いきなり長いですが、他のはこんなにならないはずです。
● 偽物語
青春ファンタジーの最高傑作と称される「化物語」(ばけものがたり。西尾維新・原作小説。アニメは2009年)の後日談。
最高傑作か。
自分の悩み、弱さ、虚勢、無知、無鉄砲、それは青春らしさでもありますが、それらを契機に怪異にとりつかれた5人の女子小中高生が、それらを振り払うというか乗り越えるというか共存するというかを手伝う、少し吸血鬼である高校生の阿良々木(神谷浩史)を中心とした話。
「手伝う」という表現が適切かは分かりませんが、要は、いくらかは他人の力を借りるにしても、本人が自分の力で何とかしないといけないということ。他人の力ばかりに頼って怪異から逃れたとしても、それは一時しのぎでしかないということです。
「怪異」とは、別に妖怪そのものという意味だけではなく、友人、家族、恋愛、受験、就職等々の苦労や悩みの比喩と思って見ても良いのでしょう。
うん、確かに、新房昭之監督の作品は、ほとんどがいい。さよなら絶望先生、ひだまりスケッチ、まりあ ほりっく、荒川アンダーザブリッジ、魔法少女まどか☆マギカなどなど。
ただ、途中で止めながら見ないと読み取れない字や説明が書いてあることが多いので、話が途切れ途切れになることもあって、ちょっと疲れる。
また、原作がいいからなんじゃないかと思うこともなくはないが、いろいろと画面で遊んでいたり、面白い見せ方をしたりが、とにかく上手い!化物語や偽物語は、特にそう(本当は、ひだまりスケッチも入れたいんですけど)。
「青春ファンタジー」アニメは多くは思い付かないものの、化物語は、青春アニメとしても、アニメとしても、傑作とは思う。
なお、ひたぎファンは、You Tubeの「ひたぎのツンドラカルタ」もどうぞ。名言・迷言がいっぱい(勿論、私が作ったものではない)。
さて、本題の偽物語(にせものがたり)。
化物語ほどではないものの、良いアニメでした。今冬では、これと、Anotherが特に良かったです 。
ヒロインは、人助けが趣味で、自らを「正義」そのものと称する、阿良々木の2人の中学生の妹、火憐(喜多村英梨)と月火(井口裕香)。
キャッチコピーは『青春は、「ほんもの」になるための戦いだ。』
内容を良く表した、いいコピー。この先は読まなくても良いくらいに(でも、読んでほしいですけれど)。
ちなみに、CMで阿良々木は、「声を大にして言うことができる。僕の自慢の妹達、お前達はどうしようもなく、偽者なのだと。」と言っている。
怪異という強敵を知っていて、まがりなりにも勝ってきた阿良々木からすると、危なっかしい2人の正義は中学生の遊びにしか見えないのでしょう。
実際、偽物語では2人は負けるのですけれど。
ちなみに、化物語の原作小説のCMでは、「怪異とは、世界そのものなのだから。」と言っている。
最初の3分の2は火憐が怪異にとりつかれる話を中心に、阿良々木の彼女、ひたぎ(斉藤千和)の過去話もあり。
ひたぎが恨んでいる詐欺師(つまり、ニセモノ)の貝木(三木眞一郎)が良かった。
貝木は大人なので、自分がニセモノであることを理解し覚悟していて、「この世に真実などない」と言う。
分を超えない、渋く、ちょっと嫌味なニセモノっぷりが良かった。
貝木は、ニセモノを極めた、ホンモノのニセモノということですかね。
話し合いで、詐欺をやめて貝木が街から出ていくことになるのは、簡単にいき過ぎな気はするが、大人だからということか、最後に仕返し「みたいなこと」をしてきたから、そのためか。
ただ、ここまでは、ちょっと冗長に感じた。
化物語のフォローみたいな話が、偽物語としては余計に感じたからでしょう。化物語と続けて見れば気にならないのでしょうけれど。
それでも全体で11話なので、近年のアニメからすると1~2話少ないんですけど。
なお、化物語での眼鏡・ロングヘアから、コンタクト・ショートヘアになった羽川翼(堀江由依)は、良い、とだけは言っておきたい。
終盤は、実は月火が本当の妹ではなく母の胎内にいたときにすり返られた偽者の妹で、胎内にいたときから怪異そのものだったという、意外な展開。
月火を退治しに来た「正義の味方」である陰陽師の余弦(白石涼子)らは、本当に強い、本物の、怪異退治を業とする者。怪異がいると、学生時代からの友人の貝木に聞いてきたと。
余弦らと阿良々木らは対決するものの、最後は兄妹愛あふれる彼の決意や思いに興ざめして退治しないことにして帰ると。
ここも簡単にいき過ぎではないかと。
貝木は、阿良々木ならこの試練を乗り越えられると考えて余弦に教えたのか、余弦は月火を殺さないと踏んだのか、それとも、月火か阿良々木が死ねば良いと思っていたのに失敗したということなのか。
アニメの雰囲気的にも、貝木の雰囲気的にも、最後のはないと思ったけれど。
再度見る余裕はないので、学生時代の友人同士の、余弦と貝木と忍野(化物語での、阿良々木の、怪異退治の師匠みたいなもの)の考えを以下に。
ホンモノと、ホンモノと区別が付かないニセモノのどちらの方が価値があるか?。
ホンモノである余弦は、当然ホンモノの方が価値があると。
忍野は、同じ価値だと。
ニセモノである詐欺師の貝木は、ニセモノの方が圧倒的に価値がある、そこにホンモノになろうという意志があるだけ、ニセモノの方がホンモノよりもホンモノだと。
ホンモノは確かにすごいですよね。ホンモノは、努力をした結果であっても、生まれつきであっても、ホンモノはホンモノです。
例えば、純金は、純金です。ゴッホの絵はゴッホの絵です。
一方、ニセモノは何もしなければただのニセモノでしかありません。
ニセモノがホンモノと区別が付かなくなるには、ホンモノ以上の努力が必要でしょう。
例えば、鉄であっても、錬金術で純金に化ければ、それはホンモノの純金となんら変わらない値段で取引される価値があるモノであると。
無名の画家が描いてもゴッホの絵と見分けが付かなければ、それはゴッホの絵として認知されゴッホの絵にふさわしい高値が付くと。
逆に、ゴッホの絵なのに、ゴッホの絵ではないと認知されれば、安値しか付かないと(ゴッホの絵だったかは忘れたが、5年前か10年前かも忘れたが、オークションの直前に有名な画家の絵と分かって、予定の何倍もの値が付いたことがありましたよね。すばらしい絵というのは、絵がすばらしいのではなくて、偉い人がすばらしいと言うから、有名画家の作品だから、そもそも値段が高いから、じゃないかと思わせた事件でした)。
で、だから忍野は価値は同じと言ったのであり、だから貝木は、大したものでないものが大したものと並んだ経過、並べた人の努力も踏まえてニセモノの方が価値があると言ったのでしょう。
ホンモノ(大金持ち、強さ、名声、運動能力、頭の良さなど)として生まれることなんてそうそうないし、ホンモノなんてそうそうなれないから、ニセモノとしての分をわきまえて努力せよ、と、青春なんだから悪あがきせよ、と、貝木は言いたいのか。
真実が何だか、どこにあるのかが分かりにくくなった現代において、真実や答えが直ぐそこにあると安易に考え、安易に真実や答えを求めようとし、安易に真実や答えを分かったと思いがちな現代人への警鐘と評すると、大袈裟でしょうけどね。
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shin
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