お宿好きな自分の備忘のために書き始め、
お客様の立場に立てば、
「宿側の勝手な都合」
と思われても致し方ないことも書かせていただき、
果たして誰かのお役に立つものなのか、
今時、写真の1枚もないような記事を読んでくださる方がいるのだろうか、
と半信半疑で始めてみましたが、
「いいね」や「役立った」を押してくださる方がいらっしゃると
とてもありがたく思います。
「応援」や「続き希望」を押してくださる方がいらっしゃると
書く勇気が湧いてきます。
リアクションをいただいた皆様、ありがとうございました。
高齢の親と寄り添いながらの生活のため、
投稿ペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、
細々と続けていきたいと思いますので、
よろしければ、気の向く際にお立ち寄りいただければ幸いです。
また、お時間の許す際に、私のお宿の見方のベースを書かせていただいた
番外編「はじめに」
も併せてご覧いただけると、
誤解が生じる可能性も低くなるのではないかと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
前置きが長くなってしまいましたが、
第三弾は、「源泉掛け流しのお宿でのんびりしたい!」と思い、うかがった
静岡県伊豆市・修善寺温泉「新井旅館」さん
をご紹介します。
新井旅館さんは、数々の映画・ドラマ・CM等々のロケ地になってきたので、
ご存知の方も多いかもしれません。
創業は明治5年、150年余りの歴史を持ち、
横山大観や芥川龍之介をはじめとする著名な文人・墨客に愛され、
15棟の建物が国の登録有形文化財になっているという、
聞いただけで日本文化の香りに包まれそうなお宿です。
(新井旅館さんの公式HPに詳しい情報がたくさん掲載されています。)
梨園ともご関係が深いそうで、
2代目松本白鸚さん(9代目幸四郎さん)と一緒に作られたという
新井旅館さん謹製の「幸四郎」というお茶菓子が
客室に用意されていました。
門に立ち、お宿を目の前にした瞬間に、
「ザ・日本のお屋敷」という印象の建物、
垣間見える癒やしのお庭の雰囲気、
ロケ地に選ばれるのもうなずける出で立ちです。
ロビーに一歩入ると、歴史を重ね、貫禄が備わった空間に、
ちょっと気後れするくらいでした。
でも、スタッフのみなさんがにこやかに、気さくにご案内くださるので、
そんな緊張もすぐにほぐれます。
15年ほど前にも一度うかがったことがあるのですが、
その際も感動した見事なお庭は健在で、
今回は前回よりもじっくりとお庭を堪能してきました。
山間の立地でありながら、新井旅館さんは広大な敷地を所有しておられ、
鯉が泳ぐ大きな池を囲むように客室が並んでいたり、
山の斜面を登る渡り廊下の途中に離れがあったり、
館内通路からは大きな窓越しに川が流れる庭園が見えたり…。
どこもかしこも本当に古き良き日本家屋のたたずまいです。
私が一番気に入っているのは、ロビーから出てすぐの池の脇の渡り廊下です。
お庭の川が流れ込むこの池にもたくさんの鯉が泳いでおり、
右手にはそのお庭の川にかかる太鼓橋が視界に入ります。
そんな絵画のような風景の渡り廊下で
コーヒーやジュースをいただくことができます。
晴れた春の朝、心地良いそよ風を受けて、
日本庭園の木漏れ日を眺めながらいただくコーヒーは最高でした。
修善寺温泉は、”伊豆の小京都”とも言われているそうですが、
まさに京都の別荘にお邪魔したような、ゆったりとした優雅な気分でした。
お恥ずかしながら、修善寺温泉が”伊豆の小京都”と言われていることを
全く知らずに今回もうかがったのですが、
実は一時、京都の旅館でお仕事をいただき、住んでいたことがあり、
修善寺はずいぶん京都に似ているなぁ~…
とずっと思いながら滞在していました。
帰宅後に調べてみて納得。
それは京都に似ているはずですよね。
”小京都”と言われているくらいですから。(笑)
修善寺温泉を流れている川の正式名称は修善寺川だそうなのですが、
桂川という通称のほうが今はメジャーになっているようで、
京都の嵐山を流れるあの桂川と同じです。
修善寺の桂川にも渡月橋がかかっていて、竹林もあります。
”小京都”なので、規模は京都に比べるとすべてコンパクトで、
きっと観光のために後付けされたものもあると思いますが、
源氏や北条家ゆかりの地でもあるので、
昔から京都をイメージして施されてきたものもあるのかもしれません。
私が一番嬉しかったのは、
京都同様、修善寺の青紅葉も素晴らしかったことでした。
