元フロントスタッフ兼仲居頭のお宿備忘録

お宿の従業員とお客様両方の視点を得た自分の備忘として実際にうかがった【お宿の魅力】を書き残していきます。

【東京都・奥多摩町】奥多摩の風 はとのす荘

2023-09-24 18:28:47 | ホテル

前回の投稿から、思いがけず3ヶ月半が経ってしまいましたが、

ようやくの第5弾は、

 

東京都・奥多摩町「奥多摩の風 はとのす荘」さん

(以下、「はとのす荘さん」と呼ばせていただきます。)

 

をご紹介します。

 

キャンプやバーベキュー、登山などが得意でない私は、

西東京方面に何かとご縁がありながら、

奥多摩に行ったことは、あるような、ないような…、

といった具合で、記憶の中では今回がほぼ初めてでした。

 

奥多摩=深い山の中

という個人的なイメージがあったので、

若い頃のように怖いもの知らずで運転できなくなってきた私としては、

道中が少し不安でしたが、

高速のインターチェンジからホテルまで、

中央線がないような狭い箇所もなく、

物凄い山道というほど蛇行しているわけでもなく、

時々対向車とのすれ違いに気を遣う箇所はあったものの、

安心して運転していくことができました。

 

はとのす荘さんは、

1960年に国民宿舎「鳩ノ巣荘」さんとして建てられたものを、

2015年に完全建て替えリニューアルして、現在の姿となったそうです。

恐らく、国民宿舎時代のファンの方も多くいらっしゃったことと思います。

 

宿側としては、

ほんの些細なサービスを変更する時や新たに始める時ですら、

それにより逆にがっかりされるお客様がいらっしゃるのではないかと

頭を悩ませます。

ましてや、完全建て替えリニューアルともなれば、

様々な反応やご意見が多数出てくることは、

容易に想像できたことと思います。

 

ただ、それでも、時代の変化や環境・状況の変化に応じて、

宿側も変わらなければならない時があります。

それまでのファンの皆様には不満が生じる可能性があることを覚悟の上で、

それでも、これからも宿を長く続けていくため、

さらに一人でも多くのお客様にご利用いただき、

少しでもより高い満足感を提供できるようにするために、

今後、自分達は何を大切にし、何をどのように提供していくのか。

真剣に考え、悩み、

時には社内でも意見が対立することもありますが、

議論を尽くして自分達の方向性を定め、

それに向かって設備やサービスを作り上げていきます。

 

番外編「はじめに」の記事にも書かせていただいたとおり、

できることなら、お客様に喜んでいただける全てのものを揃えたいと、

もちろん宿側も望みます。

しかし、現実には様々な制約があり、

その望みを叶えることは難しく、

取捨選択をしなければならないことがほとんどです。

 

また、一つのサービスを取ってみても、

それを喜んでくださるお客様もいらっしゃれば、

不満・不快に感じるお客様もいらっしゃる。

全てのお客様に100%ご満足いただけるサービスというものは、

現実的には存在しないのだと、

多くのお客様に接しているとつくづく思います。

残念なことではありますが、

お客様それぞれに感じ方、考え方が異なるので、

それがどうしようもない現実なのです。

 

それでも自分達が自信を持ってお客様に接していくために必要になるのが、

お客様のことを十分に考えたうえでの確固たるポリシーです。

「お客様の望みに届かない部分があることを重々承知のうえで、

それでも、お客様にご満足いただき、喜んでいただくために、

自分達はこういうモットーで、こんなサービスを提供していこう!」

というポリシー。

それがあることで、

お客様の不満を素直に受け入れ、心からお詫びをすることができ、

代わりに、自分達ができるサービスなどを提案し、

自分達らしく、自分達ならではのサービスで

お客様に少しでも喜んでいただく、

ということが可能になります。

 

