一寸の兎にも五分の魂~展覧会おぼえがき

美術展のおぼえがきと関連情報をすこしばかり。

ゆるくてかわいい「古染付と祥瑞」展@出光美術館

2013-06-26 | 展覧会
現在、出光美術館で開催中の「古染付と祥瑞」展にでている兎。



これを目当てに、大雨のなか、出光美術館に行ってきました。


(「祥瑞兎文輪花皿」明時代末期 景徳鎮窯)


展覧会HPでも

「日本人の好みを反映した中国陶磁を特集します」

と銘打ち、「日本人の好みに添う、あるいは日本からの注文によって作られたと考えざるを得ない、日本人の心にかなったやきものの機微や面白味をお楽しみください」とあるので、「日本人好み」ってどんなだろう、と楽しみに行って見ました。

「祥瑞(「しょんずい」と読むらしい)」というのは、明時代末期の景徳鎮(けいとくちん)で作られた磁器のうち、「崇禎時代(1628~44年)」に作られたものについて、日本人がつけた呼称とのことで、今回展示されている“古染付(こそめつけ)”(天啓時代:1621~27年)と並んで、中国製ながら「日本的な」意匠が特徴だそうです。


「古染付」では、詩人を背中に乗せたゆるい感じのロバとか(「古染付詩文手鉢」)

目がよっちゃった感じの羅漢が脱力系な「古染付羅漢文皿」とか、

真ん中にでかでかと「善」という文字が書かれ、そのまわりに「南無阿弥陀仏」と書かれた単刀直入なお皿(「古染付名号輪花鉢」)とか、

昔読んだ『シナの五人兄弟』という絵本にでてきそうなひしゃげたお城がかわいい「古染付月下城郭文皿」とか、

チラシやHPにはでていないけれど「かわいい」心をくすぐる図柄がいっぱいあります。

「古染付漁網文鉢」も、器を網にみたてて底に魚や海老がかかっている様子が描かれていて、とても遊び心あふれてます。

そして石洞美術館より特別出品の変わった形のお皿がたくさんありまして、これがまた兎や羊、魚などの動物やたけのこ、琵琶といったものをかたどった、とてもおもしろき品々なのですが、チラシにはもちろん、図録にも写真は載っていなかったようで、絵がはきも売られていないので、ぜひ現物をご覧になってください(石洞美術館HPに一部写真掲載があります)。


だいたい5つ以上のセットが揃っているのですが、たとえば兎セットでも一匹、一匹表情が微妙に違っていて、妙に色っぽいのや意地悪そうなのもあったりして、ユニークです。

「祥瑞」のほうは、ご紹介した兎のお皿以外にもいろいろありますが、全体的にこれでもか、これでもか、と柄を埋めたものが多くて、目がちかちかします。よくまあ、これだけいろいろ描いたなという感じですが、「古染付」のように余白を活かしたほうがむしろ、日本人好みではないか、とも思ったりします。

それから展覧会のおまけなのかなんのかよくわからないのですが、屏風がいくつか展示されておりまして、なかでも「藤棚図屏風」(長谷川派、桃山時代)というのがすばらしく気に入りました。

金地に白い藤というのが、びっくりするくらいゴージャス。

ライティングが絶妙なこともあり、金の背景から白い藤がぼんやり浮かび上がるように見え、幻想的です。

というわけで、大雨のなか見に行ったかいがあった「古染付と祥瑞」展。

6月30日(日)までなので、ぜひお見逃しなく。

いつもは17時までですが、明日、金曜日は19時までやっているそうです。

※追記:「古染付」については、7月15日まで根津美術館で開催中の「やきものが好き、浮世絵も好き」展(なんとも言えないタイトル)にもゆるかわな作品が展示されているようです。これもまた、近いうちに行かねば!


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