々が死傷されているようです。早急な救援が望まれますが、私には出来るだけ多くの方々が助かるように祈念することしか出来ません。

放射線小咄 ~ キュリー夫人生誕150年

2017-11-07 | 2017年イベント
ポーランド生まれのフランス放射線研究者マリー・キュリー(Maria Skłodowska-Curie)は1867年11月7日にポーランドのワルシャワに生まれました。ノーベル賞を2度受賞した「キュリー夫人」の輝かしい業績については今更語るまでもありませんが、1895年のX線発見以降の放射線研究黎明期における偉人ですね。今日は彼女が産まれてから150年目でした。

マリーの生涯については、すでに優れた著作が数多くあり、とくに次女のエーブ・キュリー(Ève Denise Curie)による伝記が知られています。彼女の人生はラジウム精製などに成功して研究者として栄光を極めた一方、ロシア帝国統治下ポーランド出身の苦境、男尊女卑の科学界での苦闘など様々な葛藤を抱えたものでした。1898年にキュリー夫妻が見出した新元素はPoloniumu(元素番号84)と名付けられましたが、彼女はどのような感慨を以て故国を元素の名前の中に永遠に残そうとしたのでしょうか。

彼女の医療に関する貢献としては、とくに第一次世界大戦中に数多くのフランス人兵士を救ったと言われる移動式X線撮影装置の開発が知られています(彼女を讃えてリトル・キュリーズLittle Curriesと呼ばれたそうです)。その後も、放射線の医療応用に関する研究を続け、今日の放射線医学に大きく貢献をしました。

Halloween 2017

2017-10-31 | 2017年イベント
ハロウィーンのイベントが英国北アイルランド第二の都市ロンドンデリーLondonderry/Derryで開催されました。「北アイルランドにこんなに人がいたの!?」と驚くほど、大勢が集まっていて、様々な仮装を見ることが出来ました。
私も、こちらでお世話になっているご家族とご一緒して、ロンドンデリーを訪ねたのでした。

 


仮装行列や花火などのイベントがありました。仮装行列は1時間かけてロンドンデリーの街中を練り歩くというものですが、私のパフォーマーの1人として参戦しました。楽しかったです。

ハロウィーンの起源はケルト文化とのことで、北アイルランドでも長い伝統を有する行事なのですが、「トリックオアトリート」やジャックオランタンなどの形式で一般に広まったのはやはりアメリカ合衆国の影響のようです。日本でも近年は楽しまれるようになってきていますが、北アイルランドの方が盛り上がりが大きい気がしましたね。
社会勉強の一環として、留学中にこのようなイベントに参加することが出来たのは、とても勉強になりました。

2017衆議院総選挙

2017-10-22 | 2017年イベント
立て続けに参加した国際学会行脚も一区切りついて、今週中にBelfastに戻ります。
北アイルランドのBelfastは10℃前後、日本は20℃前後、メキシコのCancunは30℃前後という気温差があり、そして、長距離フライトも身体には堪えます。連続した国際学会で発表を行うだけでなく、その間には種々の打ち合わせも立て込んでいましたし、正直言って体力の限界というのでしょうか、今回の遠征ではかなり疲労困憊しました。もう若くはないということなのかもしれませんね。ぐぬぬぬ。

さて、今日は総選挙ですね。
やや唐突な衆議院解散から始まり、野党の集合離散もあって、かなり混沌とした選挙戦が展開されてきました。森友・加計学園問題はたしかに「仲良し」安倍政権の問題の一つだったかもしれませんが、旧民主党政権時に原発事故問題や尖閣諸島中国漁船衝突事件で情報隠しを行っていたと思われる立憲民主党の方々がそれを追及しているのは「ブーメランではないのか?」というある種の滑稽さがあります。小池新党である希望の党もセンセーショナルな立ち上げとなりましたが、その成り立ちも含めて様々な論点や自己矛盾をはらんでいる恐れがあるように見えます。
それではどこに投票すべきなのか。
私自身、自分の思想と公約が全て一致する政党は存在しませんが、「どこが一番マシなのか」という相対的な評価軸で考えるべきなのだろうなと醒めた目で今回の選挙戦を見てきました。

Cancunでの学会で話したドイツ人研究者は「先の選挙はドイツの恥だった」と述べていましたし、スペイン人研究者は「カタルーニャ州の判断は頭痛の種だよ」と話していました。昨年のBrexit(英国EU離脱)や米国大統領選挙もそうだったのかもしれませんが、人びとは時に合理的な判断から逸脱した自制心の欠如を示してしまうのかもしれません。そのような意味では今年のノーベル経済学賞は、スウェーデンによる「ある種の痛烈な皮肉」というべきか、大衆心理が有する「軽挙妄動」を指摘してみせました。
判官びいきや浪花節が伝統的に好きなわれわれ日本人ですが、こと政治に関してはひとりひとりが慎重に合理的な判断を追及するべきなのではないかと、各国研究者と話しながらつくづく思いました。