きっと、はとのす荘さんの完全リニューアルの際にも、

お客様のことを考えながら、

相当な検討が様々なされたことと思います。

変化による結果の責任を負うことになるのは当然宿側なので、

入念な検討をしないはずがないのです。

安易な考えやお客様のことを置き去りにした考えで

大きな変化を敢行してしまえば、

宿の存続すら危うくなるリスクが大きくなります。

特に最近は、お客様の目も洗練されていて、

まやかしはすぐに見抜かれてしまう時代であることは、

誰の目にも明らかです。

 

以前の鳩ノ巣荘さんのファンの方々が、

現在のはとのす荘さんを残念に思う部分もあるかとは思いますが、

もしかしたら、以前より魅力的になったところもあるかもしれない、

という視点で改めて見てみてくださるといいな…、と、

勝手ながら、個人的に思っています。

(私ははとのす荘さんとは何の関わりもないですが、

元同業者の一人として、

関係者の皆さんの努力が報われることを祈りつつ…。)

 

私は、申し訳ないことに国民宿舎時代の鳩ノ巣荘さんを存じ上げないので、

あくまでもビギナーとして、

現在のはとのす荘さんだけを利用させていただいた備忘となります。

”鳩ノ巣荘さん”のファンだった方には、

ご満足いただける内容にはならないかと思いますが、

なにとぞご容赦ください。

 

奥多摩湖から流れる多摩川に面し、

四方八方を山に抱かれた渓谷に佇むはとのす荘さんは、

東京都でありながら、山のリゾートのいで立ち。

都心から車で2時間前後でありながら、

山深い奥多摩湖まで20分、山梨県までは30分の距離とのこと。

それなら、この山の風景も納得、とも思いましたが、

やはり、長野の山の中と同様の景色が東京にも広がっているというのは、

なんだかちょっと嬉しい違和感でした。

 

玄関から山荘を感じる、

優雅でありながら、柔らかい、ほっとする雰囲気のデザイン。

そして、入口のドアを抜けると、

正面の全面窓一面に青々とした山の木立が迎えてくれます。

ロビーの中にもかかわらず、思わず深呼吸をしたくなりました。

華美ではなく、清潔感のある白を基調として、

木目調やブラウン系でまとめられたロビーは、

窓の外の緑に馴染み、落ち着きと寛ぎが優しく演出されていました。

 

3階の洋室を使わせていただきましたが、

客室内も、山の景色を邪魔しない木目・ブラウン系・淡い緑。

清潔感ももちろんですが、

完成から8年、客室を綺麗に保たれている努力に感服しました。

気持ち良く、ゆったりとリラックスして、滞在することができました。

 

もし、最近同じ客室を利用された方がいらっしゃったら、

HPの写真と実際が異なっていた点に気付かれたでしょうか?

HPの写真ではお部屋の奥にあるソファーが壁に沿って置かれているのですが、

現在、実際は窓に向けて置かれていませんでしたか?

元々はHPの写真のように壁を背にし、

反対の壁に向けて置かれていたそうですが、

お客様にもっと山の滞在を楽しんで欲しいとの思いから、

現在の山を望める窓へ向きを変えられたようです。

 

本当にちょっとしたことではありますが、

そこにはお客様への大切な思いが込められています。

そのちょっとした気付き、気遣いが、

お客様の満足を高められる可能性がある。

接客業の冥利、醍醐味です。

そして、常にそういう思いで自分達の業務や宿を見ていくことが、

いつかお客様の大きな満足につながっていく。

「もっとお客様のためにできることはないだろうか。」と、

日頃から自分に問い続け、

小さな努力を積み重ねていくことの大切さを、

改めて勉強させていただきました。

日々の業務に追われていると、

どうしても忘れがちになってしまったりするのですが、

そういう努力を怠らないはとのす荘さんには脱帽でした。

 