京都の桜、紅葉はもちろん見事で、
その時期の京都が大混雑してしまう理由は良く分かります。
ただ、実際に京都に住んでみたら、
静まりかえった広大な寺社仏閣で、
半端なく蒸し暑い京都の夏に涼を運んでくれ、
青い空に活き活きと映えて生命力を感じる
鮮やかな緑の青紅葉が一番好きになりました。
クーラーがない場所では屋内外問わず、
じっとしていても汗が噴き出し、流れてきて、
何事にも気力が失せる京都の夏ですが、
青紅葉を見ていると清々しさを感じ、少し気力が湧いてきます。
今回、新井旅館さんでご案内いただいたお部屋が桂川に面していて、
川に覆い被さるように美しく生い繁る青紅葉を窓から眺めたとき、
京都で感じたのと同じ清涼感と力強さに、
癒やされ、元気をもらい、嬉しくなりました。
以前うかがった際は、
和のアンティークといった雰囲気のお部屋だったと記憶していますが、
新井旅館さんも残すべきところは残しつつ、
少しずつ改装をされているようで、
館内通路の壁なども綺麗にされてからそれほど経っていないようでしたし、
ご案内いただいたお部屋も古さを感じず、
居心地の良い、綺麗な和室でした。
洗面やお手洗いなども和でありながら、現代風で新しく、
気持ち良く使わせていただきました。
今回、内風呂温泉付きのお部屋を予約したのですが、
そのお風呂も恐らく改装されたようで、
内風呂というには贅沢な広さのスタイリッシュな和風浴室でした。
木桶を大きくした形の浴槽で、窓は太い格子を2枚組み合わせてあり、
1枚をずらして開けると格子越しにお庭が見えて半露天のようになります。
(建築に詳しくなく、うまく説明ができずにすみません。)
雰囲気だけでも十分贅沢な浴室でしたが、
お部屋のお風呂もすべて源泉掛け流しとうかがい、
その贅沢さに驚きました。
ネットをよく見れば、あちらこちらに記載されていたのですが、
細かいところまでは見ていませんでした。
ただ”源泉掛け流しのお宿”をピックアップして予約したので、
大浴場は源泉掛け流しだろうと思っていたのですが、
お部屋の浴室まで源泉掛け流しだとは思っていませんでした。
大浴場と貸切風呂だけでも館内に6ヶ所、
さらにお風呂付きのお部屋もすべて源泉掛け流しとのことで、
思わず、お忙しい仲居さんを引き留めて、
「修善寺はそんなに湯量が豊富なんですか!?」
と詰め寄ってしまいました。(笑)
修善寺温泉は湯量が豊富なことに加え、
山間という立地もあり、
大規模旅館・ホテルが建ち並ぶ、というわけでもないため、
一軒一軒のお宿が十分な源泉を提供できているということのようです。
お部屋のお風呂は、浴槽の蛇口をひねると源泉が出てくるという、
温泉好きにとってはなんともワクワクする造りになっていました。
源泉温度が60度~70度ほどあるそうで、
加水により、ちょうど入りやすい41度に調整しているとのことでした。
源泉は大概、そのままでは浸かれない高温か低温か、の場合が多く、
源泉のままちょうど良い温度という温泉には、
私はあまりお目にかかったことがありません。
低温の場合は加温をすれば良いですが、高温の場合は悩ましいです。
源泉から浴槽に注ぐまでの間に、
ちょうど良い温度になってくれるような湯温、工程であれば良いですが、
それでも日本には四季があるので、自然任せでは、
冬は必要以上に温度が下がってしまい、逆に夏はほとんど温度が下がらず、
通年でちょうど良い湯温に保つというのは至難の業です。
もっと言うと、源泉そのままでは、
その”日”の気温、湿度、風の強弱、天気によって日々湯温が異なり、
さらにもっと言うと、朝・晩と日中でも湯温が変わってしまいます。
以前、仕事をしていた源泉掛け流しの旅館では、
高性能な文明の利器に頼らず、
湯守りの経験知に基づく職人技で湯温を調整していましたが、
湯守りは、毎日、毎時、”今日の気候、今の気候”と格闘していました。(笑)
湯守りに言わせると、「温泉は生き物」だそうです。
また、人によっても、「ちょうど良い」と感じる湯温は異なるので、
すべてのお客様に大満足していただけるように調整するというのは、
本当に難しいです。
源泉を生かそうとすればするほど、湯温を一定に保つのは難しくなります。
浸かるたびに湯温が異なるお風呂のお宿にご宿泊の際は、
時に浸かり心地が良くないこともあるかもしれませんが、
源泉を生かそうと努力しているお宿なのだな~
と、大きな心で受け止めていただけると幸いです。
高温の源泉をお客様が心地良く楽しめるようにするには、
浴槽に注ぐ湯量を調整する方法や加水をする方法が代表的だと思いますが、
