先月の14日、住職は「御征忌(ごしょうき)」の焼香師として、横浜市鶴見区にある曹洞宗大本山總持寺に出仕してまいりました。
以前のブログにも書きましたが、「御征忌」とは大本山永平寺や、同じく大本山である總持寺の開山忌(ご開山様の祥月命日忌)のことで、
總持寺では10月12日から4日間、全国の末派寺院が本山に出仕してご開山瑩山禅師さまに報恩の誠が尽くされる大行事です。
この「御正忌」の期間中、全国寺院の代表が大本山の禅師に代わって導師を勤める大役を「焼香師」と呼びます。
※250名余の檀信徒の方々
ご本山が能登から移転して100年という節目の年に焼香師という大役をいただき、自分に勤まるかどうか不安で一杯でしたが、
おかげさまで、無事にお勤めを終えることができました。
当日は横浜、東京、千葉等各方面から250名余の檀信徒の方々に鶴見までお参りいただき、本当にありがとうございました。
ご一緒にお参りをいただきました皆様、心からお礼申し上げます。
あれからひと月余りがたち、礼状や写真、記念品の発送、整理や支払いも終わり、ようやく後始末も目途がついて一息ついているところです。
焼香師は一世一代の大行事。
禅師様にでもならない限り、御本山の本堂で導師をするような事はこれから先もないでしょう。
※多くの神奈川寺院が随喜してくださいました
神奈川県は御本山の御膝元ですので御征忌等の大法要に出仕する回数も多く、比較的若い拙僧にも焼香師の順番が早く回ってきましたが、
他県の焼香師の方々は、私よりもずっと年齢が上の方ばかりでした。
よほど御本山に功績のあった方でないと、焼香師には選ばれないとか。
昔は、老年の焼香師さまがお師匠さまのお位牌を胸に抱いてお勤めしたといいます。
それほどに名誉であり、尊い行事なのですね。
ということで、今回から数回に分けて、焼香師の様子などを掲載したいと思います。
さて、焼香師のお勤めは出仕する法要の前日から始まります。
前日(10月13日)の午後3時までに御本山に上山しなければなりません。
御本山に着いたら知客(しか‥接客係)の方に案内されて、焼香師寮というお部屋に案内されます。
そこで、2日間よろしくお願いいたします、と「到着のお拝」をします。
梅湯(ばいとう・・砂糖湯に梅干しの入ったもの‥宗門では、昔から遠来のお客さまのもてなしに供されています)やお茶をいただきながら、
知客の方から両日の流れをお聞きします。
その後、侍者(じしゃ・・法要などでおつきをして下さる方)や行者(あんじゃ・・身のまわりのお世話をいただく方)と挨拶し、
焼香師寮の奥にある一室に通されます。そこが自室というわけです。
私は翌日の2時半頃という遅めの時間の法要でしたので、その部屋でまる一日を過ごすことになりました。
通されたお部屋は、中庭の見える静かなひと部屋。
入ったことがある部屋だなあ、と思ってよくみると、私の仲人であり、二代前の本山監院(かんにん・・実務者トップ)であった伊東老師が
一時期執務に使っていた部屋でありました。
これも不思議な御縁ですね。
お部屋で荷物の整理をしていると受付の知客和尚さんがやってきて、本山に納める献香料や翌日の参拝団の食事代など
さまざまな費用の集金に来ます。
終わったら今度は、準備してきた法語を法語帖に記帳します。
法語とは、御仏の教えを説いた漢文(七言絶句)で、法要の際におとなえします。
もちろん自分で作らなければいけません。御本山の記録に残るものなので、今回は小田原の大先生に最後の点検していただきました。
拙僧の香語は以下の通り。
百歳錦秋映眼鮮
鶴湾波穏自厳然
崑崙面目無今古
祖道風規輝大千
伏冀慈悲容納
百歳の錦秋 眼(まなこ)に映じて鮮やかに
鶴湾(かくわん)波穏やかにして 自ずから厳然たり
