下記の記事は日経グッディ様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
花粉症はスギ花粉だけでも国民の半数近くが発症する、まさに“国民病”。花粉対策の準備はできていますか? 最新の鼻アレルギー診療ガイドライン(*1)を基に、進化した花粉症治療の最新情報を2回に分けて解説していきます。今回は、今年の花粉症の飛散予測、年代別の罹患状況、基本的な対策などのアップデート情報を紹介します。
<アップデート1>
東海以北はつらい春になる? 症状の重い人はシーズン前から相談を
花粉症というとスギ、ヒノキの花粉を思い浮かべるが、北海道ではシラカンバの花粉が中心。また、最近では秋の花粉症に悩まされる人が増え、その原因はブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどの花粉。花粉症は、通年での対策が必要になってきた。
どの花粉症も基本的な対処は同じ。患者が多く症状が重くなる人が多いのは、スギ、ヒノキだ。日本気象協会の「22年春の花粉飛散予測」(第1報)によると、スギ、ヒノキの飛散量は近畿以西で昨年より少なく、例年並みのところが多くなりそう。東海以北では昨年よりも「やや多い」から「非常に多い」ところが大半と予測されている。
治療開始のタイミングは、鼻が「ムズッ」ときたとき。使い慣れた市販薬のある人はそれを使えばOKだ。これまで頑固な「鼻づまり」に使われてきた「ステロイド鼻噴霧薬」が、「くしゃみ」「鼻水」など多くの初期症状にも使えると改訂されたのは最新ガイドラインのポイントの一つだ。薬局の対面販売で買える商品にフルナーゼ点鼻薬がある。
症状が重く、仕事や日常生活に支障をきたしている人は、耳鼻咽喉科の受診を。発作的な「くしゃみ」や「鼻水による鼻かみ」が1日に11回以上、「鼻づまり」があり、1日にかなりの時間、口呼吸をしている人は、専門家の治療が必要な「重症」。
国際医療福祉大学の岡野光博教授は「重症の人は生活の質が著しく損なわれる。近年は症状のメカニズムの解明が進み、症状や重症度により適した治療が行われるようになった」と話す。
花粉は通年で飛散している
花粉症の原因となる植物と飛散時期を示した。飛散量が多く症状も強いのはブタクサだ。関東の例を示したが、東海以西も飛散時期は関東とほぼ同じ頃だ。シラカンバ(白樺)は北海道と東北のみである。(「我が国の重要な花粉抗原の飛散期間」日本花粉学会会誌2020;65,55-66を基に編集部で改変)
*1 「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年度版(改訂第9版)」
<アップデート2>
子どもも3人に1人が花粉症 50代以降は重症化しにくい
最新のガイドラインでわかったのは、5歳以上、10歳未満の子どもの3人に1人が花粉症であるという驚きの実態だ。岡野教授は「かつては子どもの鼻アレルギーはハウスダストなどが原因のものが多いと考えられてきた。ところが、今回発表された疫学調査では、スギ花粉が原因の割合はハウスダストを超え、約30%と最も多いことがわかった」と指摘する。これは20年前の約4倍。
しかし、現在は子どもに使用が認められた薬剤が少ない上、子どもは眠気などの副作用を保護者にうまく伝えられないため、学業などへの影響も心配される。
岡野教授は「保護者は子どもの様子によく注意してほしい。最近では、3年ほど治療を続けることで、薬を飲まなくても症状が出なくなるようにできる、臨床的に治る可能性のある舌下免疫療法も広く行われるようになっている。耳鼻咽喉科医とよく相談してほしい」とアドバイスする。
もうひとつ、新たにわかったのは、有病率は40代の47.5%をピークに、次第に低下する傾向にあること。「子どものうちに花粉症を発症すると50年以上毎年発症しやすくなるが、その一方、50歳を過ぎれば、新しく発症する頻度は少なくなるとも考えられる」(岡野教授)。まだ発症していない人は、50代になるまで花粉を極力避ける対策を講じるとよさそうだ。
<アップデート3>
吸い込まないことが大事 マスク+「鼻ワセリン」も有効
花粉症の治療には、(1)体内の免疫細胞を刺激し、症状をもたらす花粉を体内に入れない(アレルゲン除去と回避)、(2)起こった症状を飲み薬や注射薬で抑える(薬物治療)、(3)症状を起こしにくい体質に変える(アレルゲン免疫療法)、(4)レーザーなど(手術治療)があるが、まず取り組みたいのは(1)の「花粉の回避」だ。
岡野教授は「花粉予報を見て、飛散量の多い日は吸い込まないためにしっかり対策を」とアドバイスする。コロナ禍では、最も重要な「マスク」は当たり前になっているが、今シーズンはプラスワンの対策をしよう。
まず、「目のかゆみ」の強い人は、眼鏡(サングラス)を着用。ウールなど起毛素材は花粉が付いて屋内に持ち込みやすいので避ける。フリースとダウンなどの組み合わせは静電気で花粉をたくさん付着させる恐れがある。帰宅時は玄関先で服などに付いた花粉をブラシなどで落とす。
花粉は比較的重いので、床に落ちやすい。換気時に入り込んだ花粉は空気清浄機などを活用しつつ、床を水拭きして取り除くといい。
そして岡野教授が“意外に有用”な方法とアドバイスするのがワセリンの使用だ。「花粉は粘膜の水分に触れると割れて、中から症状を引き起こすアレルゲンが飛び出す。ワセリンは花粉を吸着するとともに割れるのを防ぎ、マスクの隙間から入ってきた花粉による症状を抑える効果が期待できる」(岡野教授)。
2022年はマスク+αの対策を
服や髪、肌に付いた花粉を落とす
帰宅したら洗顔も
帰宅時には、まず玄関先で帽子を払う。髪も花粉が付きやすいので、服のブラシとは別に髪ブラシを用意したい。そして次に行いたいのはやさしい洗顔だ。ファンデーションなどの化粧品は花粉を付着させる作用もあり、女性の9割が花粉の季節の「肌荒れ」に悩んでいるというデータもある。敏感肌用コスメなどを選び、ぬるま湯でやさしく洗うことで花粉による刺激を回避しよう。
花粉が割れるのを防ぎアレルゲンを入れない
鼻ワセリン
花粉のアレルゲンは花粉表面にもあるが、花粉が鼻粘膜の水分を吸うと、パカッと割れて内容物が飛び出す。花粉がめしべに付いたときに効率よく受粉する仕組みだ。ワセリンを鼻の穴の入り口に塗ると、花粉がくっついても内容物が放出されないので症状を起こしにくくなる。イギリスの国民保健サービス(NHS)も推奨している方法で、イギリスの家庭では鼻用のワセリンが常備されているという。
ワセリンの塗り方
- 綿棒の先がワセリンで薄く覆われるぐらい付ける。清潔な指でもOK。
- 鼻の穴の入り口(小鼻)にやさしく塗る。鼻血が出やすい場所は注意。
- 1日に3~4回、ときどき鼻をかんで花粉の付いたワセリンをぬぐい去る。
(取材・文:荒川直樹/グラフ:増田真一/写真:PIXTA/構成:西山裕子(編集部))
この記事は日経ヘルス2022年冬号の転載です。情報は掲載時点のものです。
岡野光博(おかの みつひろ)さん
国際医療福祉大学成田病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授
新の「鼻アレルギー診療ガイドライン」作成委員長。鼻(鼻腔)や喉など上気道の慢性炎症性疾患(アレルギー性鼻炎・好酸球性副鼻腔炎など)研究の第一人者。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます