マロンは見た目の愛らしさと相反して、
家族以外にはなかなか心を許さない子でした。
家族に対しても、
いつでもなんでもどこでも好きにしてくれてOKではなかった。
その理由のひとつは私のせいかもしれません。
マロンがまだ赤ちゃんだった、お散歩デビューしたての頃。
お散歩コースのひとつにあるマンションの前を通ると、
小さな子供たちが集まってきて、
『かわいい、かわいい』と撫でてもらうことがよくあったのだけど、
無知だった私は、多分マロンがあまり嬉しくなかったことに気づけなかった。
もちろん子供たちに悪気などまったくなく、
ぬいぐるみのように小さくてふわふわのマロンを、
ただただ触りたかっただけで、
手加減できないのも自然なこと。
そのうちマロンは、
小さい子どもの姿を見ると身構えるようになってしまい、
歳を重ねるにつれて気難しさも進んで、
マズル(口の周り)などはほとんど触らせてくれなくなりました。
そんなマロンが唯一すべてを許す人が、
生まれた時からトリミングをお願いしているトリマー、Yさんでした。
丁度数日後にトリミングの予約をしていたのだけど、
とてもそんな状態ではないと思い、
キャンセルするためにお電話したところ、
とにかく一度連れてきてくださいと。
もう面倒みれませんと言われるのを覚悟して、
状況を説明しながら涙が混じる私に、
『できることはなんでもするから一緒に頑張ろう』
と言ってくださってまた涙。
早速連れて行ったマロンの様子を見たYさんは、
『汚れやすいところの毛を短くした方がケアしやすいね』と、
顔周り、お腹、お尻周りを素早くカットし、
不自由ながらバタバタと手足を動かすマロンに、
『びっくりしたね、マロン。でもすごいよ、ガッツあるじゃん。こんなに頑張って生きようとしてるものね』と声をかけながら、
私たちにも日常ケアの細かな注意点を指導してくれました。
そうだよね、マロンこそ一番戸惑ってるはず。
気が付けば体が動かなくなって、
どうしたらいいかわからなくて、
みんなから心配そうな目で見られて、泣かれて、
なんなんだよもう!って思ってるかもしれない。
マロンはこれからどうなってしまうのだろう。
何を、どこまで、どうしてあげたらいいんだろう。
こんなマロンを置いて仕事になんか行けない。
元気なマロンしか知らなくて、
途方に暮れるばかりの私は、
自分の心の内しか見えてなかった。
『気づいてやれなかったなんて思わないで、
全部自分たちで背負わないで、
だけど全部受け入れて頼れるところはどんどん頼るの、
まだまだこれから先、長いんだから』
帰り際にかけられたYさんの言葉にどれほど救われたか。
失った日々に涙して、悔やんで、絶望していたけれど、
まだこれからがある、もっとずっと一緒にいたい、
いられるように頑張りたいという気持ちが、
私の中に芽生えてきました。
何でもない日常のひとこまだった、
座ること、首を持ち上げること、まっすぐ前を見つめること。
当たり前だと思っていたひとつひとつの動作も、今思えば奇跡。
ミカ
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