どちらのほうが温泉として良いかというと、
正直、どちらも一長一短ではないかと思います。
温泉は地中から湧き出したその瞬間から、空気に触れることによって、
既に刻一刻と泉質が変化していくと言われており、
本当に繊細なものなので、
完全にフレッシュな源泉に触れるというのは
そもそも難しいものなのだと思います。
でも、例え、源泉からは多少変化していたとしても、
それでもなお様々な効能をもたらしてくれるのが温泉なのだろうと
私は思っています。
少し話しがずれてしまいました。(汗)
湯温の調整方法は、それぞれお宿のやり方によりますが、
中伊豆はワサビが名産になるくらいお水も良いそうですので、
加水方式の新井旅館さんのお湯は、
源泉と名水で相乗効果があるかもしれませんね。
柔らかくて軽く、つるつるとした肌触りの入り心地の良いお湯でした。
そして、新井旅館さんの大浴場と言えば、
なんと言っても「天平大浴場」が有名です。
昭和9年に建築されたものをそのまま使用しているとのことで、
これからもその姿を維持していくために、
あえて新たにシャワーを設置することもせず、
頭や身体を洗いたい方は
蛇口からのお湯をかけ湯で浴びることになっています。
他の大浴場などにはシャワーもちゃんとあり、
頭や身体も洗いやすいので、
私は天平大浴場ではお湯に浸かるだけにして、
貴重な建造物の保存・維持に微力ながら協力させていただきました。(笑)
天平大浴場は脱衣所に足を踏み入れた瞬間、
厳かとも言えるような歴史ある雰囲気に少し圧倒されました。
天井がはるばる高い総檜の木造で、
パーティション程度にも感じる脱衣所の壁の向こうに
広々とした空間の気配がし、
お寺の本堂や道場に身を置いた時のような神聖な気持ちになりました。
実際、内風呂でありながら、
浴槽の縁は、そこに元々存在していたという巨大な伊豆石を削ったもので、
屋根を支える柱や梁も迫力すら感じる立派な太さ。
静まり返った広い空間で、それらに囲まれながら、
湯口から落ちるお湯の音だけが響くのを聴いていると、
秘境の河原でお湯に浸かっているかのような気分になりました。
しかも、隣接するロビー脇の池よりも浴室が低くなっており、
浴室の窓から水中を泳ぐ鯉と同じ目線で水中を見ることができます。
人が来ると餌をもらえると思っている鯉たちが窓際に集まってきて、
超過密状態。(笑)
餌をあげられなくてごめんね、と謝っておきました。
いにしえの日本人は、
現代のような文明の利器を持っていなかったにもかかわらず、
粋と風情を追求し、時に驚く技術でそれを実現してきました。
そのたくましさと信念の強さにはいつも感服します。
そして、天平大浴場と真逆に、
今年(2023年)のGWにオープンしたばかりというのが、
(半)露天の大浴場「折節の湯 雪花」です。
(半)を付けさせていただいたのは、
完全に露天の部分と、
天井があり、雨の日も安心してお湯を楽しめる半露天の部分が
つながっていたからです。
壁に囲まれている浴槽なので、
とてつもない解放感!というわけではありませんが、
露天部分は見上げれば、見えるのは空だけで、
心地良い空気が流れていますし、
少しこじんまりした印象が逆にプライベート感もあり、
落ち着ける気がしました。
この「雪花」には3つほどシャワー付きの洗い場があります。
館内4ヶ所の大浴場のなかで私が一番気に入ったのは、
野天風呂「木洩れ日の湯」です。
まさに野天というか、
日本庭園の真ん中でお湯をいただいている
という感じでした。
自然味を残しながらも手入れされた木々、
その木々を通して柔らかく射す木洩れ日、
時間がゆっくり流れるどころか、
時間が止まっているかのような、
非日常の幸せな時間を過ごさせていただきました。
恐らく、外国の方向けに脱衣小屋はありましたが、
基本的には浴槽のすぐ脇に露天の脱衣場所がある、
まさしく野天風呂のスタイルです。
こちらは完全に洗い場がなく、お湯に浸かるためだけのお風呂です。
夜もライトアップされていて綺麗だとは思いますが、
是非、「木洩れ日」を楽しめる明るい時間帯にもご利用をお勧めします。
貸切風呂も空いていれば自由に利用できる「翡翠」と
事前予約制の「睡蓮」
(ただし、深夜~早朝にかけてはこちらも自由利用になっています。)
の2ヶ所があります。
私は大浴場とお部屋のお風呂を楽しむだけでも十分で、
今回貸切風呂は利用しませんでしたが、
館内で湯巡りができてしまいますので、
温泉を満喫したい方は15:00にチェックインして、
思う存分、お湯に浸かってください!
