70の瞳

笑いあり涙あり、36人の子どもたちが生活する児童養護施設「さんあい」の出来事や子どもと職員の声をお聞きください。

「さよなら、トカ」(再掲)その2

2015-09-09 09:53:21 | 愛すべき子どもたち

次の日、夏休み。「なんだか、ことしの夏休みが、自分の中で一番の思い出になりそう。だって、トカがいるから。」わたしは昨日の場所へ急いで行った。するとトカがばたんと倒れていた。

「だっ、だいじょうぶ!?」わたしはトカをだきおこした。「もしかして、お腹がすいているのかも。」わたしはおやつにもってきていたドーナッツをちぎってあげた。

「まさか食べるわけ・・・・」

「むしゃむしゃ」

「食べてる~!!」

「おいしいよ、ありがとう、ハミー。」

「ええ、元気になってよかった、トカ。」わたしはびっくりした。でもトカが元気になってくれるならそれでよかった。私たちは次の日も次の日も、いっしょに遊んだ。いつのまにか二人、いや一人と一匹どちらも笑顔になっていった。

 

ある日。「夏休みもあっという間だったね。」

「うん、でも楽しかった。」

「何それ、なんかもうおわかれみたいじゃん。」

「そうだね、、、、。」

その時わたしはトカにあえない気がした。次の日、きのう行った場所へ行ったけどトカはどこにもいなかった。次の日も、次の日も、、、、、。 

 

ある日のこと、わたしはしょぼしょぼ歩いていると地面から声が聞こえた。わたしはびっくりして下をむいたとき、アリが「きのうヘビがトカゲをくわえて巣に行ったんだって、そのトカゲお気の毒にね。」

わたしは思った、トカのこと。でも、、、。わたしはアリさんにこう言った。

「あの、すみません。」

「わっ、おまえはだれだ?」

「わたしはハミー、さっき話していたこと、ほんと?」

「あっ、はい。ほ、ほんとうです。」

「あ、その~、あらたまらなくていいから。それよりトカゲの色は何色だった?」

「えっと、たしか茶色で、、。」

「トカだ!、トカだよっ。」

「おじょうさん、トカゲを探しているのかい?」

「うん。」

「それは無茶だよ。いくらなんでも茶色いトカゲなんてこの辺にたくさんいるよ。」

「トカゲの耳の横ぐらいに傷はなかった?」

「あ~、あった。」

「やっぱり、トカの耳の横には傷があるの。で、あなたヘビのすみか知ってる?」

 

-----次回に続く

中庭でトカゲを探す子どもたち。自然は子どもたちの感性を育ててくれる。

 


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