ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 150ページ目 盲目のソムリエ  トリックが通用しない?   

2015-03-17 11:41:09 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【150ページ】


 打田は、ソムリエナイフを手に持って、2番のワインを抜栓しようとした。
しかし、彼の心は動揺して、それに集中できなかった。
和音に、ワイン名とヴィンテージを言い当てられたからではない。
彼に、ワインを飲む前にワイン名とヴィンテージを推測で言われたからである。

 和音とのテイスティング対決で考えていたトリックは、師匠の粉河が先にテイスティングして、
先に正解を答えて勝利する仕掛けであった。

しかし、その前提は崩れ去った。

和音は、テイスティングをしなくても、先に答える可能性が出てきたのだ。
師匠の粉河もそのことに気付いたに違いない。

すると、より早く答えようと思って、テイスティングの判断を誤るかもしれない。


「打田さん、抜栓に手間取っていますね?」


 大沢理事長が、怪訝そうな表情を浮かべながら催促した。

「あっ、すいません」と打田が我に返った

「粉河さんに、先に注いでやってください」

「承知しました」


 打田は、2番のワインを抜き、グラスに注いでテーブルに置いた。

「粉河先生、ワインをテーブルに置きました。」

打田は、粉河にワインを置いたことを知らせた。

粉河は、いつものように目が見えているかのようなスムーズな動きで
グラスを手に持った。


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