客室内の浴室も正面の山を眺められるビューバス。

しかもゆったりとした作りで、

のんびりとバスタイムを楽しめるようになっていました。

客室のバルコニーからは、

山間を流れくる多摩川を見下ろすことができます。

用意されているチェアに座り、

朝にはコーヒーなどをいただきながら、

大自然の澄んだ空気に包まれている間は、

そこが東京だということを忘れていました。

多摩川も、

川面からせり立った山の斜面に建つはとのす荘さんの3階からでも

川底が透けて見えるほど澄んでいます。

車でたった2時間の距離なのに、

都心とはこんなにも川の表情が違うのか、

と不思議なくらいでした。

 

東京にいながらにして、この大自然を満喫できることは、

はとのす荘さんの最大の魅力であり、

それをお客様に存分に楽しんでもらうために、

多くの工夫と準備をしているはとのす荘さん。

奥多摩に豊かに残る自然にも、

はとのす荘さんにも感謝です。

 

そして、スタッフの方々にも感謝。

フロントでは、的確でありながら、

親切、丁寧、かつ穏やかで、かしこまり過ぎず親近感もあり、

リゾートホテルのフロントに相応しい方々にご対応いただきました。

レストランでも、

恐らく地元の主婦の方々もお仕事をされていたと思うのですが、

皆さん、お料理や飲み物のことはもちろん、

配膳の仕方、接客など、よく勉強されている様子が垣間見えました。

そして、忙しい最中でも、優しい笑顔を絶やさずに、

何よりも、お客様に楽しんでもらおうと

一生懸命対応してくださる姿に好感が持てました。

建物はリニューアルにより近代的で新しいものでしたが、

恐らく、いつの時代も変わらないのであろう

地元の方たちの穏やかで優しい人間性に触れた気がしました。

 

お食事は、ホテルらしく洋食、

夕食は”お箸で食べるイタリアンのコース料理”。

失礼ながら、想像以上に本格的なイタリアンでした。

近所にあったら、

「今日はちょっと優雅なイタリアンを食べに行こうか?

という時に行きたくなるような。

でも、あまり気張らず、

気軽にうかがえる心地良いコース料理レストラン。

最初から最後まで一皿一皿丁寧に作り上げられたお料理を、

温かいお料理は温かい器で、

大切に一皿ずつ運んでくださいました。

旬の地元食材を美しいイタリア料理に仕立てておられ、

どのお料理も目にも口にも美味しいものばかりでした。

お箸でいただけるせいか、

変な緊張感もなく、普段どおりリラックスして食事を楽しみ、

純粋にお料理を味わうことができました。

 

朝食も色鮮やかに盛り付けられた華やかな洋食。

その彩りに寝ぼけた目も覚め、

朝からいただける美味しいお料理に刺激を受けて、

頭も身体も快調に一日の活動を始めました。

ビュッフェではありませんが、

身体にしみ込む野菜やフルーツのジュース数種や、

牛乳・お水は、お願いすると何度でも席へ運んでくださいます。

朝食にはなるべく手間をかけなくなったお宿も多いなかで、

はとのす荘さんの献身的なポリシーが見えた気がしました。

 

私が何より嬉しかったのは、夕食も朝食も、パンが美味しい!!

食べること自体大好きなのですが、

特に、美味しいパンに出会うと、この上ない幸せを感じ、

フランス料理やイタリアンではパンのロケットスタートが勢い良すぎ、

メイン料理の頃にはおなか一杯になってしまって、

メインのお料理なのに楽しめない…という失敗を何度繰り返したことか…。

そういえば最近、パンを楽しむ機会にあまり恵まれていなかったのですが、

久々に、好みの食感、好みの味わいの感動的に美味しいパンをいただけて、

久々の幸福感に浸りました。

パンは人によって好みがかなり異なるので、

軽々しく、”皆さんにおススメ!”とは言えませんが、

今回5名で利用させていただいて、

5名全員が、「パンが美味しい」という意見で一致しました。

 

