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「日本アルプス」(ウォルター・ウェストン著)

2008年09月19日 | 山の本
「日本アルプス~登山と・探検」Mountaineering and Exploration in the Japanese Alps
ウォルター・ウェストンWalter Weston著、岡村精一訳、平凡社ライブラリー(1359円)

先日、島々宿から沢に沿って歩き、徳本峠を訪れました。
長年訪れたいと思っていたコースで、その理由はこのウェストンが上高地に向かうため徳本峠を歩いているからです。

島々宿について、彼は次のように書いています(P39)。
「養蚕や炭焼きを業とするつつましやかな農民とか、近くの川魚を取ったり、もっと人里離れた山奥にたくさんいる大きな獲物(大きな熊や野猪や鹿や羚羊)の狩をしたりする猟師たちが、おもに住んでいるのである。」

そういえば、島々から徳本峠に向かう登山道脇に、新鮮で大きな熊の足跡を見つけましたよ~

そして徳本峠については(P44)、
「この峠は今、谷間の谷頭を閉ざす大きな、木々の茂った丘陵の斜面にのぼっている。(中略)一歩一歩踏みしめて行くごとに、露をひどく結んだ葉から爽やかな露のシャワーが落ちて来た。私たちは5時には、海抜2100mの徳本峠の一番上に達した。」
「この峠の最高点近くからの展望は、日本で一番雄大な眺望のひとつで、丸い形の輪郭や緑に包まれた斜面のある普通の山の風景とは、まったくその趣を異にしている」
そのとおり、峠からは実に素晴らしい眺望でした。

ウェストンは十数回も島々谷から徳本峠を越えて上高地に入り、穂高・槍に登っています。そして日本を去る前、徳本峠からの穂高を眺めて涙したそうです。

挿入図:ウェストンの日本アルプスにおける足跡(太線がウェストンの通った道)


ウェストンは、1888(明治21)年から1915(大正4)年の間に、日本へ3回訪れています。
日本滞在中、彼は大変精力的に日本の山へ登り続けました。
主な山をあげると

1891年 浅間山、槍ヶ岳(試登)、御岳、木曽駒ヶ岳
1892年 富士山、乗鞍岳、槍ヶ岳、赤石岳
1893年 恵那山、富士山、大町から針ノ木峠超え、立山、前穂高岳
1894年 白馬岳、笠ヶ岳、常念岳、御岳
1902年 北岳
1903年 甲斐駒ヶ岳、浅間山
1904年 地蔵岳、北岳、千丈岳、高妻山、妙高山、八ヶ岳、富士山
1912年 有明山、燕岳、槍ヶ岳、奥穂高岳
1913年 槍ヶ岳、奥穂高岳、焼岳、霞沢岳、白馬岳
1914年 立山温泉から針ノ木峠超え、燕岳、大天井岳、富士山

すごいなぁ~
その当時、日本人が登山そのものを楽しむ習慣はなく、登山道も全くといってよいほど整備されていませんでした。
彼は本著「日本アルプス」を1896年英国で出版し、世界に日本の山を初めて紹介したのです。

登山の記述以外の部分も大変興味深い本です。
例えば民家に泊まり住民と一緒に食事をしたり、蒸気機関車や馬車に乗ったりと、当時の日本の姿が伝わってきます。たかだか100年ちょっと昔の話なのに、日本の変化の大きさも感じられますね~
山に登られる方への、おススメの一冊です!

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