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君の名は。感想。新海監督らしさのある大ヒット良作だが、次は監督にしか作れない、落ち込むほどセツなくロマンチックな中小ヒット良作を

【ネタバレ】

◎「君の名は。」

新海監督らしさのある大ヒット良作ですが、次は新海監督にしか作れない、落ち込むほどセツなくロマンチックな中小ヒット良作を作ってほしいです。

2016年8月26日公開、107分。
東宝などが宣伝にかなり力を入れていて、いろいろとにぎやかでした。
公開3週目に入っていますし、3回見たので、ネタバレ感想を載せておきます。

総合評価4点(5点満点)

キャッチコピーの「まだ会ったことのない君を、探している」はいいですね。
東宝の紹介文では「この夏、日本中が恋をする アニメーション映画の新時代、到来。」「新たな“不朽の名作”が誕生する!」というのもありました。

今作のようなものを多くの客や東宝が期待しているのでしょうが、新海監督に私が期待するところと少し違ったので、3.5点にするか迷いましたが、そこは考慮すべきではないと考え直しました。

上映前にPVなどを見る限りでは、ありふれた入れ替わりの先の物語が今一つ見えなかったので、面白くなさそうだと思って期待していなかったのですが、そんなことはなかったです。

そう思ったこと自体、これまでの新海監督作品にとらわれていたということです。

それでも世評に反して4点しか付けなかったのは(とは言え、私としては、4点以上付ける作品は少ないのですけれれど。)、2人はいつの間に恋したのかというところが少し唐突に感じたからです。


因みに、私は、新海監督の評判は以前から聞いていて、映画のPVとかは見ていましたが、最初に見たのは2013年の「言の葉」の公開直前のTV放送だったと思います。「秒速」でしたね。それから「言の葉」を新宿バルト9で見て、そのまま新宿御苑を見て回り、BDを一通りそろえたクチです。

なお、新海監督作品が世間で話題になると、当時書いた「言の葉」の映画や小説の感想へのアクセスが増えるのはありがたいです。




アニメジャパン2016にて。



新潟市の映画館にて、新海監督のサイン。




○ 随分と客が多く、新海監督の最高傑作との声も大きい様子で、評価も高い様子です。

ただ、1回目に見たときは、ここで笑ってほしいのだろうというところでクスクスしている人が結構いましたが、2回目以降に見たときは、ほとんど笑い声は聞こえませんでした。私は3回とも両者の中間くらいでしたが、若干、笑いがスベッている感じがしました。

また、3回とも泣いている人や涙ぐんでいる人や泣き声は見聞きしませんでした。

○ で、確かにいい出来の映画でしたが、一般向け(多くの客と興行収入、大ヒットを期待されるもの。)として作ったからか、新海監督映画としては面白みが少し欠けるな、というのが正直な感想です。
(これまでの作品のいいとこどりのような、あのシーンこのシーンというのは多々あって、そういう意味では新海監督の集大成作品と言ってもいいとは思います。)

また、その面白みというのも好みの問題ですので、その面白みがメインの映画であるとここまでの大ヒットはしなかったでしょうから、何を求めるのかという問題ということになります。
小ヒットか中ヒットくらいの映画であれば、新海監督にしか作れない映画という要素が強くなると思うので、大ヒット映画を作ってほしくはないな、と思った次第。
いい映画を見たいだけであって、それが大ヒットするかは二の次です(勿論、ある程度ヒットしないと次を作るお金が確保しにくくなるので、ヒットしなくていいという意味ではないです。)。

「秒速5センチメートル」(冬になると見たくなる映画ですが、冬に見ると心の底から寒くなる。)と「言の葉の庭」(梅雨時になると、ビール片手に見たくなる映画。)が新海監督の最高傑作だという考えは変わりませんが、それは好みの問題でもありますから、新海監督が「君の名は。」のような大ヒット作だけを作っていきたいというのであれば、私としては残念ですが、その範囲で良作や傑作などを期待するのみです。そうであっても、新海監督作品なら見ますし。

都心に住む立花瀧(たちばな たき)(cv神木隆之介)、東京に憧れ、神社の娘で巫女の宮水三葉(みやみず みつは)(cv上白石萌音)、瀧のバイト先の先輩の奥寺ミキ(cv長澤まさみ)、三葉の祖母の宮水一葉(みやみず ひとは)(cv市原悦子)、三葉の妹の宮水四葉(みやみず よつは)(cv谷花音)、三葉の友達の勅使河原克彦(てしがわら かつひこ)(cv成田凌)と名取早耶香(なとり さやか)(cv悠木碧)、瀧の友達の藤井司(cv島崎信長)と高木真太(cv石川界人)、三葉の父で岐阜県糸守町(架空の町)の町長の宮水トシキ(cvてらそままさき)、ユキちゃん先生(cv花澤香菜)など。
 
声優が本業ではない俳優の演技は、神木さんは気になりませんでしたが、一部の言い回しに少しだけ違和感がある人はいましたが、気にするほどのことではないでしょう。むしろ、個性的な声の悠木さんが個性をかなり抑えていたのは、声の個性が弱い主役を立てたという面があるのか、でも、この映画には悠木さんは個性を抑えた方が合うな、と思ったり。