はとのす荘さんには、日帰り入浴もできる大浴場があります。

面積が広大というわけではありませんが、

ゆったりとした作りになっています。

私が利用した日も恐らく満室だったと思うのですが、

お夕食を召し上がっている方もいた時間帯だったせいもあるのか、

同じタイミングで入っていた方は3~4人ほどで、

窮屈な印象はありませんでした。

内風呂も浴槽から天井まで一枚窓で山の風景が広がり、開放感があるのも、

ゆったりとした雰囲気に一役買っているのかもしれません。

 

その内風呂は、2017年から自家源泉の「鳩ノ巣温泉」を

かけ流しされているそうです。

湯量が多くないとのことなので、

こじんまりに見える浴槽も温泉のためには良いかもしれません。

温泉は限りある貴重な資源なので、

長い期間、できるだけ多くの方に楽しんでもらうためには、

一気に使い過ぎないことも大切です。

場所柄、本当に貴重な温泉だと思うので、

東京の貴重な大自然のなかで、

貴重な温泉に浸かれる贅沢を、

ありがたく堪能させていただきました。

 

そして、眼前に迫りくるように山が広がる露天風呂。

こちらは運び湯の温泉だそうです。

極上の癒しを追求するために、

手間を惜しまず運んでくださったお湯に浸かり、

濁りのない空気に包まれていたら、

自分の中の日頃の淀みも、ふわ~っと抜けていくようでした。

 

はとのす荘さんの駐車場から多摩川へ降りる小道があり、

多摩川沿いをハイキング・散策できる道につながっています。

はとのす荘さんのお客様に限らず、

早朝から多くの方が気持ち良さそうに歩いていらっしゃいました。

そんなふうに、実際に自分の足で歩いて、

奥多摩の大自然に触れるも良し、

私のようにアウトドアが得意でない方は、

ただひたすらのんびりと大自然の空気を感じるも良し。

それぞれの楽しみ方で東京の貴重な自然を満喫できるお宿でした。

遠出して、日常の喧騒から離れたかのようなリフレッシュぶりで、

はとのす荘さんの玄関を出発しました。

 

日本って、東京って、

狭いようで、

なかなか広いです。

ほんの少し足を延ばすだけで、

まったく異なる景色が広がっていたりします。

侮れません、日本。

 

それを教えてくださり、

ありがとうございます、

はとのす荘さん。


【長野県・軽井沢町】軽井沢プリンスホテル イースト

2023-06-11 00:34:42 | ホテル

これまで3つの旅館をご紹介してきたので、

この辺でホテルについても書き残しておこうと思います。

 

これまでお仕事をさせていただいたのはいずれも旅館でしたが、

振り返れば、私のお宿好きはホテルから始まりました。

元々、建物の間取りとか内装を見るのが好きだったのと、

(専門的知識は全くありません。ただ、興味として好きなだけです。)

素敵なホテルへの憧れが相まってお宿に興味を持ち、

まだ全く畑違いの仕事をしていた若い頃、一週間休暇を使って、

都内のホテルを日替わりであちこち泊まり歩いたことがありました。

今考えると、ちょっと変わってましたね。(苦笑)

一時は、海外のホテルの優雅さに取り憑かれ、

ホテルを体験してみたいがために1人で海外に泊まりに行き、

たいして観光もせずに帰ってくる、なんていう旅行も度々していました。

やっぱり、ちょっと変わってますね。(笑)

 

私が、旅行に行っても、

観光よりお宿自体をゆっくり楽しみたいと思うようになったのも、

海外のホテルで見た外国の方達の時間の過ごし方に衝撃を受けたからでした。

それまでは、

「旅行とは、観光するもの。」となんとなく思っていたのですが、

特にリゾートホテルに来ている外国の方達は、

どこにも出かけずに、プールサイドやプライベートビーチ、

ライブラリーやお部屋などでほんとにただただゆっくりされる方も多く…。

それが私には何とも優雅に、贅沢に見えたんですよね…。

リゾートという立地柄もあるでしょうし、

外国にはバケーションと称する長期休暇を取る文化があったりもするし、

そういう人達だって、

他の日はめっちゃ観光したりしているのかもしれませんが、

日常の雑事から解放されて、ひたすら寛ぐ時間、

それが一番贅沢な時間の使い方なのかも!

