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机の部屋に戻ると、好奇心いっぱいの私は、クリーム角ボタンの方にも興味津々でした。
「お母さん、もう1つのも同じ?点けてみていい?」
「いいよ。赤いのないないしてからね。」
「うん。」
赤丸ボタンの電池を外し、机の上に置きました。お母さんに抱っこしてもらい、フックを出して、伸びをして、赤丸ボタンをフックにかけ、クリーム角ボタンの方を取りました。机の上に置くとフックをホールダーに止めました。
パチン
ナショナルのロゴが光っていました。
「のんのしてみる。」
「どん、しないようにね。」
椅子を押さえてもらい、座面に手をつき、座れました。点検を始めました。
「豆球切れていないかなぁ?」
「開けてみる。」
カバーを回すと、レンズと反射鏡と豆球が一体になったケースが外れ、点検後戻すのが簡単になっていました。レンズには、縞模様状の段差はなくなっていました。初期型はガラス製、後期型は強化プラスチック製ですが、どちらも中心部が分厚い凸レンズになっていました。
翳してみると、線が繋がっていました。
「大丈夫だよ。」
ライトケースをカバーに挿入し、回し入れ復旧しました。母に閉まりを確かめてもらいました。
「上手上手。戻せたね。」
「後ろカバーを回して、中身入れてみよう。」
「うん」
置いた単1電池2本を挿入です。電極を間違えないようにしました。
ポトンポトン
「入った。蓋閉めるよ。回すの柔らかいね。」
「赤いのより、楽になったね。」
「うん。閉まっている?」
母に閉まりを確かめてもらいました。「大丈夫だよ。」
電池装填が終わると、椅子から降りて床の間へ移動しました。針仕事の道具があるため、母とここで過ごすのが常でした。
母と面と向かい、手遊びを始めました。
「お母さん、もう、右手だけで点けられるようになったよ。」
「左手でおさえて、右手で動かして、にぎにぎしていたもんね。」
「うーん。父さん指と母さん指でボタン挟んでいるよ。白?キレイ。キャラメルみたい。」
左右側面を親指と人差し指で挟んでいると、母は上下側面を触ってくれました。
「真四角だね。クリームだよ。クリームキャラメルってあるものね。お母さん、この形と色が気に入ったから、おばあちゃんに欲しいって言って買ってもらったんだよ。」
N35は、ボタンの色形が目立ち、正面から見ると、女性的な優しいフォルムにあふれていました。
「うーん。ずっとこっち使いたい。ボタンかわいいもん。いい?」
まだ滑舌が悪いから、ボタンをバタン、スイッチをシュイッチと言っていました。
「いいよ。あんたの誕生日祝いだもの。電池入れておくから、持っていておいたしていいよ。」
祖母と母の目論見通り、クリーム角ボタンのものは、私の所有物になりました。とても嬉しかったです。操作しながら、タッチ感覚を話しかけていました。
「真上から押してみるよ。」
ギューッ
「クニャクニャ。こーんなに凹んだ。かくれんぼしちゃったね。」
親指と人差し指を尖らせて表面で止めていました。
「緩めるよ。」
パッと離すと音がしました。
パチン
今度は、母が左右側面を挟みました。
「とこーん。見ーつけた。細長いね。」
「うーん。柔らかくて気持ちいいね。左から押してみるよ。」
ギューッ
「右が凹んだ。」
「平らになっているね。」
「ほんとうだ。」
「指離すよ。」
パチン
「とこーんと戻った。」
「右から押してみるよ。」
「左が凹んだ。」
「平らになっているね。」
「ほんとうだ。」
「指離すよ。」
パチン
「とこーんと戻った。」
「面白いね。下の縁を押してみるよ。」
ギューッ
「バネの音わかるよ。上の縁が凹んだ。」
「平らになっているね。」
「ほんとうだ。」
「指離すよ。」
パチン
「戻った。」
「上の縁を押してみるよ。」
ギューッ
「下の縁が凹んでから、平らになったね。」
「離すよ。」
パチン
「戻った。」
ボタンが四角いと斜めに押しても縦横を押しても、凹むね。」
「よくわかるでしょう。長押ししても、指先が疲れないようになっているね。」