私も15:30頃にはチェックインしたのですが、
滞在中は、お湯をいただくか、お食事をいただくか、寝ているか、
みたいな状態でした。(笑)
そして、お湯同様に楽しませていただいたのが、お食事です!
贅沢に7種ほどが盛られたお造りは、
どれも脂がのっていて、さすが伊豆!でした。
たくさん美味しいお魚料理をいただきましたが、
目を見開くほど美味しく、強烈に記憶に残ったのは、
イサキの焼き物でした。
お魚自体の味が濃く、
身もフワフワしているけど、しっかりした食べ応えがあり、
普段あまり口にしないお魚ですが、
「イサキって、こんなに美味しいんだ!?」
とビックリ。
こういう発見があると、お宿に来て良かったなぁ~と
しみじみ思います。
そして、炊き合わせ(=煮物)などのお出汁がしっかり、ばっちり効いていて、
京都でメジャーな真っ赤な近江こんにゃく
(でも、その名の通り、滋賀県の名産です。)
をお出しいただいたので、もしや…と思い、仲居さんにうかがったところ、
やはり京都でお勉強をされたことのある料理長さんとのことでした。
お料理は京風会席と謳っておられたので、
当然と言えば当然かもしれませんが、
京都の味をベースにしたお料理がいただけて、
本当に嬉しい、楽しい時間でした。
是非、炊き合わせはお出汁まで飲み干すことをお勧めします。
私は、お出汁の繊細な風味を味わう度に、
日本人に生まれて良かったなぁ…
とつくづく思います。
そして、中伊豆名産のワサビも最初に丸ごと、
おろし金と一緒に出してくれて、
おろし方や味の違いを丁寧に説明してくださり、
好みでいろんなものに使うように置いていってくれます。
おろし立ての良質な生ワサビ。
ほんのりピリッとするのですが、
主張しすぎず、甘みさえ感じるようなマイルドなお味なので、
辛いものが苦手な私もどんどんおろして味わわせていただきました。
そして、締めのご飯はワサビとお醤油、鰹節をまぶしていただきます。
間違いのない組み合わせではありますが、
たくさんのお料理をいただいた後に、
さっぱりさらっといただけて、
爽やかにお食事を締めくくることができました。
プランによって異なりますが、
私が予約したプランでは夕・朝食ともお部屋食で、
ベテランの仲居さんと一緒に
研修中の若い仲居さんが担当してくださいました。
新井旅館さんのように歴史があり、
日本の伝統・文化やその接客を学べるお宿には、
興味を持たれる若い方も多いようで、
仲居さんに限らず、研修中のご様子の方も含め、
ベテランスタッフさんと同じくらい若いスタッフさんを見かけました。
ご担当いただいた仲居さんは夕・朝食とも同じ方々でしたが、
横に広く、エレベータのない2階建ての昔ながらの建物でのお部屋食は、
配膳も本当に重労働です。
恐らく、階段を上り下りするからだと思うのですが、
仲居さんたちは大きな重い木のお盆に大量の食器を積み、
それを片方の手のひらに載せ、さらに肩に担ぐスタイルで、
厨房と客室を行ったり来たりしていました。
お宿や飲食店でお仕事をされたことがある方はおわかりだと思いますが、
食器をたくさん積んだお盆というのは、見た目以上の重さになります。
お盆自体もしっかりとした重いものとなると、
それを片手で安定させて肩に担ぐというのは、もう職人技の領域です。
私は、力はあるのですが(笑)、手が小さいこともあり、
とてもではありませんが、怖くて真似ができません。
若くて華奢な女性の仲居さんでさえ、
そのスタイルで食器を運んでいる姿を拝見し、
修行の賜だなぁ…と見入ってしまいました。
お宿の仕事は決して楽な仕事ではないのですが、
若い方が興味を持ってお宿の世界へ飛び込み、
頑張っておられる姿を拝見するとありがたく、
また嬉しくなってしまいます。
世界からも注目される、貴重な日本の旅館文化を、