と、その時の私にとっては目からうろこでした。

そこから、何よりも快適に寛げるお宿に興味を持つようになった次第です。

そして、さらに、そういうお宿を作ってみたいな…と思うようになり、

今に至る。

(もう少し詳しい経緯は、

番外編「はじめに」に書かせていただいております。)

 

若かったから、そういうゆったりとした嗜みが大人に見えて憧れた、

ということもあったかもしれません。

今は逆に、やはりせっかく出かけたのなら、

その土地ならではのものを見たり、体験したりするのは楽しいな、

と思ったりしています。

 

また、前置きが長くなりましたが、そういうわけで今回は、

 

長野県・軽井沢町「軽井沢プリンスホテル イースト」さん

(ちょっと混乱を招くかもしれませんが、

「軽井沢プリンスさん」と呼ばせていただきます。

「軽井沢プリンスホテル ウエスト」さんもあるので、

こちらについては、「ウエスト」さんと明記するようにします。)

 

をご紹介します。

あまりに有名過ぎて、

ご存知の方、ご利用になられた方も多いと思いますが。(笑)

 

特に、「プリンスホテル」さん贔屓なわけではないのですが、

お宿の仕事を始める以前の仕事でお世話になったり、

プライベートでもなんだかんだ各地で結局お世話になることが多く、

それは、プリンスホテルさんが様々なお客様のニーズを

しっかりと掴んでいるということなのだろうなぁ、と思うと、

さすが、プリンスさん!といつも感心してしまいます。

 

ご記憶にある方も多いと思いますが、

プリンスホテルグループさんもいろんないろんなことがありました。

鉄道事業から始まった西武グループさんが、

「プリンスホテル」さんを生み出し、

宿泊事業を展開し始めてからの歴史も長くなってきたので、

当然と言えば当然のことかもしれません。

全国各地に拡大していた数々の「プリンスホテル」さんのうち、

不採算施設は閉業したり、切り売りされたり、ということもありましたが、

勢いがあっただけに時流にも乗り、

放漫になってしまいがちだった経営を見直し、立て直し、

逆に厳選された「プリンスホテル」さんが、

今もなお数多く存続しています。

 

特に、ホテルだけでなく、その周辺を一体として開発する上手さは、

目を見張るものがあります。

下手の横好きでウィンタースポーツを続けているのですが、

苗場、志賀、妙高杉ノ原など西武グループさんのゲレンデは、

アクセスが良かったり、ホテル直結で便利だったり、

楽しめるコースが多かったりで、大変お世話になっています。

私たち世代には、プリンスホテルの象徴のような存在だった苗場を

売却すると聞いたときは、さすがに衝撃でしたが、

西武グループさんの問題というよりも、

ウィンタースポーツ人口が減少の一途を辿る現在、

やむを得ないのかな、と思います。

 

また、今回ご紹介する軽井沢も、

周辺一帯を開発して成功している事業の一つですね。

多彩なホテルだけでなく、広大なアウトレットモール、

なかにはプロツアーも行われるものも含む多くのゴルフ場、

ファミリーゲレンデなど、

物凄い敷地面積で事業を行っています。

休日には必ず多くの人が集まり、車で行ったら、必ず渋滞にはまります。

 

スムーズであれば、軽井沢から車で1時間ほどの旅館で仕事をしていた際、

ご到着前に休日の軽井沢アウトレットを楽しまれたお客様が渋滞にはまり、

お夕食時間内にご到着になれない、という事態が頻繁にありました。

私が働いていた旅館は、

旅館にしては比較的遅めの時間までお夕食を提供していましたが、

旅館によっては18時や18時半がお夕食開始の最終時間というお宿も

結構ありますので、

休日に軽井沢周辺のお宿をご利用の場合は、

お夕食時間を予めご確認のうえ、

十分に余裕を持って計画を立てられるか、

できれば軽井沢観光はチェックアウト後にご予定されると、

時間に追われることもなく、安心して楽しめるかと思います。

予定していたお夕食をお客様に提供できないというのは、

旅館としても大変切ないことなので、

お互いの幸せのために是非ご検討いただければと…。

 

