らば~そうる “IN MY LIFE”

旅、音楽、そしてスポーツのこと。過去、現在、そして未来のこと・・・「考えるブログ」。

1457.HELP!

2009-11-01 | 12.THE BEATLES
 “THE BEATLES IN MONO ”を聴き始めて1ヶ月半が経過しました。
ビートルズ・ファンのかたの中には既にすべてをお聴きになったかた
もいらっしゃるかと思います。わたしは「小出し」で聴きながら、新
たな発見に日々感動しています。と同時に文献に書いてあったことを
実際に自分の耳で聴き確認することの楽しみも味わっています。

 ‘Help! ’のモノラル・ヴァージョンは今回の企画において興味の
あるもののひとつでした。以前の(過去形で表現してしまうのは避け
たいのですが・・・)企画“CAPITOL ALBUMS”でもこの曲のモノラル
ヴァージョンに対し期待したものですが、ご存知のとおり、US盤の
“HELP! ”のモノラル・ヴァージョンは、ステレオ・ヴァージョンを
たんに焼きなおしたものにすぎませんでした。

 ‘Help! ’はモノラル・ヴァージョンとステレオ・ヴァージョン、
そして映画でのみ使用されたモノラル・ヴァージョンと合計で3つの
ヴァージョン(US盤の冒頭に入っている‘The James Bond Theme’
はカウントしていません)があります。この制作過程について、過去
にいろいろなかたの研究により解明されてきた部分も多くありますが
最終的には推測の域を超えていないのが実情です。

 本稿では、制作過程の詳細について言及しませんが、簡単に言って
しまうと、ステレオ・ヴァージョンが第12テイクからミックスされた
ということです。モノラル・ヴァージョンについては、第4テイクを
ベースにミックスされたと考えられますが、さらに複雑な制作過程が
あるようです。

 モノラル・ヴァージョンとステレオ・ヴァージョンの大きな違いは
ジョンのヴォーカル・パート(その他、モノラル・ヴァージョンには
タンバリンが入っていないという特徴もあります)です。その原因を
究明するカギは、制作過程にあります。テイク3までは、演奏パート
のみをレコーディングしていましたが、致命的なミスのために演奏が
最後まで辿りつきませんでした。そこで、第4テイクでは歌いながら
演奏しようという試みがなされた可能性があります。

 分析の対象となるこれらのセション・テープの記録は、第1テイク
から第3テイクの音源の後、第4テイクが欠落し、第5テイク以降に
飛んでいることが確認されています。第4テイクについては、コント
ロール・ルームからの“Take 4”というかけ声やメンバーの会話等を
確認できますが、演奏されたことを確認することはできません。とこ
ろが不思議なことに、メンバー間の会話のバックにヴォーカル入りの
‘Help! ’が聞こえてくるのです。その後、テープは第5テイクに飛
び、上述したように、‘Help! ’のレコーディングは第12テイクまで
進められます。この経緯については、別のかたの研究に委ねることに
しましょう。

 モノラル・ヴァージョンを聴いてみると、ステレオ・ヴァージョン
と比較してジョンのヴォーカルに不安定さを感じます。「声があまり
出ていない(ように感じる)、母音の伸ばし方が短い(ように感じる)
歌詞のもたつきが多い(ように感じる)」いった印象を受けました。

 なぜそうなのでしょうか。その答えはこの曲の制作過程にあるよう
ですね。「謎」ということにしておきましょう。



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6 Comments

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モノラル・ヴァージョン (mino)
2009-11-02 00:03:22
これは後日映画用に「CTS」という、映像への「当てレコ」用の外部スタジオで、テープ・マシーンやテープで、ボーカルだけを再録音したらしいです。(アビーロードでの正式なセッションではないので記録は残っていない。)
元々ボーカルトラックにタンバリンが入っていた為、この再録で欠如したとの事です。

返信する
記録の無い第13テイク(補足) (mino)
2009-11-02 00:33:48
第9テイクからリードギター用に空きトラックを作るため既に2トラックを使用してたボーカルトラックを1トラック(含むタンバリン)にミックスダウン。
(4トラックを3トラック(別のテープレコーダー)にミックスダウンしリードギターを録音し第12テイクとする。)

「CTS」用に第12テイクのボーカルを除く3トラックをコピー。
(「CTS」のトラックチャンネル数は不明。もしかしたらこの時点で3トラックをミックスダウンしている可能性あり)

外部スタジオにて映画用「当てレコ」を行う。記録の無い第13テイク。

記録の無い第13テイクよりモノミックス作成。記録の無い第13テイクは作成後破棄。

返信する
1番めのコメントに対する質問 (らば~そうる)
2009-11-02 19:06:45
to:minoさん

CTSというのは
トゥイッケナム・フィルム・スタジオ
とは別ものでしょうか。
返信する
2番めのコメントに対する質問 (らば~そうる)
2009-11-02 19:09:37
to:minoさん

興味深い情報、ありがとうございます。
かなり具体的なので、ご質問させてください。

1.第13テイクはいつ、どこで(CTSとは何の略ですか?)収録されたのでしょうか。

2.この事実のソースは何でしょうか?
返信する
ご質問に対して (mino)
2009-11-02 23:03:56
to:らば~そうるさん

>CTSというのは
CTSは、Cine Tele Soundの省略形です。

>1.第13テイクはいつ、どこで(CTSとは何の略ですか?)収録されたのでしょうか。
例のシェイスタジアムでの吹き替えに使った場所ですよ。
CTSについては参考にリンク貼っておきます。
http://www.maccafan.net/Gallery/SheaStadium/Shea.htm
第13テイクと書きましたが便宜上12テイクの次のテイクという意味です。収録時期は6月18日に第2スタジオでミックスを作りなおししてますのでこの前だと推測されます。

>2.この事実のソースは何でしょうか?
先月と今月のレココレ誌に色々触れられていました。「CTSの写真を分析したら‘Help! ’の歌詞をジョンが持っていた」とか。
実は私はこれらの誌に書かれる以前に外国のフォーラムでこの事実を知りました。
(後興味深い話題では'I Need You'ではリンゴはこの曲でドラムズを叩いていないとか。ここではジョンがドラムズを叩き、リンゴはジョンのギター(Gibson J-160E)の背面を叩いたそうです。)
4トラック・マシーンの変更(Studer J37の導入)でベーシックトラック以外は別録音に移行し、ジョージとリンゴの演奏パートをジョンとポールが(実験的に)代わりに行っていたわけです。
返信する
極秘の収録? (らば~そうる)
2009-11-03 21:44:16
to:minoさん

丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。

「CTS」の件はご質問させていただいた後
マーク・ルイソン氏の『全記録』で確認しました。
ご指摘のとおり1966年 1月 5日に「シェイスタジアム」の件の記録が
ありました。

しかし、同著の中にはこの「12テイクの次のテイク」
に関する記録を確認することができませんした。
「12テイクの次のテイク」のお話を聞いたとき
モノラル・ヴァージョンがトゥイッケナム・フィルム・スタジオで
収録されたのかと瞬間的に思いました。

かなり極秘のうちにモノラル・ヴァージョンのヴォーカルは収録されたのですね。

‘I Need You’の件も新鮮でした。
そのようなことがまだまだあるのでしょうか。
やはり深いですね。
返信する

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