(1)誰にもチャンスが Chacun sa chance
1930年 黒白(スタンダード)76分
〔監督〕ハンス・シュタインホーフ、ルネ・ピュジョル(脚本・台詞)
〔原作〕ブルーノ・ハルトヴァルデン〔脚本〕リシャール・アルヴェ、チャーリー・レ―リングホッフ〔撮影〕カール・プート、ヴィクトル・アルメニーズ〔美術〕ジャック・コロンビエ〔音楽〕ウォルター・コロ、ニコ・ドスタル
〔ギャバンの役〕服屋の店員マルセル・グリヴォー
〔共演〕ギャビー・バッセ、ルネ・エリベル、アンドレ・ユルバン、ジャン・サブロン、レイモン・コルディ
〔封切〕1930年12月27日(仏)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕You Tube
〔注〕ギャバンの記念すべき長編映画デビュー作。1930年に製作されたギャバン出演作はこの1本だけ。服屋で働くしがない店員(ギャバン)が劇場のチョコレート売りの女の子(バッセ)と出会い、アヴァンチュールを楽しむオペレッタ映画。仏独合作、パテ=ナタン(仏)とマルセル・ヘルマン・フィルム(独)の共同製作。当ブログの女優の部、ギャビー・バッセの項を参照のこと。
(2)メフィスト Méphisto
1931年 黒白(スタンダード)164分
〔監督〕アンリ・ドバン、ニック・ヴァンテル
〔原作・脚本・台詞〕アルテュール・ベルネード〔撮影〕ジュリアン・ランジェル、ジュリアン・シャルマン、ポール=ルネ・ナヴァール〔美術〕リュシアン・キーフェル〔音楽〕
〔ギャバンの役〕刑事ジャック・ミラル
〔共演〕ルネ・ナヴァル、ジャニーヌ・ロンスレ、ヴィヴィアンヌ・エルデル、ルシアン・カラマン、フランス・デリア
〔封切〕1931年4月17日(仏)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕なし
〔注〕凄腕の探偵ギャバンが悪の組織メフィストと対決する連続4話の推理もの。原作・脚色者のアルテュール・ベルネード(1871~1937)はフランスの著名な探偵小説家。フィルム・オッソ製作。
(3)パリは恋人 Paris Béguin
1931年 黒白(スタンダード)117分
〔監督〕オーギュスト・ジェニーナ
〔脚本〕フランシス・カルコ
〔撮影〕フリード・ベン=グルンド〔美術〕セルジュ・ピムノフ〔音楽〕モーリス・イヴァン
〔ギャバンの役〕ボブ(やくざ、押し込み強盗)
〔共演〕ジャンヌ・マルナック、フェルナンデル、ラシェル・ベラント、ヴィオレーヌ・バール、ジャン・マックス
〔封切〕1931年9月10日(仏)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕You Tube
〔注〕フィルム・オッソ製作。ベルギー出身のオペレッタ女優ジャンヌ・マルナックが主演で実際の彼女と同じ役柄であるが、映画はミュージカルに犯罪ものを加えた内容。準主役のギャバンはパリの暗黒街でボブと呼ばれるダンディなやくざ。背広に白いワイシャツ、きちんとネクタイを締め、ソフト帽を斜めにかぶって、いかにも色男といった感じで登場。相棒役のフェルナンデルは、この頃はまだ浮浪者のように痩せていて、ギャバンとは対照的に風采の上がらないお調子者のやくざの役である。ある夜、オペレッタのスター女優(マルナック)の邸宅へ宝石泥棒に入ったボブ(ギャバン)は、女優に見つかるが、彼女を押さえつけているうちに色気に負けて、ベッドで一夜を過ごしてしまう。その同じ夜、殺人事件があって、ボブは容疑者として逮捕される。顔写真入りの新聞記事でそれを知った女優は、ボブのアリバイを証明した。ボブは釈放され、オペレッタ「パリは恋人」の初日の開幕前に劇場へ駆け付けるのだが……。
(4)何よりも恋が最高 Tout ça ne vaut pas l'amour
1931年 黒白(スタンダード)87分
〔監督〕ジャック・トゥールヌール
〔脚本・台詞〕ルネ・ピュジョル
〔撮影〕二コラ・ブルガソッフ、アンリ・バーレール
〔美術〕リュシアン・アグタン〔音楽〕ユーゴ・ヒルシュ
〔ギャバンの役〕ラジオ販売店の息子ジャン・コルディエ
〔共演〕マルセル・レヴェック(主役)、ジョスリーヌ・ガエル、マディ・ベリー
〔封切〕1931年10月16日(仏)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕You Tube