確か15年程前だったと思いますが、

プリンスホテルさんは、3つのブランド「ザ・プリンス」、

「グランドプリンスホテル」、「プリンスホテル」を立ち上げ、

各施設をブランド分けしました。

現在は「プリンス スマート イン」を加え、

4ブランドで展開されています。

お客様も用途などのニーズに応じて、

カテゴライズされた施設のなかから選びやすくなったと思いますが、

プリンスホテルさんはその土地その土地のニーズに合わせた施設作りが

上手いなぁ、と利用する度に思います。

品川プリンスホテルさんのアネックスタワーは、

基本、ビジネスホテルスタイルですが、

勤務先の自席よりも広々としたデスクが設えてあり、

「ここで仕事したい!!」と本気で思いました。(笑)

 

軽井沢プリンスさんも、

軽井沢の自然豊かで別荘地としても有名な風景にマッチした造り、

ゆったりと山のリゾートで寛げる雰囲気を演出しています。

木目やレンガを基調にした内装・インテリア、

ラウンジには大きな暖炉があり、

フロントに入った瞬間に、

「山のリゾートに来たぁ~」という気分にさせてくれます。

利用させていただいたのはフォレストツインルームだったと思うのですが、

大きなピクチャーウィンドウから外の木立なども見えるせいか、

32㎡とは思えないほど、のびのびとゆっくりさせていただきました。

さらにバスルームもホテルにしては贅沢な広さ。

バスタブ、洗面、トイレが一緒になっているユニットバススタイルとは言え、

シングルベッド2台くらいは十分に置けそうなスペース。

スタイリッシュなデザインも相まって、

バスルームとして使うだけではもったいないような…、

売りの温泉大浴場があるけど、

ここでもお風呂に浸かってゆっくりしないと損のような…、

そんな気がしてくるバスルームでした。

 

客室ももちろんですが、

私の場合、トイレ・洗面などのバスルームが素敵で充実していると、

とても贅沢な気分になります。

自宅だとバスルーム関係って、機能性重視だったり、

居室を広く取ろうとすればするほど小さくなりがちだからですかね。

これも一つの非日常感なのかもしれません。

自分でもあまり気付いていませんでしたが、

私にとってはバスルームが最重要チェックポイントかも。(笑)

 

軽井沢での優雅な休日にぴったりの解放感、快適さで、

客室滞在を満喫させていただきました。

 

軽井沢という土地柄でもありますし、

また、SEIBU PRINCE CLUBの優待価格で

利用したせいもあるかもしれませんが、

コストパフォーマンスは良いほうだと思いました。

これまた、全くプリンスさんの回し者ではないのですが、

プリンスホテルさんや西武グループさんのレジャー施設、

ショッピング施設などをちょくちょく利用される方は、

SEIBU PRINCE CLUBさんに入会されるとお得だと思います。

プリンスホテルさんを優待価格で利用できることに加え、

今は、獲得したポイント分をそのまま宿泊料金に充当もできます。

西武グループさんのレジャー施設利用時にも割引を受けられたり、

その他、様々な特典もあったりするので、

お得に利用しつつ、気付いたら、いつの間にか結構ポイント貯まってた!

ということが、私も何度もありました。

もちろん、これはみなさんのご希望次第なので、ご参考までに。

 

そして、プリンスホテルさんは、

ホテルでありながら大浴場を備えている施設も多いですが、

軽井沢プリンスさんもその一つであり、

しかもホテル敷地内から汲み上げているという天然温泉です。

イースト本館とザ・プリンス軽井沢さんの宿泊者専用とのことで、

利用制限がいくつかあるので、

ご利用希望の場合は予めホームページを確認されることをお勧めします。

私が利用した際は、和風温泉の雰囲気のエリアと、

その奥のSPAといった雰囲気のエリアを女性が利用可能となっていました。

ナトリウム-塩化物温泉の温泉成分も

肌をつるつるしっとりさせてくれますし、

軽井沢は雪解け水で水もつるつるしているので、

肌の調子も快調でした。

 

実は私が一番楽しみにしていたのは、

「ホテル」とは少し路線がずれてしまいますが、

「鉄板焼 森」さんでのお食事です!