我が国の明日はどうなるのでしょうか。

ワールドツアー2017 ~英国、日本、メキシコ~

2017-10-14 | 2017年イベント
ここ最近、カタルーニャの独立選挙、ラスベガスの乱射事件など様々な出来事が世界を揺るがしています。まさに諸行無常の世の中ですが、私も旅人の様にあちこちを移動する日々を過ごしており、なかなかこのブログも更新できませんでした。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです(『魔女の宅急便』風に)。
先週は横浜で国際学会に参加し、今週から来週にかけてはメキシコでの学会に来ています。どちらも私にとっての恩師たちが大会長を務めていらっしゃることもあり、私としても是非参加したかったのでした。私のスケジュールを見て、今の指導教官が「ワールドツアーみたいだね」と言った通り、先週からの英国、日本、メキシコの移動でほとんど地球一周くらいはしています。これから、メキシコ、日本、英国の「復路の旅」があるので、また地球一周分くらいは飛行機に乗らなければなりません。学会に参加するのは楽しいのですが、正直、狭いエコノミークラスの座席にはもはやうんざりしています。



パシフィコ横浜は私にとってはある意味で「ホームグラウンド」と言うべき場所なのですが、先日久しぶりに行ったら、「あれ? こんな場所だったかな?」と感じました。よく考えると、ここ数年ほどパシフィコに行っていなかったという驚愕の事実があり、時間が経つのはあっという間だと改めて思い知らされたのでした。学会会場でもしかしたら医学部の同期に会えるかなと思っていたのですが、残念ながら、そういう機会はありませんでした(私が気付かない非礼があったら申し訳ないですが)。
大会長の恩師と、学会の大御所にあたる先生から「福島について話して下さい」というお話を頂いたので、若輩の身でのこのこと出掛けて福島被災地のお話をしました。英国のOxfordなどあちこちで原発事故の話をしてきましたのですこしは慣れているつもりではありましたが、英語で話すのは今でも緊張しますね。日本人の聴衆からは時折、「先生の英語は早口ですね」と言われるのですが(それでもネイティブスピーカーに比べたらかなりゆっくり喋っているのですが)、今回は時間が限られていることもあって、すこし聞き取りにくいスピードで話してしまったかもしれません。
ああ、プレゼンテーションが上手くなりたい。

メキシコは最近、地震が多いので少し心配していましたが、開催場所はカリブ海側のCancunなので、今回の渡航ではとくに問題はありませんでした。初めてCancunに来ましたが、まさに天国みたいな場所であり、たいへん驚いています。ホテル地区には大きな豪華ホテルが立ち並んでいるのですが、今回の学会も、その中の一つのホテルの一部を借り切る形で開催されています。私の現在の指導教官が大会長なのですが、世界で最も大きな放射線研究コミュニティであるこの学会の大会開催を取り仕切る姿を見て、改めて敬意を抱きました(私のボス、マジ、凄いんです!)。
世界中から(主に米国から)著明な研究者たちが集まっているので、私も色々と勉強させてもらっています。
決して、バカンスを楽しんでいるわけではないのですニャ~


2017ノーベル賞ウィーク

2017-10-01 | 2017年イベント
今年もついにノーベル賞ウィークになりましたね。
今日、研究センターで会った知り合いから「明日、誰が受賞するかな?」と聞かれ、「判りません I have no idea」と答えておきました。ノーベル賞は10月2日月曜日に生理学・医学賞から順に発表されていきます。

とくに今年の生理学・医学賞は予想が難しいのはないでしょうか、おそらく臨床寄りの業績から選ばれるでしょうから(生理学・医学賞については基礎医学と臨床医学から交互に選出される傾向があると言われていて、昨年「オートファジー」は基礎医学的でした)。
臨床医学寄りの業績で日本人が受賞する可能性があるとしたら遠藤章先生(東京農工大特別栄誉教授)の「スタチンの発見」でしょうが、残念ながら、その可能性は低いように感じます。近年、腫瘍学分野に革命を起こした「腫瘍免疫治療学」の第一人者として名高いジェームズ・アリソン博士(James P. Allison)が単独受賞する可能性がやや高いような気がしますが、臨床医学系ではどの分野にも素晴らしい業績を有する大御所がいるので受賞候補が多すぎて、予想は容易ではありませんね。
つまり、今年の生理学・医学賞をどの業績に授与するのか、カロリンスカ研究所の判断について「お手並み拝見 We will see」というところではないでしょうか。