是非とも末永く受け継いでいっていただけたらと、
心の中でエールを送らせていただきました。
最期に、ご留意点を一つだけ。
ご存知のとおり、修善寺温泉は中伊豆の山の中に位置し、
温泉街というよりも別荘地に来たかのように自然豊かなところです。
山の中、自然豊かとなれば、当然、虫たちも豊かです。(笑)
どんなに窓を閉め、ドアを閉めていても、
虫の中には自分の身体の形を変えて、
窓のサッシやドアの隙間から室内に入ってきてしまうものもいます。
それこそ小さな小さな虫たちは、ほんの少しの隙間があれば、
自由自在に室内にお目見えします。
私も虫は好きではないので、
山間の温泉地で仕事をし、山間の街に住んでいた頃、
自宅はなるべく虫が入ってこないようにあれこれ策を講じていましたが、
それでも家の中で虫たちに遭遇してしまい、
慌てふためくことが何度となくありました。
お宿もお客様に快適に過ごしていただくために、
できる限りの対策を施していますが、
それでも自然豊かな場所で虫たちを完全にシャットアウトすることは、
ほぼ不可能です。
でも、だからこそ、お部屋から青々とした木々を眺め、
川のせせらぎに耳を傾け、癒やしの時間を過ごすことができるのです。
虫嫌いの私も、山間のお宿や立派な庭園を有するお宿を利用する際は、
自然豊か=虫たちも豊か
と覚悟をして臨み、お部屋で虫たちに会ってしまった時は、
「こんにちは。ここに入ってきちゃったんだね。ごめんね。」
と思いながら、退治させてもらっています。
もちろん、自分の手に負えないサイズの虫の訪問時には、
無理をせず、申し訳ないですが、フロントに駆除を依頼します。
大抵、お宿の方は慣れていて、技も持っているので、
あっという間に対処してくれます。
虫嫌いの私でも、山間のお宿で仕事をしていたおかげで、
お客様の前でも慌てず騒がず、カメムシを異臭を発生させずに、
ガムテープで一瞬で捕獲できるようになりましたので。(笑)
(ご存知の方も多いと思いますが、
カメムシは攻撃されるととんでもない異臭を放ち、反撃してきますので、
くれぐれも殺虫剤等は使用されないようにご注意ください。
反撃されたら最後、
その日、そのお部屋で過ごすことは恐らく不可能です。)
新井旅館さんも、客室に殺虫剤を常備したり、
屋外につながるドアには必ず閉めるよう注意書きを貼ったり、
仲居さんも夜は光に虫が寄ってきてしまうので、
日が暮れたらカーテン等を閉めるよう助言してくださったり、
方々気を遣っていらっしゃいましたが、
みなさんもその点については覚悟のうえでご宿泊ください。(笑)
ただ、新井旅館さんは、それだけ気を遣っていらっしゃるわりに、
私が利用した際は、思ったほど虫たちには出会いませんでした。
このブログでは、各お宿の”魅力”を書き残すことを目的にしているので、
ネガティブ・キャンペーンは絶対にしない、と決めているのですが、
このような、お宿の努力だけではどうにもならない部分で
印象が悪くなってしまうのは悲しいので、
あわせて書き添えさせていただきました。
ご理解いただけるとありがたいです。
同業での経験を踏まえて再訪した新井旅館さんは、
以前うかがった際よりも数段魅力的に感じられました。
修善寺温泉は、温泉や立地も良く、風情もあるせいか、
新規参入企業も多く、
良いお宿が次々と増えた時期があったと記憶しています。
現代の技術をもってすれば、
日本なら、ほぼどこでも温泉が出るような今の時代、
温泉地が生き残っていくには、
ブランド化や活気も必要不可欠だと思うので、
新規参入企業の進出は決して悪いことではないでしょう。
ただ一方で、旅館として始まり、古き良き日本の姿を大切に守り続け、
今に伝える新井旅館さんのようなお宿も、
共生し、必ずや残っていって欲しい、
そう祈りながら、お宿を後にしました。