私は、最後の晩餐は絶対に鉄板焼き!と決めています。

かと言って、

気軽にしょっちゅう鉄板焼きを食べられるほど裕福ではないので、

イベント事や自分へのご褒美などで利用するくらいですが、

「焼く」というシンプルな調理法だけで素材のおいしさを引き立たせ、

視覚で料理人さんの技を、

嗅覚と聴覚で調理中の何とも食欲をそそる香りと音を堪能できる

鉄板焼きというお料理を初めて知ったときの感動がいまだに消えず、

自分に口実を与えられる時は鉄板焼きをチョイスしています。(笑)

 

そして、この軽井沢プリンスさんの中にある「鉄板焼 森」さんは、

前述の軽井沢周辺に住んでいた頃に何度か利用させていただいたのですが、

お席が3方向全面ガラス張りになっていて、

まさに「森」の中でお食事をしている気分を味わえます。

鉄板焼きというと、ゴージャスなお部屋の中や

正面の眺望が素敵なお席は多い気がしますが、

この3方向を自然に囲まれているというお席は、

軽井沢らしくもあり、

また、私はなかなか出会ったことがありませんでした。

春は桜、夏は清々しい森の風景、

秋は紅葉、冬は雪景色と、

四季折々の自然の風景に囲まれて、

気持ち良く、心地良く、ゆったりとお食事をいただけます。

ただ、基本的には”森の中”にあるので、

陽が落ちてしまうと、当然ながら真っ暗で何も見えません。

ご利用される場合は、ランチもしくは早めのお夕食で、

是非景色が見える時間帯をお勧めします。

 

鉄板焼きは、ご存知のとおり、

料理人さんが目の前で最初から最後までお料理を作り上げてくださいますが、

料理人さんはお料理をしつつ、接客もしてくださいますので、

お客様側の様子も実に良く見ていらっしゃいます。

様々なお客様の前でお料理をされるので、

接客のスキルも見習いたいところがたくさんあったりします。

基本的には、お料理の職人さんなので、

寡黙な印象の方、もしくはそう見える方が多いですが、

私は結構、料理人さんの手元をじっと見つめ、

発見や驚きを連れと正直に言葉にし合ってしまうタイプなので、

それを耳にした料理人さんがいろいろ説明をしてくれたり、

新たな知識を教えてくださったりすることが多いです。

その話しにまた質問を返したり、感動や感謝を示していると、

時には、予定外の味付けをサービスしてくれたりすることもあります。

要するにそこはもう、商売とか、料理人さんとお客という関係とかを超えて、

人と人としてのコミュニケーションになり、

お客である私たちは純粋に一人の人間として

料理人さんの技や知識を賞賛し、

料理人さんは純粋に一人の人間として

自分の持てるものを提供しようとしてくれる。

これこそ真の接客の姿だと思うとともに、

これが楽しくて、嬉しくて、

私は鉄板焼きが好きなのだといつも改めて実感します。

昨今はお寿司屋さんなども対面のカウンターは敬遠されがちで、

回転寿司のほうが気楽でいいと思う方も多いと聞きます。

確かに、そういう面もあると思いますし、

TPOに合わせて選択肢があることはいいことだと思いますが、

対面ならではの良さ、楽しさがあり、

それは何よりも人と人とのコミュニケーションであることを

忘れたくないな、と私は思っています。

 