ノーベル賞大本命とも呼ばれる「ゲノム編集」の業績はおそらく化学分野になるのではないかと私は思います。なんとなれば「緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見とその応用」に対して2008年にノーベル化学賞が授与された時の選考判断と同じことになるのではないかということですね。
この場合、エマニュエル・シャルパンティエ博士(Emmanuelle Charpentier)とジェニファー・ダウドナ博士(Jennifer Doudna)が選ばれるのは当然として、3人目が誰かという問題が残ります。石野良純先生(九州大教授)が前述の2人と共同で受賞出来る可能性は、残念ながら、やはりとても低いだろうと感じます。おそらく、2017年日本国際賞同様、シャルパンティエ博士とダウドナ博士の2人だけの受賞になるのではないかという気がします。
その他、よく日本で願望込みで言われているリチウムイオン電池開発の可能性もあるのかもしれませんが、化学分野は近年は生化学分野からの選出がとても多いです(ほぼ2年に1回は生化学であり、昨年「分子マシン」は生化学ではない)。だから、今年もし生化学から選ばれるならば、やはりゲノム編集かなという印象です。

物理学賞は昨年は間に合わなかった(?)ともいわれる「重力波」か、あるいは「系外惑星」か。物理学分野については、専門外過ぎて、もはや見ているだけになります。文学賞、平和賞に至っては、もうほとんど興味はありません。とはいえ、もしも村上春樹氏が本当に受賞したら、すこし笑ってしまうかもしれませんが(昨年のボブ・ディラン氏(Bob Dylan)の受賞も面白かったですね)。

ノーベル賞ウィークでは、Nature誌やScience誌などの世界トップジャーナルにおいても、受賞者業績を報じるだけでなく、隠れた貢献者(あるいは不運にも受賞を逃した研究者)のことを採り上げて暗に選考を皮肉ったり、科学界でもノーベル賞がそれなりに話題にはなります。
言うまでもなく、ノーベル賞を受賞するような業績は、良くも悪くも新しい時代を切り拓いてきたものが多く、人類の科学史の流れを代表するものです。しかし、近年はある種の制度疲労を起こしているというべきか、ノーベル賞が「その時代を象徴する科学業績をちゃんと採り上げることが出来ているのか」というと必ずしもそうではないようです。生命科学もそうなのですが学際的な業績について評価するのが難しいという点で運用が厳しいわけで、昨今の科学の各専門領域の在り方からすると「物理学、化学、生理学・医学」というノーベル賞の尺度はもう古すぎるのかもしれません。
そもそも研究者は、べつに賞が欲しくて研究しているわけではなく、自分の知的好奇心を満たすためだったり、病気の克服など人類の更なる発展のために仕事をしているわけです。ノーベル賞を誰がもらったとか、日本人かどうかなど、くだらないといえばくだらないですね。

Alternative für Deutschlandの躍進 ~ドイツの選択~

2017-09-25 | 2017年イベント
今日は週明け月曜日でしたが、指導教官は完全に体調が悪そうなご様子で、私の風邪をうつしてしまったかなとちょっぴり申し訳なく感じました。来月には栄誉ある国際学会の大会長を務める予定なので、弟子としてはあまり無理をしないでもらいたいと思います(いつも迷惑ばかりかけている不肖の弟子ですが)。
私も来月は2つの大きな国際学会へ出席するため日本・横浜とメキシコを訪問する予定となっており(その間にも様々な打ち合わせがあり)、ほとんど英国には居ません。秋はいわゆる「学会シーズン」なので仕方ないとはいえ、やはり気忙しいものです。11月も欧州の学会、12月にはアジア・オセアニアの学会に参加する予定です。指導教官ほど多忙ではないのですが、私もそれなりに忙しくなってきました。これから年末にかけてハロウィーン、クリスマスというソーシャルイベントもありますが、体調管理に気をつけながら、なんとか乗り切りたいものです。

閑話休題。

昨夜から今朝にかけてドイツ人の知り合いたちが騒いでいたので何事かと思ったら、ドイツ総選挙で極右政党AfD (Alternative für Deutschland)が第3位政党になったのでした。
私が以前にお世話になったドイツ人女性研究者が「ドイツの恥」とまでSNSでコメントしていたように、ナチを想い起させるような主張も持ち併せているこの政党の躍進は、一部のドイツ人たちには受け入れ難い結果となったようです。「賢者は歴史に学ぶ」と言いますが、たいへんな危機感をもって、今回の出来事を受け止めている方々がいるようです。