○ 冒頭から新宿駅周辺、電車だらけということで、「言の葉の庭」っぽくて嬉しかったり、「秒速5センチメートル」っぽいすれ違いもあったりで嬉しかったり。

まさか、「言の葉」の古典教師の雪野百香里(cv花澤香菜)が古典のユキちゃん先生として出てくるとは!
(安易に、パラレルワールドと思っておきます(笑)。)

でも、それほどセツない映画でもなければ、それほどロマンチックな映画でもないんですよねえ。そこが、新海監督を前提とした場合の、好みの問題です。

○ 三葉と瀧が最初から眠っている間に入れ替わり、何回か繰り返されましたが、そこが少し長くて少し退屈でした。もう少し短くするか、入れ替わりの理由とかを説明すれば良かったのでは。

入れ替わりに2人が気づいてからの、歌を伴った怒涛の数分の流れは凄かったですね。

○ 朝起きて、三葉(中身が瀧)が自分の胸を揉み、四葉に怪訝な目で見られるシーンが何度かあり、1回目に見たときは、そのたびに館内では笑いが漏れていましたが、何度も描くということはそういう笑い目当てなのでしょう(2回目以降に見たときは笑いはなく、多少、クスクスしていた人がいたかも知れないという程度。)。

○ 入れ替わった2人ともが、そういうことはしないと約束したのに、元の人の人間関係を変えるような言動をしていて、そうしないと物語が動かないのでしょうけれど、なぜ2人がそうしたのかが少し分かりにくく。
所詮は他人であって、せいぜい友達の1人であって、他人だから相手の人生がどうなろうと知ったことではない、という無意識なのでしょうか。でもそういう言動をした理由はさほど気にすることではありません。

それが恋になる理由が少し分かりにくかったので、2人の急な号泣と溢れる思いに少し違和感があったり。
そもそも冒頭で三葉が瀧に髪留めとして使っていた組紐を渡すシーンが短く入っていますが、それが縁であることが明かされるのはもう少し後ですし、2人が恋心で涙するシーンのときにはそんな冒頭の短いシーンは忘れていますし。

それが明かされてからは、2人の恋心というのは分かりますが、そこまではそのまま進んだので今一つ感慨に欠けて見えたり。

入れ替わった相手がどういう人か、中身が自分になっているので、友達など周囲の人から聞くしかないわけで、しかも、互いに、そんなことをするなということばかりをしているのですから、互いに良い印象を持つ要素が少ないと思いました。また、メールや電話でのやり取りもなく、その日にあった出来事をスマホにメモし、コメントを少し加える程度ですから、相手のことが分かるものではないでしょう。


この映画の雰囲気からして、10代から20代を主たるターゲットにしているのだと思いますが、最近の若者の恋愛事情はそういうものなんですかね?、と初見時は思った次第。

泣けるという声も含めて世評は高い様子なので、瀧が三葉の組紐を持っている理由の説明がある前の時点で、恋をするのに理由はいらないということに納得した人ばかりだったのか、2人が互いに恋する理由に納得した人ばかりなのでしょう。

理由が分かってから見た2回目以降は、涙こそ出なかったものの、感動ポイントでは、いいな、と思ったり。


○ 彗星が予想外に割れて落ちてきて、三葉の町は3年前にほぼ壊滅し三葉も死んだのですが、過去を変えるために頑張って、何とか変わり、全員避難訓練をしていたということで助かりました。

中身が瀧の三葉の言うことに取り合わなかった父であるトシキ町長が、どうして今度は説得されたのかは描かれませんでしたが、中身が瀧の三葉が説得した時に三葉ではないなと父に言われ、中身も三葉になったときに再度説得に行っているので、迫力と説得力が違ったのでしょうかね、この時は彗星も割れていましたし。
祖母の一葉が町長室にいたので一緒に説得してくれたのでしょうか?(それより、中身が瀧の三葉に、夢を見ているなと言ったり、三葉ではないなと言ったり、自分にもそういうことがあったと言った一葉なのですから、彗星が割れて落ちてくると言った三葉の言葉に少しは耳を傾けろよ、と。)。

○ 自転車に立ち乗りする三葉を後ろからローアングルで描き、白の綿パンらしきものが数回チラリと見えましたが、これは余計。

もし描くなら、あんな適当な綿パンではなく、(レースやフリルを付けるといった意味ではなく)少しくらいは綺麗に描いてほしかったと思うのは、ロマンチックに過ぎる言い分ではないと思います。田舎娘だからそういう綿パンにしたということでしたら、それはバカにし過ぎ(浴衣で目覚めたばかりの奥寺の、少しだけ見える黒ブラはきちんと描かれていたのに。)。

○ 入れ替わったときの記憶はほぼ無くなっている2人ですが、電車が並走するところで(あれは、他人と目が合うと気恥ずかしいです。)、互いを見つけるとか。
階段ですれ違ったところなんて「秒速」を彷彿とさせましたが、この映画で2度目のすれ違いである今度はハッピーエンドで、良かったと思いました。

この映画の流れとしては、ハッピーエンドが妥当です。

ただ、電車が並走した時に互いに気付かず、2人が出会わないままで終わっていたとしたら、その方が新海監督らしいな、と思ったであろう私は、やはり、これまでの新海監督作品にとらわれていたということです。


○ それでも、次作は、せいぜい中ヒットでいいので、短編でもいいので、セツなくてロマンチックで、落ち込むような映画を作ってほしいです。

さらにその次、大ヒット作をよろしくお願いします。









【shin】
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