暑さが続いております。今、台風も来ていて、強風に見舞われています。
墨絵教室では、もう次の季節に完成する課題の事を考えていて、
秋のモチーフに取り組み始めています。
今年は 「秋の七草」 から 三種のみをピックアップし、
すすき なでしこ おみなえし を選んでみました。
猛暑の中で、次の涼しい季節の事を考えることは、
気持ちの余裕につながるようです。
「秋の七草」を7つ全部言えるか、
毎年のように どきどきしながら 仲間と話すのは
スリリングでもあり、 楽しみです。
今年は、「お好きな服は?」で覚えるといい、と伺いました。
おみなえし・すすき・ききょう・なでしこ・ふじばかま・くず・はぎ
ところが、この「お好きな服は?」のフレーズが出て来にくく、困りました。
お好きな、何かだった。、というので 3人かがりで七草を最初から唱えて、
「服かあ、("服"は、ちょっとどうでもいいかな~)。」というひとコマがお教室でありました。
私は所中
「われもこう、すすき かるかや 秋草の・・・(さびしききはみ 君におくらむ)。」
という若山牧水さんの短歌が頭をよぎってしまうので、とても遠周りをして思い出します。
「はぎ すすき 桔梗 なでしこ おみなえし くず ふじばかま」
自分が習い覚えたのはこの順序で、冒頭の「はぎ すすき」さえ掴めれば、
一年振りの蔵の奥から、芋蔓式に ずるっずるっと、集中して出せます。
無事に出し終えた時の平和な気持ちが、何とも言えません。
素朴なゲーム感覚で好きですし、この一瞬に遊ぶコミュニケーションで、気の合う人も、ますます好きになります。
秋の七草の小さな行事です。
ところが、藤袴だけ実物を観た事がありません。
以前、デパートで1枚ごとに秋の七草を一つづつ刺繍した 白いハンカチを販売していました。
全7枚1セットで購入するとか、毎年1枚づつ購入するとかいう目的でした。
デパートのハンカチ売り場では、「7枚買わなきゃ意味がないわ。」とか、「毎年、ここでハンカチを1枚づつ買う事になるじゃない。」とか、
「よく考えたじゃない、企画の人、偉い。(と、いうので購入する)」などと言って女の人達が
知らない者同士でも、目を合わせて笑って話していたものです。
今のこのせわしい時代に比べれば、なんとも悠長な商品でしたし、購入の動機も随分と違っていました。 実際に7年間取り扱っていたかどうかは分かりませんが、懐かしく思い出されます。
私も藤袴をハンカチから学びました。
「葛(くず)」はうっそうと茂って風流さはないし、「ふじばかま」は謎の植物だし、
七つの大陸の最果ての地、というか、茫洋とした印象でした。
萩、桔梗、なでしこだけでも、私は良いかなと随分長く思っていましたが、
絵をしっかりとやるようになってから、すすきも良いし、女郎花も美しいものだと考えが変わりました。
とくに、すすきが良いと思えるようになったのは、自分には新しい心の境地でした。 何かこころの奥のほうで、スッキリとした芯の強いものを感じられました。最初からすすきがお好きだという方がいて、すごい方がいるものだと感心していました。
葛(くず)はアメリカの西海岸に移動したとかで、東京では近年めっきり珍しくなりました。
どうやって移動したのかよく分かりませんが、植物の分布にはこういう、引っ越しのような事はあるらしく、出たり入ったりしているのでしょう。
葛(くず)もいずれ日本で、数の少ない草として、風流さを取り戻す事になるのでしょうか。
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり(釈迢空)
(葛と言えばこの歌がすきだというだけですが、最後に置いてみました。)
琳派墨絵クラブ