たしかに極右政党を支持する人たちが10%以上も占めるというのはちょっと驚きではありますが、それだけ欧州の移民問題が深刻な社会問題であることを裏付けているのかもしれません。これはあくまで私見ですが、いわゆる移民問題は、単なる難民の移動と受け入れだけではなく、人種差別、宗教差別などの様々な社会病理をも包括しているように感じます。
誰にだって、なんとなく、好きな人・嫌いな人がいます。
嫌いな理由として、なんとなく意見が合わないとか、話し方がむかつくとか、見た目が生理的に受け付けないとか、雰囲気が気持ち悪いとか、色々な場合があるのでしょう。しかし、それらがなんとなく自分と肌の色が違うから、信じる宗教が違うから、などということになるともはや「差別」ということになるわけです。とはいえ、実際のところ、このあたりの境界判断は実に難しいでしょう。つまり、それぞれの個人的な嗜好と差別はどこで分けられるのかについて、かなり微妙な部分があるのではないかと私は疑っています。
自分の家の近所にいきなり自分たちとはバックグランドが全く異なる難民集団が出現した時に、「優しく受け入れてあげなさい」と綺麗ごとを言うのはとても簡単ですが、実際にはかなり精神的な抵抗があるのだろうというのは想像に難くありません。ドイツ人の多くは、先の二度の大戦で耐えがたい苦汁を飲み、今はEUの優等生であろうとする気質を持っているように見えますが、しかし、かつて世界中に植民地を有し、搾取を行い、今日の世界情勢を良くも悪くも作ったはずの列強の多くが移民を拒んでいる中(英国なんてさっさとEU離脱を宣告して移民受け入れ拒否反応中)、「なんで私たちがここにきて率先して移民を大量に受け入れなければならないのか」と疑問に思う方々もいるのかもしれません。そして、AfDに投票しようと人たちもいるのかもしれません。

今回の結果、Angela D. Merkel率いるメルケル政権はまだ続くことになりました。この女傑は21世紀初頭を代表する国際リーダーの一人として世界史の教科書に名を遺すことになるのでしょうが、この安定感のある長期政権の下、しかし、確実に何らかの変化がドイツ国内で起こりつつあるようです。
昨年は英国のEU離脱、米国のトランプ大統領選出がありました。今年になって極東ではミサイル問題、核実験問題が生じており、トランプ大統領が言うところの「ロケット野郎」が近くにいる日本も、世界情勢を見極めながら、きわめて慎重な判断が求められる局面でしょう。
ドイツではAfDが躍進しました。さて、日本はどうなるのでしょうか。

カルチャー・ナイト狂騒曲 Culture Night 2017 in Belfast

2017-09-22 | 2017年イベント
今週は、情けないことに風邪がぶり返して寝込んでしまったり、思いがけず喜ばしいことに研究助成・国際交流助成に複数採択されたり、すこし腹立たしいことに某指定国立大学法人から失礼なメールを受け取ったり、大変ありがたいことにかつてお世話になった知人が訪ねて来て下さったり、こうして振り返ると実に色々なことがありました。そして、週末金曜日の夜がCulture Nightだったのでした。もはや個人的にはグランドフィナーレという感じでした。
この夜はアイルランド中でお祭り状態になるみたいですが、Belfastでももちろん盛り上がりました。午前中の大雨が嘘だったかのように、午後から夜にかけて好天に恵まれたのでした。もしかしたら、人々の祈りが天に届いたのかもしれませんね。足元はややぬかるんでいましたが、傘を持たずに過ごしやすい気温の中で出かけられるのは嬉しかったですね。

今年もBelfastではSt Anne's Cathedral(聖アン大聖堂)を中心に各種イベントが行われ、盛況でした。上の写真は大聖堂で行われていた演奏会です。沢山の人々が詰めかけ、音の旋律を楽しんでいました。

外務省から在外邦人に対しては「テロ事件に巻き込まれる恐れがあるために大勢の人々が集まる場所には近寄らないでください」という注意が通知されてはいるのですが、こちらにも「付き合い」というものがある訳でして、クイーンズの知り合いと一緒に街へ繰り出したのでした。
実際、街中では大きな交差点に警察隊が展開されており、哨戒中の警察官も多くいて、治安については英国側も相当神経をとがらせている様子がうかがえました。昨年より良くも悪くも警備体制は充実していた印象です。そういう意味では、もしかするとテロの対象にもなりやすいのかもしれませんが、安心できるイベントでした。あちこちに警察隊と救急車が待機しており、テロリストもさすがに手出し出来ないものと思われましたね。

インターナショナルなイベントでもあるので、各国文化食の屋台などもあり、私はスペイン屋台でパエリアを頂きました。楽しい音楽が街に流れる中で食べたのですが、とても美味しかったです。各国から多くの観光客が来ている中で、残念ながら、日本人らしい観光客は1組しか見つけられませんでした。せっかくのイベントですから、もうすこし日本でも知名度が高まれば良いのになあとつくづく思います。

それでは皆様、have a nice weekend.