ボタンの動きがわかると、人差し指をボタンにかけて全押ししながら、ゆっくり戻し、親指でスイッチをゆっくり上げてみました。
「ほら、スイッチここで硬くなったよ。」
「どれ。硬いね。」
「ボタンちょっと緩めて、スイッチ上げてみるよ。」
カチッ
「柔らかーい。動いた。まぶしい。」
喜びで笑みがこぼれました。
「ここが境目だね。」
「親指と人差し指いっしょに使うと早く点けられるね。」
「赤いのでやってみたら、わかったよ。点いたら、親指を人差し指につけてボタン止めるんだよ。」
「光が落ち着くね。」
動作を続けました。
パチン
「消えたね。」
「ボタン尖った。気持ちいいね。」
「さっきみたいに点けたり消したりしてみるね。右上の角から押すよ。」
ギューッ
「点いたね。消している時より、ボタン硬いけど、同じくらい凹んでいるね。軟らかーい。」
パチン
「戻った。左上の角から押すよ。」
ギューッ
「点いたね。」
パチン
「左下の角から押すよ。」
ギューッ
「点いたね。」
パチン
「右下の角から押すよ。」
ギューッ
「点いたね。」
パチン
「下の縁は?」
ギューッ
「点いた。」
「右の縁は?」
ギューッ
「点いた。」
パチン
「上の縁は?」
ギューッ
「点いた。」
「左の縁は?」
ギューッ
「点いた。」
パチン
「どこからボタン押しても凹んで点くね。」
「面白いでしょう。ボタンの硬さが変わるけど、やんわり押せるね。お母さんもこの感じが大好きなんだよ。」
「わかる。もう一段上げてみるね。人差し指でボタン凹ませて、半分くらい緩めているよ。」
「ずっと点いているね。」
「スイッチ上げているよ。」
「ボタン硬くなってるね。」
「ちょっとボタン緩めてみるよ。」
カチッ
「動いた。チラッとしたけれど、ずっと点いているね。」
「ここが境目だね。」
パチン
「ボタン緩めても消えないね。」
「ボタンをおいたしてみるね」
ギューッパチン....
押す方向を変えたり、離すタイミングを変えたりして遊びました。
「ほんとうだ。消えない。ボタン凹んだり、尖りったりする。軟らかーい。かわいいよね。」
「うーん。」
母と代わる代わる操作して、遊びながら、コツを覚えていました。
「お母さん、チクチクするから、照らして。」
「うん。」
針箱つきの裁縫台まで行きました。針の臍溝を照らしたり、縫い目を照らしたりしました。
「手元が明るいと助かるよ。」
「うーん。」
青白いシェードを通した光は、優しく見え、大人と同じことが出来て嬉しさいっぱいでした。指先の疲れを自分で判断しながら、フラッシュと常時点灯を切り替えて点けて照らしていました。点灯中はクリームのボタンを親指と人差し指でやんわり挟み押ししていました。
おやつの時間になり、居間に移動しました。
「でんち消すよ。お母さん、ボタン押していて。ぼくがスイッチ下げるから、どんな感じか言って。」
カチッ
「だんだん柔らかくなった。」
カチッ
「消えたら、クニャクニャ。」
パチン
「面白いね。」
「うーん。」
胴体を握りしめながら、親指と人差し指でボタンを挟み押ししながら、母と手を繋ぎ、居間に移動しました。
居間に行き、おやつの時間になりました。冷やしたスイカ、トマト、キュウリなど、裏の畑で取れたてのものを井戸水で冷やしたもが、夏らしいおやつでした。自然な夏の食べ物が楽しみでした。
涼を取りながら、世代を越えた団らんを楽しみました。居間は、縁側からたっぷり光が入るいちばん明るい部屋です。祖祖母が、ゆったり過ごす部屋でした。夏でも火鉢の炭が燃えていて、鉄瓶には、水が入りお湯が沸いていました。祖祖母は、キセルタバコが好きで、この火種で燻らしていました。お盆期間になると、暑さの中にも、秋を感じる涼風が開け放した窓から入っていました。
母と懐中電灯のいたずら話に興じていると、祖母と祖祖母が、微笑みながら聞いていました。井戸水汲み、針仕事と、たいへんな家事を照らせたから、次は、何を照らそうかと、期待が膨らんでいました。
