百田尚樹「風の中のマリア」に続き、氏の作品「影法師」を読んだ。私は時代劇物は、TVは見るが小説はほとんど読んだ事がない。なぜが合わないからだ。もっともそういう作品を手にした事が今までなかったからだろう。この作品も、一瞬躊躇したが、読み始めると15ページぐらいで面白くなった。後は二日で読んだ。なんといってよいのかわからないが面白い。
この作品は、百田尚樹「ボックス!」と同じく親友二人の物語でもあり、一方で東野圭吾氏の『容疑者xの献身』の相手に徹底的につくす(献身する)と言う側面を持っている。友人の為に影のように生き、友人を生かすつまりこの作品のタイトルその物だ。竹馬の友の不思議な行動。これが最後の方にどんどん明らかにされていく。そして、全てを知った時、最後は感動だ。
この物語はまた主人公の戸田勘一と不思議と一体になれる感覚だ。途中から自分が主人公となり、竹馬の友の磯貝彦四朗に助けられながら、立身出世する。その道なりを、戸田勘一と言う人物を通して進んで行く。この考え方と言うか進行がなかなか面白い。それは、また感動する要素が詰まっていたのだろうが・・・。
そう悲劇的な生い立ち或いは貧しい暮らし。しかしそれは一番下ではない。底ではない。そう可能性が残されている身分でなければならない。そして最初からエリートや天才ではない。そして友達或いは目標となるヒーローとの出会い。彼らは天才でなければならない。それから必死の努力で頭角を現す。周りの見方が変わる。しかしそれでも必死に努力を続ける。そしてある時に強力なライバル今回は強大な敵の出現。そして自分の味方となる恩師の出現と未来への可能性。敵との戦いに向けて、旅立ち・・・そして未来は。
茅島藩の下士の嫡男として生まれた戸田勘一。上士の無礼討ちにより父親を失うが、その時に刎頸の契りを交わす中士の次男磯貝彦四朗と出会う。父上と同様に下士では入れない藩校に通う事で、中士の磯貝彦四朗、葛原虎之丞、中村信左、飯田源次郎達と親友となる。そして彦四朗の勧めで堀越道場にて剣術を学ぶようになり、頭角を現してくる。
そこへ百姓一揆がおこり、多くの百姓を先導した万作とその家族は磔で亡くなる。その処刑を見た勘一は、藩と百姓やその子供達の為に、私塾の明石が考えていた日本海に面する大坊潟の干拓により田の開拓を悲願とするようになる。
堀越道場で上位となった彦四朗と勘一は、藩主の前で行われる藩下4つの剣術道場代表者による上覧試合に出た。結果、彦四朗が勝利する。その後、出仕した勘一は、群奉行で彦四朗は町奉行で働く事になる。群奉行で働きながら、田の開発を進めなければ藩の財政が破綻するところまで来ていると思い詰めた勘一は、ついに自分が死ぬ事を覚悟して大坊潟開拓の直訴を決断する。しかしそれを思い止まらせたのは彦四朗。
そして、突然の上意討ちの命が二人に下った。そして功をなしたのは、勘一。そしてその上意討ち以降、二人の人生が変わっていく・・・。それ以降の彦四朗の不思議な行動。それは・・・。
武士として一番下の下士から茅島藩国家老にまで出世した勘一。それは、国にとって必要な男として認めた天才的な彦四朗が、勘一の大坊潟開拓の夢を実現させる為に、仕組んだ・・・事だった。
それらの真相を知るのは、自分を殺しに来た居合の達人によって・・・。
この作品も、大変おもしろい。この作品を読むと江戸時代の武士の仕組みや時代背景がわかる気がする。
書籍名:影法師 初 出:小説現代2009年8月号~2010年4月号に連載。 |
<ハードカバー帯の紹介>
生涯の契りを誓った二人の少年。
一人は異例の出世を果たし、
一人は貧困の中で朽ち果てた。
「永遠の0」「ボックス!」「風の中のマリア」「モンスター」、
一作ごとに読者を驚かせてきた百田尚樹の最新作。
今度は、ついに時代小説!
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光があるから影ができるのか。影があるから光がうまれるのか。
ここに、時代小説でなければ、書けない男たちがいる。
父の遺骸を前にして泣く自分に「武士の子なら泣くなっ」ど鳴った幼い少年の姿。
作法も知らないまま、ただ刀を合わせて刎頚の契りを交わした十四の秋。
それからーーー
竹馬の友・磯貝彦四朗の不遇の死を知った国家老・名倉彰蔵は、
その真相を追う。
おまえに何が起きた。おまえは何をした。
おれに何ができたのか。
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