しるべない旅

幼い頃の思い出と日々の雑感気まぐれに綴っております。

フラッシュライト4

2023-09-17 02:30:04 | 日記

正式な名称は、フラッシュ式といいますが、おしゃれ心の強い母は、ボタンの色形に魅せられていたことがよくわかります。子どもの私にも、美品だと思えました。だから、母に許しを得ると、大事な遊び道具として、肌身離さず、なるべく長く握りしめていたかったです。
「ほら、起きて。」
「眠ーい。お便所の時間?」
「そうだよ。お母さん行くから、おしっこして来よう。」
「はーい。」
おねしょで叱られて以来、こうして起こしてもらうのに安心していました。母は、フラッシュ位置で筒先を私の目蓋に向けて照射しました。すぐに常時点灯に切り替え、左手で握りしめさせてくれました。親指と人差し指をボタン側面に移し、軽く挟み撫でました。かくするうち、ボタンが力みなく押下し、スイッチ台についているのがわかりました。
「お母さん、ボタン触っていると、気持ちいいね。ほら、こんなに凹んでる。」
母に指先を触ってもらいました。
「ほんとうだ。ぺちゃんこしたね。」
「ずっとおいたして点けていてもいい?」
「いいよ。ここだと消えないから、落ち着くでしょう。」
「うーん。」
親指と人差し指の指先が、自然とボタン表面に載り、指の間がやんわり丸まっていました。やがて、ボタンがホール下に吸い込まれる形で凹み、指先は、ボタンホールの縁を押さえる形になりました。
「左手のにぎにぎ出来たよ。ほら、お母さん、ボタン隠れんぼしたよ。」
「どれ。ほんとうだ。どこ行ったかな?見つかるかな?」
「面白ーい。」
「おしっこ終わるまで、凹ませといてみな。」
「うーん。」
壊したら遊べなくなると思い、ちょっぴり不安でしたが、やんわり指先をつけて押下していました。
「お部屋は照らしちゃだめだよ。おばあちゃんたちがお寝んねしているからね。」
「はーい。」
手繋ぎ点灯で、廊下をしっかり照らしました。お便所の入口まで行きました。今度は男子用便器で用足しの練習です。ボタンを親指と人差し指で押さえ、足元を照らしながら、右手でズボンを下げました。三動作を一度にやるのは難しかったです。脱衣はどうにかひとりで出来ました。母に身体を支えてもらい、用足ししました。男子用便器は、薄緑色の陶器製でした。獅子のモニュメントが真ん中にあり、そこをしっかり照らしながら、目標にして放尿しました。
「おしっこたくさん出た。おちんちん、硬くなっている。」
「火いたずらすると、おしっこ出るって言うからね。気持ちいいからだよ。お母さんもたくさんおしっこ出るよ。」
用足しが終わると、右手でパンツとズボンを履き、チャックを閉め、ホックをはめました。
「ボタン緩めるね。」
パチン
広げた親指と人差し指をボタンがすり抜けました。
「ほら、戻った。消えなかった。」
半べそ顔が笑顔になりました。
「いい音したよね。」
長い間ギューッと押下されていたから、バネの復元力が強まっていました。
点灯させたまま、母に手渡しすると、母も、親指と人差し指でボタンをギューッと凹ませて、お便所に入りました。母が用足しを終わると、私は、手元を照らしてもらい、手洗いしました。この時も、母は、ボタンを隠すようにして押下していました。おちびさんの私は、手水鉢を使いました。
「お母さんもボタンずーっとギューッしているね。」
「そうだよ。柔らかくて触ってると気持ちいいよね。」
パチン
母がボタンを緩めると、交代して、私が母の手洗いの手元を照らしました。私もまた、ボタンを隠すようにして押下しました。母は吊り下げタンクを使いました。灯りを上に向けて、光の輪を大きく広げて、母の手元を照らしました。
「大きくなってこっちが使えるようになるといいね。」
「うーん。」
終わると、抱っこしてもらい、手拭いの湿り気を利用して、点灯させたまま、筒先の飛沫を拭きました。ボタンはずっと押下させたままにしました。
再び、母と手繋ぎ点灯しながら、廊下を歩き蚊帳に戻りました。ボタンの押し始めと終わりで光が変化するのがわかり、ひそひそ語っていました。
「ほら、こーんなに尖っているんだね。」
ボタンの力をそっと緩めながら、親指と人差し指で高さを計りました。
「凹ますのに力いらないよね。」
「指先縮めるよ。ほら、凹んでる。半分止めるよ。灯りどう?」
「チラッとしたね。でも消えない。」
「どうして?」
「フラッシュにした時、ボタンの接点がつくからたよ。」
「うーん。また凹ますよ。ボタンホールに指先がついた。止めるよ。灯りどう?」
「また、明るくなった。ボタン隠れんぼしたね。」
「うーん。指先ゆっくり広げるよ。」
「ボタン戻っているね。」
「壊れないで戻ってる。凄いね。半分止めるよ。灯りどう?」
「チラッとしたね。でも消えないね。」
「ここもフラッシュにした時、ボタンの接点がつく場所?」
「そうだよ。戻った時も同じなんだね。」
「全部戻すよ。」
パチン
「いい音だよね。灯りどう?」
「また、明るくなった。」
「面白ーい。お母さん、もっとおいたしたい。」
「いいよ。」





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