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電柱の脇に無縁坂の説明があった。
「御府内備考」に 称迎院前通りより本郷筋へ往来の坂にて、往古、坂上に無縁寺これ有り候に付、右様あい唱え候旨申し伝わる。 とある。
団子坂に住んだ森鴎外の作品「雁」の主人公岡田青年の散歩道ということで親しまれる坂となった。
その一節
「岡田の日々の散歩は、大抵道筋が極まっていた。寂しい無縁坂を降りて藍染川のお歯黒のような水の流れ込む不忍池の北側を通って、上野の山をぶらつく。」
森鴎外が「寂しい坂を下りて」と小説に書いたこの坂は、淋しかったらしいので、人も車も通らない時を狙って写したつもりなのです。
無縁坂というと、さだまさしが作詞作曲した、私の好きな曲があります。
母がまだ若いころ 僕の手をひいて
この坂を登るたび いつもため息ついた
ため息つけば それで済む
後だけは見ちゃだめと
笑ってた手は とてもやわらかだった
運がいいとか 悪いとか
人はときどき 口にするけど
そういうことって たしかにあると
あなたを見て そう思う
忍ぶ 忍ばず 無縁坂
かみ締めるような
ささやかな 僕の母の人生