ステーキは何でもミディアムレアが美味しいと思い込んでいましたが、

ある時うかがった鉄板焼き屋さんで、

料理人さんが、

「サーロインやロースなど脂の多い部分は、

ミディアムウェル(=ミディアムウェルダン)がお勧めです。」

と教えてくださり、

それならば、といただいたミディアムウェルのお肉が

びっくりするほど美味しかったことがありました。

ミディアムウェルなんていう頼み方があることすら知らなかったのですが、

それ以来、脂の多い部分のお肉をいただくときは、

決まってミディアムウェルでお願いしています。

 

今回、久しぶりにうかがった「鉄板焼 森」さんの料理人さんとも、

存分に人としてのコミュニケーションを楽しみ、

もちろん、お料理も堪能させていただき、

大満足の時間を過ごさせていただきました。

具体的詳細を書いてしまうと、

いろいろとご迷惑をおかけしてしまう可能性があるので差し控えますが、

次回うかがうときは是非指名させていただきたい料理人さんだと

初めて思ったくらいでした。

 

今回、朝食付きプランで予約をしたので、

ホテル内のレストラン「Karuizawa Grill」さんで朝食をいただきました。

洋食か和食を選べるようになっていましたが、

どちらも栄養バランス、彩りも良く、

ホテルらしい見た目も華やかなお料理で、

もちろんボリュームも満点。

朝からお腹いっぱいいただいてしまい、その日は昼食を抜きました。

 

前日、「鉄板焼 森」さんでサーブしてくださったスタッフの方が、

偶然、朝食のアテンドもしてくださり、覚えてくださっていたようで、

「昨日はありがとうございました。」

とご挨拶くださいました。

ホテルマンらしくスマートな印象の男性の方でしたが、

きりっとしたなかに物腰の柔らかさや親近感もあり、

お食事の場にふさわしい清潔感、爽やかさもあり、

気持ち良く、かつリラックスして朝食をいただくことができました。

 

フロントスタッフの方々も、

軽井沢のホテルにふさわしいスマートな印象でした。

手続きや処理もてきぱきとしているのですが、

バタバタとはしておらず、

サッ、サッ、スッ、と終わる感じで。

かと言って、機械的な印象ではなく、紳士的。

物静かで、

ベタベタした感じではないけど

歓迎してくれているのが伝わってくるというか。

 

忙しいなかで、迅速に対応しつつも、

お客様にバタバタした印象を与えないというのは、

寛ぎを提供すべきお宿としてとても大切なことである一方で、

実際はとても難しいことです。

人間、忙しいと、やはりどうしてもバタバタしてしまうものなので…。

さすが、プリンスホテルさん、と感心すると同時に、

見習いたいな、と激しく自分を反省しました。(笑)

 

フロントスタッフなどの接客も、

お宿のコンセプトや方針、土地柄や客層などによって、

お宿ごとに色が違います。

私の個人的な印象では、京都はどちらかというと、

凜とした感じの接客文化が強い気がします。

もちろん、笑うところではきちんと笑いますが、

笑顔至上主義ではないという感じですかね。

まさに土地柄もあると思いますが、

プライドと気品を軸にした接客という感じで。

だから、お客様によっては、それを冷たいと感じる方もおられ、

時々トラブルが起きたりもします。

京都の人からすると、何の悪気もなく、

本当に普通の対応をしているだけなのですが、

常に笑顔で接客されることが当然のなかで生活をしている人から見ると、

確かに、愛想がない、冷たいと感じられることもあるかもしれません。

日本は小さいと言っても、その土地その土地で風土や文化が違います。

そして、お宿ごとに大切にしているもの、売りにしているものも違います。

その結果として、時には自分の好みでない接客を受けることもありますが、

それもまた、自分好みのお宿を探す楽しみの一つ、と私は思っています。

 

日本のホテルの先駆けでありながら、

時代やニーズに合わせて工夫と進化を続けているプリンスホテルさん。

これからもいろんな場面で、

気付けばプリンスホテルさんを選んでいた、

ということがあるのだろうと思います。

プリンスホテルさん、これからもお世話になります。

よろしくお願いします。