社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

西澤保彦『スナッチ』

2009-05-31 13:54:19 | 趣味(読書)

私に取って全く初めての作者の作品紹介となる。本ブログを見ている方はある規則に気づかれているかもしれない。楡周平(にれしゅうへい)、野沢尚(のざわひさし)の作品紹介をここの所多くしているが、つまり図書館の書籍棚が、作者名のあいうえお順に整理されている事から、今回も同じナ行はじまる作者となった。つまり楡周平氏と野沢尚氏のすぐ隣においてある、タイトルからハードカーバーの帯の紹介で、本を適当に選んでいる事にしている。

さてこの西澤保彦(にしざわ やすひこ)氏の紹介を簡単にしておくと、1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒。1995年、『解体諸因』でデビュー。その後『ストレート・チェイサー』、『夏の夜会』「方舟は冬の国へ』『7回死んだ男』『依存』等多くの作品を発表されている。

何故か氏の最新作から読む事となった。従って、また先に紹介している楡周平(にれしゅうへい)、野沢尚(のざわひさし)の作品同様に、最初に遡って読んで行く事になりそうである。

今回の『スナッチ』という作品だが、大変斬新なSF小説であり、そのストリーと言うか設定が非常に面白い。全くありえない設定、だから斬新であり割とサラーとあっという間に読む事ができた。SF小説と表現したが、推理物(殺人事件)の要素も入っているが、これはある意味おまけ的な要素でもあるが、この要素が加わる事で作品を面白くしている。最も犯人は、直ぐ推定できたが・・・。

22歳の大学生が、結婚の挨拶をする為に訪れた高知県で、突然の雨に打たれる。この雨に襲われた人間は、全員異種生命体に身体を乗っ取られてしまった。それから、31年後の53歳に突如、二十二年前に、高知で会っていた人の死亡記事がトリガーとなり、乗っ取られた異種生命体(自分のコピー)の中で、覚醒する。しかし、記憶は22年前のままで、31年間の記憶はなかった。また同時に、この異種生命体の中で覚醒すると、間違いなく癌を併発し、半年以内に亡くなってしまう事が分かっていた。

余りの現実に驚くと同時に、慣れようとする周辺で、次々に殺人事件が起きる。しかもコピー人間が結婚して離婚していた、婚約者が殺され、自分にも危険がせまっている事を、知る。 

スナッチ.jpg書籍名:『スナッチ』
著 者:西澤 保彦(にしざわ やすひこ)
発行所:株式会社光文社
発 行:2008(平成20)年10月25日初刊発行
定 価:1,700円+税
頁 数:縦一段組み345ページ+あとがき5ページ

<ハードカバーの帯の作品紹介>

 22歳だった。 次の日、 ぼくは 53歳に なっていた

まったくあたらしい奇想エンタティンメントの誕生。

加速する創造力。西澤保彦、才能爆発!

空白31年。

ぼくは。きみは。ぼくたちは。

少しは幸せだったのだろうか。

彼を襲ったのは、不条理でやりきれない、人生の黄金期の収奪

あらかじめ失われた、いとしい妻との日々。

おぼえのない過去を振り返る彼に、さらなる危険が迫る!

-------------------------------------------------------------------

22歳の大学生奈路充生(なろ みつお)は、恋人の生駒美和子の実家の両親に会いに行く為に、高知にやって来た。その途中で、城之内華苗という女性と一晩の時を過ごしてしまう。その後、美和子の親類の不幸で、待ち合わせ場所に来れない事を伝えにやってきた隣人の楡咲純花から、事情を聴く事になる。その楡咲純花は、本来なら来るつもりは無かったのだが、毎週土曜に通っている鍼灸院で急患(受験生らしい)が発生し、土曜の予定が、日曜(つまり当日)になった為、そのついでを兼ねて、奈路に会いに来たらしい。その説明を聞いている時に、突然町中が真っ暗になり、耳をつんざく爆音と共に降ってきた雨に襲われ、意識が遠のいていった。

 楡咲純花の文字で目覚めるが、既に時は過ぎ去り、31年が経過していた。目覚めたはよいが、自分の体は一切コントロールできない、紛れもなく自分のコピーに身体を乗っ取られた形の中で、自我が目覚めたらしい。事情を僕(異種生命体で31年もオリジナルをコピーして生きて来た僕)は、オリジナルの自我である奈路充生に、理解して貰う為に、公的機関に向う事にする。同様な事件で認知され、異種生命体で合っても人間に被害を加えない事が分かっており、日本の少子化問題が進む中で、お互いが共存する形で、生きる世界が出来上がっていた。