おやつが終わると、夕食まで、再び、床の間で過ごしました。井戸水汲み、では、広く明るく照らす単純な動作でした。針仕事では、臍溝通しは、近くを明るく、縫い作業の時は、広く明るく、調節の難しさを学びました。クリーム角のボタンタッチがすっかり気に入り、握ると真っ先に、親指と人差し指をボタンに移動させ、挟み押ししていました。母に本を読み聞かせしてもらいました。母に教わりながら、スポットライトのように、腕を近づけたり、遠ざけたりして、光の輪を調節していました。飽きて来ると、いろんなものを照らして遊びました。灯り取りの丸窓は、竹の簒がはまっていて、幻想的でした。吊棚には、母が娘時代に習っていたお琴と薙刀が大切に保管されていました。母の昔語りをたくさん聞かせてもらっていました。
台所から、夕食の匂いがすると、居間は闇に包まれていました。灯りを点けたまま、母と手を繋ぎながら、私が照らす光を頼りに、囲炉裏端まで行きました。囲炉裏端まで行くと、灯りがあるので、消しました。ボタンを人差し指で半押ししながら、親指でスイッチをゆっくり下げました。
カチッカチッ
「消えた。ボタンくにゃくにゃ。」
母に指先を触ってもらいました。
「柔らかくなったね。」
「離すよ。」
パチン
「いい音。」
熱くなったレンズを上にして、胴体をポケットに入れました。
母と階段下にある収納から、お櫃、食器、箸を出し、夕食の支度です。祖祖母と祖母は汁物の最後の仕上げをしていました。家宝の味は、台所から伝えられていました。母は、お釜から、お櫃にご飯を移し変えていました。幼い私は、お盆に箸と食器を載せました。こうして、みんなで夕食の支度をしました。
縁側からの夕陽は、食卓の支度にはじゅうぶん明るかったです。母はお櫃を、私は、食器盆を食卓に運びました。次に、母は、台所に行き、出来上がった焼き物、煮物を持って来て食卓に並べました。私は、お箸、茶碗、お椀を並べました。最後に、祖母が、汁物を運ぶので、母は、こぼさないように足元手元を照らしながら、布引き線を伸ばして、台所の裸電球を居間に持って来ました。こうして、夕食が始まりました。今でも、このシーンが脳裏に深く残っています。
支度が終わって座ると、懐中電灯をポケットから出し、ちゃぶ台下に置きました。
食後のお茶を飲み、祖祖母がラジオ部屋で脱衣し入浴し始めると、食器類箸をお盆に載せて運搬準備です。私は、ちゃぶ台下から、懐中電灯を取り出し、点灯させました。
「お母さん、点けるよ。」
胴体を右手で握り、母に筒先を見せながら、親指と人差し指でボタンを挟みました。
「上手、上手。慣れたね。」
「ほら、こう。もうすぐ点くよ。」
親指をスライドスイッチに当て、人差し指をボタン真上に軽く押し当て底まで凹ましました。ゆっくりボタンを半押しまで戻しながら、親指でスライドスイッチをゆっくり半分まで上げました。
カチッ
「点いた、点いた。」
歓声を上げ、親指と人差し指を尖らせ、クリームボタンをグイッと止めました。母に指先を触ってもらい、感触を共有しました。
「しっかりボタン止めていてね。」
「うん。」
指の腹にボタンの角味が食い込み、快感になっていました。ボタンが戻ると母と代わる代わる側面を挟み、暗闇に映えるボタンを撫でていました。バネ機構が軟らかいから、撫でているうちに、ボタンが自然に押下されました。スイッチ台の前面にクリーム角のボタンが聳え立っていると、可愛らしく見え、触れたくなるのがわかりました。
母は、布巻線を縮めながら電傘根本のソケットを持ち、囲炉裏端へ裸電球を戻しました。居間が暗くなると、私が照らす灯りが頼りになりました。母と祖母が手分けして、食器を片しました。片しが終わると、母といっしょに就寝準備です。腕を出したり、引いたりしながら、灯りの輪を大小に調節し、母の手元を照らしました。
「お母さん、ほら、青白くてきれい。」
「ライトの縁が青いからだよ。」
「お母さん、ボタンも白っぽくてきれい。こっちでも、(カチッ 常時位置)こっちでも、(カチッフラッシュ位置)点けられるよ。」
母に筒先を見せながら、指先を素早く動かして、灯りを途切れさせずに操作して見せました。母に始終、指先を触ってもらっていました。
「切り替え、柔らかく出来るようになったね。」
「うん。スライド、真ん中にしておくと、ボタンすぐ押して点けられるね。」
「そうだね。夜中にお便所行く時なんか、便利だよね。」
