楡周平『マリア・プロジェクト』に続き、氏の作品紹介であるが、この作品も前回紹介の楡周平『マリア・プロジェクト』やそれ以前紹介の楡周平『クーデター』と同様に、冷酷非情なストーリーとなっている。つまり楡周平『マリア・プロジェクト』にかなり近いが、最後を問わず途中でも、主役と思われる登場人物が、殺されその事件を計画した悪の親玉は最後には、逃げおおせるという結末でもある。これは現実の世界では真実かも知れないし、フィクションだから言えるが、実際に起きることは無いだろうと信じるしかない。と言うぐらいの楡周平『マリア・プロジェクト』を同じように本当におきている世界かも知れないと思わせる、恐怖の物語でもある。
氏の作品はスケールが大きく、それが実現するような怖さがグローバル規模で考えられるのが面白いし、また実際起きるかもと言う恐怖でもある。それが上記で述べた計画した悪玉が消える事(つまり逃げおおせる事)に、現実的な恐怖を感じる。最もそうなる前に、主人公みたいな人物、つまり通常は人命救助に当たらないのが原則であり、会社に損害を与えてまで救助する行動を起せる船長がいるかがキーとなる。
海賊地域であり、危険水域で救助する行動に出る事が次の大事件へと発展するが、実際はないと思う。勝手に考えるだけだが・・・。
危ない海域と知りながら、たとえ救助する必要があるか無いかがこの物語の最大のキーをにぎると私的には考えるが、それは日本人の性善説から来ているが、これはグローバルでは通用しないと考える。
書籍名:『無限連鎖』
著 者:楡 周平(にれ しゅうへい)
発行所:株式会社文藝春秋
発 行:2002年11月30日初刊発行
定 価:1,800円+税
頁 数:縦一段組み597ページ
<ハードカバーの帯の作品紹介>
東京炎上!
テロリストの要求を呑まなければ首都が壊滅する。
N.Y. 東京・・・・・・世界を震撼させるテロの連鎖。
日米首脳の苦渋の決断が下った。
「マクレビー大統領------」
田沼は声が震えるのを抑えきれずに言った。
『決断していただけましたか』
「本当にこのオペレーションを実行するのは、百パーセント、成功する条件が整った場合に限ると約束できますか」
『約束します』マクレビーは断言した。
『秘密は絶対に守られます・・・・・』
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2001年9月11日の米国の同時多発テロ以来のテロが米国でハミド・キャリアによって、起こる。それは、遥かに広範囲な準備にも十分な時間を掛けて、アメリカ国内に潜入した人間を使って、アメリカ国内の主要拠点の物流網を破壊するテロであった。
マンハッタンを初めとして、交通網(橋や鉄道)を破壊され、大変なテロの影響を米国は受ける。
一方で、新たな恐怖(アメリカに同調する国へのテロ)が計画されていた。配船寸前のタンカー「あらびあ丸」に石油満タンで最終目的地が日本のタンカーが、ミンダナオ沖でミンダナオ解放戦線というテロ集団に乗っ取られる。
タンカーは20万トンの原油を積載しており、船員20名を人質に取ったテロリストは日本政府に「米国のアフガニスタンの攻撃と駐留をやめ撤退させる事、米国はアルカイダの拘留中メンバーを即座に釈放する事、日本政府は1億ドルを現金で用意する事」を要求する。要求を飲まなければ、人質を2時間ごとに殺す事を宣言し、2名の韓国人船員を公開射殺する。
原油の放出を止めなければ、日本の経済基盤である東京湾が壊滅的な被害を被る頃から、米国大統領と日本の首相で、中性子爆弾を使って、テロリストを消し去る事が極秘裏に進む。勿論人質の船員も死亡する事を了解した上で・・・。
「あらびあ丸」の船長の大賀は、部下2人を殺され、日本を守る為に、日本人船員と韓国人機関氏と共に立ち上がり、テロリストを殲滅し、原油の流出を止める事に成功する。重傷を負いながら、携帯電話で連絡するが、中性子爆弾は投下され「あらびあ丸」の船員は全員死亡してしまう。
アメリカでテロを成功させたハミド・キャリアは、アメリカを無事出国し、ロンドンに滞在したのにちに、日本のテロを確認し、再びロンドンをはなれる事に成功する。
「あらびあ丸」の船員達は、日本を救った英雄として、首相出席のもと葬儀が行なわれる。最後にかけた大賀の電話は娘に届いたが・・・。
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