最近のNDNQのライブで最後にやってる曲の詩です。
ポエトリーでやってるのでメロディはありません。
思うところありまして、公開しときます。
作者はワシです。"無〜"の部分はヘミングウェイからの引用です。
読んでくれたら嬉しいなと。
その頃も夏は塵(チリ)と灰に覆われて、眉の高さまで降りて来ていた。
陽はその輝きを間接的にしか見せず、昼と夜をわずかに区別するだけにとどめている。
熱は音もなく君の全身を浸し、不快な汗が衣服を濡らす。
この場所からどこかへ。
この場所から逃げなくてはならない。
男達は言う。
「その対価は?」
「その足の向かう先に、はたして孤独以外の何があるのかね?」
「大勢の中の、群れをなしてるのに酷く孤独なこの世界と、眠気をまとう怠さ、それが何か変わる保証はあるのかい?」
「間抜けなラクダみたいにさ、ただ歩き続けるのが関の山だよ」
長い長い道が続いているように見える。
明るくもなければ暗くもない。
空は相変わらず柔らかく重く君を押し潰そうとしている。
気がつけば君は世界を茫然と見つめて、恐ろしくて震える程の、深い溝に気付く。
君と世界の隙間の、その耐え難い深さに。
君はたった一つ、ただ掻き鳴らすようなギターで、言葉で、その隙間を埋めようとしていた。
全く無駄かもしれなかったのに。
薄くぼんやりした月に手を伸ばしてみる。
長い長い道が続いているように見える。
あの夜が落ちてくる前に、また、あの自分から滲み出た酸のような毒に自身が溶かされてしまう前に。過去も未来も現在も形を失ってしまう前に。
あの怒りや怨みは長い時間をかけ君を違う世界へと押し上げて、君は見事討ち果たしたんだろう。運命にケリをつけたはずだった。君は勝ったはずだったんだ。
ただその後に何も残らなかった。
自身の無が残り、無をもって無を成した。
長い長い長い長い道が続いているように見える。
「もう閉店の時間です。」
磨かれた厚いテーブルのあるカフェのウェイターが言う。
清潔でとても明るいところ。
あの老人は今も呟いている。
"無にまします我らが無よ。願わくばあなたの名が無でありますように。
国の無であるべきことを、あなたの心の無におけるが如く、無において無ならんことを。
我らにこの無を、我らが日常に無を与えたまえ。
我らを無の中に無にすることなく、無より救いたまえ。
そして無よ。無に満ちた無を祝福しまえ。
無が限りなく無としてあなたのものでありますように。"
ここからじゃ楽園は遠過ぎる。