敷き布団、掛け布団、最後に蚊帳を吊りました。蚊帳が吊られると、もうひとつの部屋が出来たようで嬉しくなりました。次に、縁側の硝子戸と雨戸を閉める手元を照らしました。曇り硝子を通して月影がこうこうと部屋を照らしていました。雨戸を閉めると、すっかり漆黒の闇になりました。私のフラッシュライトが重要な役目になり、ますます、嬉しく楽しくなりました。雨戸の襞が灯りに映えていました。お便所寄りの一ヶ所は吊り下げタンクと手水鉢があるから、開けておきました。就寝場所が整い、祖母が食器洗い、米研ぎ、入浴を終えると、私たち親子が入浴です。
「お母さん、また、すぐ点けるから真ん中にしておくね。」
「いいよ。」
そう言いながら、ボタンをパチンパチンと弾き、点滅させて遊びました。スライドを真ん中にしたまま、ボタンから指を離し消灯させると、フラッシュライトを蚊帳の枕元に置きました。まだおいたしていたかったけれど、入浴後遊べると思い、母と浴室に行きました。
浴室には、裸電球がありました。着替えるから、囲炉裏端の裸電球も就寝前まで点灯させたままにしていました。
入浴を終えると、就寝前のお便所タイムです。私は蚊帳に入り、枕元からフラッシュライトを取りました。握りしめると、親指と人差し指をボタンに伸ばし、点灯させ、母の目元に照射しました。
「ほら、明るい。」
「そうだね。」
「ボタンのクリーム、見える?」
「見えるよ。」
凹んだボタンは、前面から光の中でよく見えていました。左手でも操作出来るよう、慣れて行きました。母が右手、私が左手、灯りを真ん中にして手外出の際、安全確保のため、母が車道側、私が歩道側にするためです。手を繋ぎ、指先を触ってもらいながら、台所へ行きました。囲炉裏端の裸電球は点灯させたままにしていました。釜戸脇の水瓶から吊り下げタンクと手水鉢の用水を運びました。母が柄杓で汲む水の手元を照らしました。先ず、タンクを持ち、軒に吊り下げました。次に、手洗を持ち、手水鉢に開け、台所に戻しました。これが終わると、灯りを真ん中に挟みながら、母と手を繋ぎ、お便所入口まで行きました。
「お母さん先に入るから、待っていなさいね。」
「はい。」
ボタンを緩め、母にライトを手渡しました。母は、親指と人差し指をクリームボタンに挟み、グイッと止め、灯りを点けました。
「これが出来るから、便利だよね。」
「うーん。」
微笑みながら、女子用便器に入りました。母は灯りを点けながら、用足しするなんて、器用だと思いました。母が終わると、灯りを点けたまま、出てきて、筒先を私に向けました。ボタンの色が見える、このアングルがすっかり気に入っていました。母とバトンタッチすると、クリームボタンを親指と人差し指でホールドし、点灯させ続けました。まだ、男子用を使えないから、パンツを入口で脱ぎ、母に体を支えてもらいながら、女子用便器で用足ししました。便器は穴が広いから、中心に灯りが届くよう、頑張って照らしました。唐草模様の便器がお洒落に見えました。自分で光を操れて、だんだん成長する自分に喜びを感じました。終わると、ボタンを緩めました。ズボンを履くと母が先に手を洗いました。私は、母の手元を照らしました。交代し、私が母に照らしてもらい、手を洗いました。終わると、私が手拭いで、レンズにかかった飛沫をしっかり拭きました。母に指先を触ってもらい、手を繋ぎながら、蚊帳に入りました。
蚊帳に入ると、暫くライトで遊ばせてもらいました。スライドを上げ下げして、ボタンを押したり挟んだりスイッチボードにぴったりつけたり、ボタンを押したり離したりしてスライドスイッチを上下させて、母に指先を触ってもらって感触を指先に覚え込ませました。ポジションの切り替えでスライドとボタン硬くなったり、軟らかくなったりして、灯りが点いたり消えたりするのが楽しかったです。スライドを切り替える寸前に人差し指をやんわり弱めスライドをやんわり上下するコツを飲み込みました。いたずらしているうちに、指先が力尽き、胸元に胴体を抱えさせてもらって眠りました。
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