Feline & Machairodont "Saber-tooths"
CONVERGENT-EVOLUTION
Wt. 80kg~
ロングダン"トラ" Longdan tiger (Panthera zdanskyi)
色鉛筆イラスト:
頭部の輪郭は幅広で角ばっており、トラ的であるが、やや長めで突出気味の鼻面や、いわゆる「おでこ」の隆起を欠く点など、マカイロドゥス亜科の特徴とも重なる要素を入れてある。
体のプロポーションについては分からないのだが、プリミティヴなマカイロドゥス亜科種との形態的収斂(伸長した上顎犬歯など)がうかがわれることや、「B2」などの野生トラの体型を考慮して、ロバストに仕上げた。実際に、ビッグゲーム・ハンターとして高度に適応していたものと思われる。
比較的に長い背骨は、食肉目におけるplesiomorphicな形質でもあることを考慮した。
模様の意匠は大きめのロゼットが伸長し融合しつつあるというもので、管理人のオリジナル。
ただ、本種はトラ(Panthera tigris)そのものではなく、全くに異質な斑紋を有していた可能性も高いだろう。
●(Ji H.Mazak博士御本人の承認をいただいた復元図です。)
ⓒサーベル・パンサー
シカゴにあるフィールド自然史博物館所属のV. Simeonovsky氏による頭部復元図(油彩画)。
ヒョウを思わせる淡い毛色である。
2013年11月13日追記:
数年前から「既知の最古のヒョウ属種」であろうとして、その存在が噂されていた「ヒマラヤ産の古代ヒョウ」について、学問的な詳細が公式に発表されました。
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/281/1774/20132686
(英文論文)
コメント欄で本種への言及をしてから、早や1年半、Panthera zdanskyi の発見からは、丸2年が経過しています。
新種のヒョウ属種の学名は、Panthera blytheae 。
生息年代はおよそ400万~600万年前(中新世後期~鮮新世前期)にまで遡り、チベット高原南西部一帯に分布していたとみられます。
アメリカ自然史博物館のチームが中国・パキスタン国境付近で発掘した頭骨からは、ウンピョウほどの大きさで、寒地に適応した(前額部形態などに、それがうかがえるとのこと)、ユキヒョウに近縁なネコ科猛獣の姿が浮き彫りになりました。その生態、狩猟形態も、ユキヒョウに似通っていたと考えられています。
http://static.guim.co.uk/sys-images/Guardian/Pix/pictures/2013/11/12/1384297334218/Worlds-
oldest-big-cat--009.jpg ←頭部の復元イラスト(デジタルペイント)は、御大、Mauricio Anton が手掛けています!
これまで「最古」との評判が上がったヒョウ属種の骨格は、いずれも断片的でした。上で紹介している「ロングダントラ Panthera zdanskyi」の場合と同様、今回発見されたのもほぼ完全な頭骨であり、その価値は極めて高いと言えるでしょう。
分子系統学の成果から、ヒョウ亜科(Pantherinae)※の分岐時期は1000万年以上前まで遡ることが予測されてきましたが、古代種の化石年代は鮮新世以降に集中しており、進化過程の全容をたどる作業は難航してきました。
例えば、Panthera palaeosinensis(トラに最も近縁とされることがある)は、理論的に、Panthera blytheaeに先んじて分岐していたはずであり、ヒョウ属以前のウンピョウの系統は、さらに早期に袂を別っていたことになります。
(ecxerpt from 'Himalayan fossils of the oldest known Pantherine establish ancient origin of big cats' , J.Tseng et al.(2013) )
ともかく、生物地理学(Biogeography)の研究からも、ヒョウ属は中央アジアに起源をもち、そこから放散を展開したであろうことが予測されてきたので(その背景として、ヒマラヤ山脈の形成につながった地殻変動も、あるいは原動力として働いたのでしょうか?)、ヒマラヤの地で最古の、それも「とびきり古い新種」が発見された事実は、意義深いことに違いありません。研究員も記しているように、ここからさら
なる「古代ヒョウ」の報告が続くことも、期待できるのでしょう。
中新世時代の中央アジア(特にチベット高原)はメガファウナの宝庫であったと聞きますが、ユキヒョウはこの地に現在まで留まり、恐らくは「近縁種」と同様の生態を、今に伝えているわけです。
文責:サーベル・パンサー
トラのストライプ模様はもとは大きめのロゼット斑紋
から発展したという説を聞きかじったことがありまし
て、この復元のオリジナルデザインとして反映させま
した。
現在のところ本種が最古のヒョウ属の基底種の一つだ
ということになっていますが、学者たちの間ではもっ
と古い、かつ真正のヒョウ属種の存在が予想されてい
ますね。例えばチベット高原で見つかったとされる、
後期・鮮新世のネコ科種(ウンピョウ、あるいはユキ
ヒョウに似ていた?)のうわさなどあるのですが、と
もかく正式な発表を待ちたいところですね(笑)
先史時代のネコ科動物というとマカイロドゥス亜科がとりあげられる事が多いですが、ヒョウ属にもいろいろな種類がいたと思うと盛り上がります。現代にももう少し生き残ってくれていれば...とも思いますが(笑)
力があるにしても、マカイロドゥス亜科がごっそり失
われてしまったというのは、自分にとっては残念至極
ですね(笑) スンダランドのウンピョウは剣歯猫の
定義には、あるいは当てはまるかもしれませんが、剣
牙が下顎から突き出た幻獣的イメージとは、やはり程
遠いですからね。
>ウンピョウ属からの派生系になるんでしょうか?
また聞きでまだ論文になっていないはずの情報であ
り、詳しいことは言えませんが、教えてくれた人物に
よるとユキヒョウが分岐した頃と、地質年代的に重な
るとのことです。どんな姿をしていたと考えられるの
か、詳細を伝えられる機会がきっと持てると思います。
古の記録を塗り替えるPanthera blytheae の正式な発
表が、ようやくなされました。生息年代は、コメン
ト欄には鮮新世後期などと書きましたが、どうして、
遥か中新世後期にまで遡る可能性があるとのことです。
お返事が遅れました。
興味深い指摘だと思い、少し調べてみました。
ネコ亜科とマカイロドゥス亜科の分岐進化史を総括した学術論文(Werdelin et al., 'Phylogeny and evolution of cats (Felidae)', 2010)の中に、化石記録の有無が併記された系統樹が示されており、ウンピョウ属二種の共通祖先と考えられるタクソンの化石も、報告されていることが分かります。
残念ながら、化石といっても恐らく断片的な歯に終始していて、ウンピョウ系統は熱帯雨林に分布してきたこともあり、化石が残りにくいことが言及されています。
ウンピョウ属とヒョウ属の共通祖先についても、分岐時期は推測されていながら、化石記録に欠くというのが実情で、いわゆる「ゴーストタクソン」ですね。
今後の発見、調査の進捗に期待したいところです。
ご存知かもしれませんが、マカイロドゥス亜科の基底種の一つ、ヒョウ大のパラマカイロドゥス(プロメガンテレオン)属種は、頭骨形質が現生のウンピョウに極めて近似するといわれます。もちろん、ウンピョウ系統の祖先とは何の関係もない、剣歯猫タクソンではありますが、興味を惹かれる事例だと思います。
ライオン、トラ、ヒョウ、チーター、ジャガー、ユキピョウ、ピューマ、オオヤマネコ等に、近縁種や祖先種がいるのにウンピョウだけいないとは思えなかったので。
歯の化石だけで、頭骨とかは発見されてないんですね。
今後の発見、調査に期待したいです。
早く見つかって欲しいです!