崑崙(こんろん)の面目に今古無し
祖道の風規 大千に輝く
伏して冀(こいねが)わくは慈悲容納(じひようのう)
(意訳)
御移転から百年を経たこの秋、紅葉はさえざえとして美しく
鶴見の海は穏やかな様子を見せながらも、大自然の威厳ある様子そのままである
真実のありようは時間を超越しており、瑩山禅師の頃と今とで違いがあるはずがない
祖師方の歩んでこられた御仏の教えは宇宙全体に輝いている
どうかこのつたない言葉そしてご供養を、慈悲の心を持っておうけくださいますことを。
焼香師の御祝い、とお部屋の方に来て下さる方に挨拶をしたり、翌日の檀信徒供養の読み込み帖の確認などをしたりしているうちに
薬石(夕ご飯)が部屋に届けられます。
二の膳付きの立派な夕食ですが、残念ながら自室でひとり寂しく食べることになります。
典座寮(お寺の台所)に知り合いがいるので、彼が調理してくれたのかな、などと思いながら美味しく完食。
食事も終わって一息ついていると、今度は「法堂下検分」が行われます。
※ご開山さまにお焼香の前に、手を清めます
焼香師は禅師様の代わりに法要の導師を行うことになっていますので、本来、下検分は本堂の準備等に遺漏が無いか確認(検分)するだけで終了となるのですが、
皆さん一生に一度きりの焼香師法要を行うわけですから、下検分とはいえ、実際は翌日の法要の馴らし(練習)をするということになります。
翌日の焼香師6名、一時間以上の時間をかけて、法堂への行進の仕方から始まり、法具の持ち方、お供え物の捧げ方、階段の昇り方など細かく教えていただきました。
馴らしを兼ねた下検分が終ると、続いて今度は「監院展茶(かんにんてんちゃ・・監院老師との面会)」です。本山の近況などをお聞きし、お茶をいただきます。
監院展茶が終わると、とりあえず初日の行事は終了。
お風呂をいただいて、あとは就寝となります。自室に戻るとすでにお布団(絹の白布団!)が延べてありました。
私は東戸塚からタクシーで御本山に向かうという、なんともしまりの無い上山の仕方でしたが、
山口県や秋田県などから飛行機や新幹線で上山された方もおられました。
翌日に障らないよう早目のご就寝を、との配慮でしょう。
お葬儀や法務がずっと続いていたことや、御本山での緊張もあったのだと思いますが、
私も般若湯を少しいただいたらあっという間に眠ってしまいました。
以下、次回に続きます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後輩のE君がめでたく結婚しました。とても美人な奥さんでびっくり。
おめでとうございました、これからもなかよく暮してください。 で、披露宴会場の周辺の写真を少し。
皇帝ダリヤが咲きました。聞きしに勝る背の高いダリヤです。ハイキーにすると、感じが変わって面白いものです。
今日はここまで。
隣の作業所の猫さんも、このところの寒さが身に沁みているよう。
鳴き声が切なげに響きます。
さんぜのまなざし goo別院 1111
来年のお授戒でしょうか、それとも御征忌でしょうか。
いずれにしてもたいへんなお役目、そして有り難いお勤め。誠に御めでとうございます。
本文にも書きましたが、拙僧には胸が熱くなる法要でした。
風月さまにはまた違った感慨があるかもしれません。
すばらしい法要になりますように、応援いたしております。
実は「慈悲容納」で調べることがあり、さんぜ通信様に訪問することになりました。焼香師様のこともちょっと学ばせて頂きました。私も来年は高祖様に焼香させていただきます。やはり小田原の大先生にお教えをいなくてはと思っています。それが頭の痛いところです。まだ忙しくて、頭がまわりません。
倫勝寺様にお伺いしていた頃が懐かしいです。