琳派墨絵保存倶楽部・部誌 「なてし子」

江戸琳派の祖、酒井抱一家に伝来する本格的な琳派の画法を継承している「琳派墨絵保存倶楽部」の活動日誌ブログです。

さくら桜さくら桜(4月)

2017年09月07日 | 琳派、日本画、酒井抱一
今年の春は、例年になく桜を描かせていただく機会が増えました。
うれしい、ありがたい事でした。

描いた絵が喜んでもらえるという嬉しさに勝るものはありません。
さくらの花は、喜びに応えてくれ、
そしてたおやかな幸せをくれます。



ところで、金箔地に描いていて、つくづく思った事。
夜の灯りの中でみる金箔のひかりの揺らめき、これは本当にいいものだなあと思いました。

いつか、文学は夜に生まれたという話を聞いたことがあります。
夜の時間、燭台の灯りに照らされながら
人々が風流の話や、精神的な話、政治の話、恋愛の話を語っている中で、
言葉は洗練され、文学が生まれる要素ができあがり、文化そのものになっていったという、
そんな内容だったと思います。

金箔を貼った屛風に描いた大和絵ですが、
きっとこのような屏風の需要も、まさに夜の時刻にあった事でしょう。

金箔地に絵を描く豪華さだけの事ではないのでしょう。

おもえば、古典の屏風絵は、絵の中の余白を大事にとってあります。
燭台の高さにも標準があり、どの辺りの角度から光が屏風の上を走り、画面の上の角にどう影が潜むのか、
そんな事も計算にあって描かれたのではないでしょうか。

自然の中での、夜の桜もとてもいいものです。

金地のうえに描かれた桜も、きっと、夜の時間をたのしい美しいものに変えてくれる事でしょう。




四谷の麹町イグナチオ教会の中の活動グループからご要望をいただき、
桜のちいさな色紙を8枚作製いたしました。

フィリピンの教会から訪日された皆さんのための日本のお土産用にとの事です。

残念ながら、今回の訪問では皆さんは、時期的に日本の桜を観る事ができなかったのです。
そこで、せめてものという事で、わたしも心をこめて描かせていただきました。


表には、聖書からの引用句を日本語で、
裏面にもその句の英訳と、お一人お一人のお名前
そして日付なども。

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カルチャークラブでの新講座「日本画家が教えるうつくしいはがき絵」も好調なスタートをきりました。
さっそく、こちらでも受講生のみなさんと、琳派の古典の描法をもちいて「さくら」に挑戦しました。
人気のある桜ですが、とはいえ初心者向きの題材ではないのです。
授業当日まで、こちらは心配で仕方ありませんでしたが、それは授業のおわりまで伏せて言わないでおきました。
受講生のやる気が勝ったのでしょう、すてきな桜の絵がたくさん・たくさん 出来上がり皆で大笑いしました。


春の日、初夏の光のなかで こころの喜びがありました。




琳派墨絵クラブ

(2017年の春の事です。)

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