31年前の雨で身体と言うか脳を乗っ取られた人間を「ベツバオリ」と言い、その中でオリジナルの意識が覚醒する、一つの脳の中に二つの意識が存在する事になる事を「サシモドシ」と言う事等、その被害が集中的に発生した高知だけでなく、既に民間人でもこれらの言葉は一般化していた。最も「サシモドシ」の現象は、阪神・淡路大地震をピークに発生し、最近の10年間は、その事例はなかったらしい。

サシモドシが起きた時点で、一つの心の中に二つの意識が存在する事で、オリジナルの意識のストレスが、精神的に弱いベツバオリの身体に異変を起こし、必ず癌を併発し、半年以内に亡くなってしまう事が、分かっていた。

31年後の余りにも変化した日本で、何故自分は帰って来たのだろうと悩み、身体でさえ動かすことは出来ないが、異種生命体の間違いなく僕でもある「ベツバオリ」とお互い精神的に妥協しながら、生きる道を探る決心をする。

「ベツバオリ」である僕が、妻であった生駒美和子と分かれた原因の一つは、食生活だったらしい。つまり「ベツバオリ」である奈路(僕)は体調が弱く、一日の食事は朝の野菜だけを食べる事で、生きて来たと言う事がわかり、覚醒した僕にもそれを強制させられる事になる。とてもそんな事は容認できない覚醒したオリジナルの奈路は、昼や夜の食事の話を持ち出すが・・・。

この様な状況の中で、「楡咲純花」の死亡告知、葬式後、次々に殺人が発生し、遂に奈路の元妻(オリジナルの奈路には結婚生活の記憶さえないが)の生駒美和子が殺される事件が発生する。

「ベツバオリ」であり奈路の「コピー」でもある異種生命体の僕は、それが、自分の危機であると直感で予感する。つまり、楡咲純花が無くなった時から、その長男の様子がおかしい・・・。

いくら異種生命体が、31年前の雨の日に、元のオリジナルをまねても、その違いは親しい人ほど分かる物で、楡咲純花の長男は、最後まで母親を愛していたが為に、最後に「ベツバオリ」ではなく、オリジナルの本当の母親が覚醒する事を望んでいた。

こうした中で、自分の母親をこういう事態にめぐり合わせた、人物を調べる計画を立てた。その背景には、偶然15、6年前に鍼灸院の急患であった元学生がコンビニでバイトしており、知り合い、10年掛けて、針灸院とその急患となった原因を突き止めていた。この時点ではまだ殺人を犯すつもりは無かったが、自分の母親である楡咲純花が亡くなり、しかも弔問に訪れた奈路充生がサシモドシた事を知り、これは天罰であり、残りの関与する人間も天罰を受けるべきと、殺人計画を実行する。

  1. 奈路充生 自分の母親が出向く事になった直接の原因となる男だったが、サシモドシがおきた事を知った時点で、確実に死ぬ為、自分で殺す必要が無くなった。従って、殺人の対象から外れる事となった。  
  2. 生駒美和子 奈路充生同様に、ターゲットとなり、殺されてしまう。
     
  3. 鍼灸院の先生 楡咲純花は、本来なら31年前奈路に会いに来るつもりは無かったのだが、毎週土曜に通っている鍼灸院での、急患(受験生らしい)が発生し、土曜の予定を日曜に変更した事で、ついでに、奈路に会いにきた。従ってその原因を作ったターゲットとなり、殺されてしまう。
  4. 鍼灸院の急患の学生  
  5. その学生が急患となった地元やくざ(喧嘩の相手)

と言う事で、事件は「ベツバオリ」の僕とオリジナルの僕と捜査していた刑事との協力で解決するが、 楡咲純花の長男は、妻と息子の仲に嫉妬し、殺人を犯しすことで、本当は家族を壊したかったのかも知れない。

一方で、サシモドシが起きた僕は癌の転移する時の高熱に3日3晩耐え、癌を克服する事に成功する。サシモドシとは、本来は乗っ取られた宿主の拒絶反応であり、癌を克服した時、ベツバオリの僕は消え、ベツバオリの僕の31年間の記憶が融合した僕になっていた。

最後に、城之内華苗の娘である日記が現れ・・・。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