今回は、2000年10月20日初版発行(小学館)の「後催眠」である。前回、オリジナルつまり氏の最初の作品でもある「催眠」を読んだが、割とこれの続編(実際は催眠より前の話)と言う感じの物語であるが、単独でも読める面白い小説である。
○ハードカバーの書籍の帯には100万部突破の「催眠」「千里眼」シリーズ最高傑作
胸を打つ愛と感動の物語
○分野を超えて早くも反響の声続々
読む読書を深い感動へといざなう、催眠がおりなす<癒し>と<愛>の物語・・・文芸評論家 末國善己氏
○この作品は、荒廃しつつある現在の医師と患者の関係に一石を投じている・・・赤坂パークビル脳神経外科院長 服部光男氏
○書籍裏の内容も紹介しておく
『嵯峨敏也は謎の女からの電話を受けた。嵯峨にとって、かっての催眠療法の教師でもあった精神科医・深崎透の失踪を、木村絵美子という患者に伝えろ。女の声は一方的にそう指示し、電話は切れた。癌に侵され、余命いくばくもない深崎と、絵美子のあいだに芽生えた医師と患者の垣根を越えた愛。だがそこには驚くべき真実が隠されていた-----。
「催眠」を遥かに凌ぐ感動、異色にして旨を打つラブストーリー。リアリズムとファンタジーの狭間に位置する松岡ワールド最高傑作。 』
この「後催眠」の主人公は、精神科医深崎透とその患者である木村絵美子である。神経症であった絵美子は、深崎により一旦は完治するが、何らかの原因で再発する可能性があり、食道癌で自分が長くない事を知った深崎は、絵美子の神経症再発の為に、嵯峨や絵美子に後催眠を掛けた。
神経症完治後仕事についていたが、その仕事の途中で、警察の部長の息子に部屋に連れ込まれ一時監禁される。その恐怖から、警察に届けるが、担当警部と神経医者はそれをもみ消そうとする。この事が原因となり神経症が再発する。再発した事により、深崎が掛けた後催眠により、恵美子の前に深崎が出現し、警察に立ち向かうようアドバイスする。結果的に自分に逃げようとせず、警察に立ち向かう事で、絵美子は神経症を克服する。そしてそれは、深崎との永遠の別れを意味していた。全ては、自分の前に出現した深崎は既になくなっており、深崎の後催眠によって、自分自身が作り出した物であることが分かる。
と言うような簡単ですが、あらすじをまた書いてしまいました。
非常に不思議な思いのする小説ですし、最後に上記に書いた神経症再発後に現れた深崎が実は、自分自身が生み出した(見せている物で、自分の中の自分との対話であった事)ものであった事が分かるという結末は、本当に不思議な思いを抱かせてくれました。
「催眠」「後催眠」を連続で読んでみて感じるのは、自分の病気との関連性が非常にあり、それだけ世がすさんでいるのかもしれないとますます思う次第です。
氏が2000年に発行された時より、現実から逃避したくなるような現象が現在は更に増加しており、若い世代の失業率の増加や、高齢者の自殺増加等を考えると神経症(最近は神経障害)にならない方が、不思議で、正常な神経を維持する事が難しいと思う。
先日、公務員の話をしたが、勿論大半はまじめな方だと思うが、一方で非人間的にならないと、神経がおかしくなるのも事実ではないかと思う。
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