松岡圭祐氏の書籍紹介です。この本は、松岡圭祐氏の世界その15「千里眼の死角」「ブラッドタイプ」 で紹介した「千里眼の死角」の次に当たる作品です(実際の出版順からすると「へーメラーの千里眼」の後になるのですが)。つまり、「千里眼の死角」で失敗した米国のディフェンダー計画(静止衛星に搭載されたレーザー光線による防衛攻撃システム)の話と、その最初の犠牲者となったはずのジャジ・ア・バカラが生きており、牢獄にとらわれた岬美由紀を救い出す。一方でマインドシーク・コーポレーションと言うメフィストコンサルティング・グループの子会社から、米国大統領が補佐を受けている話に繋がっている。「千里眼」シリーズの中では、個人的には千里眼シリーズ(松岡圭祐氏の世界その3) で紹介した「千里眼 運命の暗示」 と同じパターンで海外を舞台にした死にそうにつらい中で自分の信念を最後までまげず、意思を貫き通し、軌跡を起こすというような感じの物語です。氏の書籍は長編が多いのですがこれもご他聞に漏れず、2段組で558頁もあります。
なお、今回は同僚のカウンセラー嵯峨も警視庁の蒲生もでてきません。
<私的要約>
イラクで発生した4人の日本人人質事件を解決する為に、外務省の職員と同行した岬は、戦場の混乱にまぎれて、4人と外務省職員を逃がす事に成功するが、独りシーア派武装勢力アル=ベベイルに拘束される事となる。
一方5年前、別れたきりの両親の突然の自動車事故による死亡で、多大の損害賠償を強いられる事になった岬は、当時女性自衛官として始めて救難ヘリのパイロットとなり、多大な功績を残した天笠千春二尉の昇進に伴い、後継を選ぶ為の3ヶ月の訓練・テストに参加する。公認に選ばれると直ぐ昇進し、損害賠償を短期間で返却できるからである。しかし、結果はその後継には選ばれなかったが、その直後女性初の戦闘機パイロットとなる。
さてアル=べべイラに拘束された岬は、首領に「戦争を失くす為に臨床心理士になった」と言い、その答えについて「トランス・オブ・ウォー」と回答する。首領たちは、その言葉からシーア派の会議に岬を参加させるが、「トランス・オブ・ウォー」の話をした途端、反感を買い、地方の牢獄へと送られてしまう。一方でこの集会でシーア派が集まった事により、米大統領はシーア派を殲滅させるイラク攻撃を計画する。ジャジ・ア・バカラの死をかけた救出で、岬は「トランス・オブ・ウォー」の理論を研究していた教授のもとへ行く。教授は3,500年前から戦争がなくならなかった事から、「トランス・オブ・ウォー」の理論は正しいが、それを証明するのは不可能だと言う。失意の中岬は、それでも「トランス・オブ・ウォー」を証明する為、独り戦場にプロペラ機で向かう。米軍とシーア派の交戦する中に入り、「トランス・オブ・ウォー」を証明する事ができるのか???
書 籍:「千里眼 トランス・オブ・ウォー」
発行年:2004年11月1日初版発行
発行所:株式会社小学館
価 格:1,900円+税
<ハードカバー帯のストーリー紹介>
元・女性自衛官の臨床心理士。たった独りでイラクをすくえるか
イラクでまたも日本人人質事件が発生、四人の人質にPTSDの疑いが濃厚との情報を察知した日本政府は、交渉役の外務省職員に臨床心理士を同行させる。岬美由紀、二十八歳。彼女がこの重大な任務に選出された理由はカウンセラーとしての実績ではなく、その過去にあった・・・。
女性自衛官初の戦闘機パイロット、岬美由紀が臨床心理士に転向した真の理由とは。そして、人類の歴史の長きに渡って戦争の狂気が持続する、その心理の根源はどこにあるのか。
究極の平和を目指し、孤立状態に陥りながらも奮闘する美由紀の波乱万丈の冒険と、驚愕の集団心理分析の類稀なる能力を描く、冒険ミステリー最新傑作。
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