〔注〕中年で独身の薬屋の主人(ルヴェスク)が彼の家に寄宿することになった若い娘(ガエル)に恋をし、いろいろと尽くすのだが、彼女の方はラジオ屋の若いハンサムな男(ギャバン)に惚れてしまうという話。冴えない中年男を主人公としたラブ・コメディで、ギャバンはダンスの上手なおしゃれな若者に扮した。娘役は十代で人気スターになったジョスリーヌ・ガエル。この時彼女はまだ14歳だったというが、17,8歳に見える。明るく大変可愛らしい女優で、当時フランスではアイドル的存在だったようだ。ギャバン(27歳)が彼女と二人の場面では妙にニヤけて、照れくさそうにしていた。パテ・ナタン製作。
(5)グロリア Gloria
1931年 黒白(スタンダード)
〔監督〕ハンス・ベーレント、イヴァン・ノエ
〔脚本〕ハンス・ツェケリー、ゲオルク・C・クラーレン、フランツ・シュルツ
〔撮影〕フレデリック・フクルサンク〔美術〕エルヴィン・シャルフ〔音楽〕ハンス・J・サルテル
〔ギャバンの役〕飛行機副操縦士ロベール・ヌーリー
〔共演〕ブリギッテ・ヘルム、アンドレ・リュゲ、アンドレ・ロアンヌ、マディ・ベリー
〔封切〕1931年10月30日(仏)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕You Tube
〔注〕ドイツ人俳優によるドイツ語版もあって、ギャバンが出演したのはそのフランス語版。主役のスター女優ブリギッテ・ヘルムはどちらにも出演した。タイトルの「グロリア」というのは大西洋を横断した飛行機の名称で、その操縦士と妻の物語。ブリギッテ・ヘルムは小さな息子のいる妻の役。服装も地味で、美貌、演技ともまあまあ。操縦士役のアンドレ・リュゲは『リラの心』にも出ていたが、当時の中堅人気俳優で、親友役の男優(アンドレ・ロアンヌ)も同様。ギャバンは、この二人に比べればずっと若く、脇役だが、明るくコミカルで面白い役回りだった。映画批評家時代のマルセル・カルネがこのギャバンを見て、将来有望な新進俳優として注目した。パテ=ナタン、マタドール・フィルムの共同製作。
(6)一夜のために Pour un soir
1931年 黒白(スタンダード)77分
〔監督〕ジャン・ゴダール
〔原作〕ロベール・ド・イール〔脚本〕?
〔撮影〕?〔美術〕?〔音楽〕?
〔ギャバンの役〕海軍の水兵ジャン
〔共演〕コレット・ダルフォイユ、ギ・フェラン、シリー・アンデルセン、レジーヌ・ダリー
〔封切〕1933年(月日不明)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕なし(フラン語版DVDあり)
〔注〕ユニオン・デ・プロデュクトゥール・ド・フィルム製作。フランス本国ではずっとお蔵入りになっていたが、2年後に『ステラ・マリア』と改題し公開。休暇中の水兵(ギャバン)が港町トゥーロンで美しいが気まぐれなパリ出身の歌手に出会い、束の間のアヴァンチュールを楽しむが、やがて男が女を真剣に愛しはじめ、悲劇を招くといった話。
(7)リラの心 Cœur de lilas
1931年 黒白(スタンダード)90分
〔監督・脚本〕アナトール・リトヴァク
〔原作〕チャールズ=ヘンリー・ヒルシュ、トリスタン・バーナード〔脚本〕ドロシー・ファーナム、セルジュ・ヴベール
〔撮影〕クルト・クーラン〔美術〕セルジュ・ピメノフ〔音楽〕モーリス・イヴァン
〔ギャバンの役〕街のやくざマルトゥス
〔共演〕マルセル・ロメ(主役)、アンドレ・リュゲ、マドレーヌ・ギティ、フレール、フェルナンデル
〔封切〕1932年3月13日(仏)
〔日本公開〕なし
〔ソフト〕You Tube
〔注〕フィフラ製作。ロシアのウクライナ出身でユダヤ人の血を引くアナトール・リトヴァクはドイツで映画を作っていたが、1930年ナチの手から逃れ、フランスに移住した。そのリトヴァクがフランスで撮った初期の作品で、パリの裏街をサスペンス・タッチで描いた佳作。要塞跡の土手に中年男の殺害死体が発見される。警察は、現場に落ちていた手袋から犯人が「リラ」と呼ばれる若い娼婦(マルセル・ロメ)であると断定し、この女を追う。リラにはやくざの情夫(ギャバン)がいるが、安ホテルのカフェで出会った男(アンドレ・リュゲ)に惹かれていく。しかし、この男は私服の刑事だった。刑事はリラと接するうちに無実を信じ、彼女を愛し始める。ギャバンは脇役だが、後年の当たり役ペペ・ル・モコに通じるような魅力を発揮していた。「ゴムの女」という曲を歌う場面がなかなか良い。主演のマルセル・ロメはアンニュイを漂わせた美人女優だったが、病気を苦にし、この映画が公開された同じ年の冬に、セーヌ川で入水自殺を遂げた。
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