【ネタバレ】
◎「夏の砂の上」
2022年11月3日(木・祝)から11月20日(日)まで、東京都の世田谷パブリックシアターにて、作・松田正隆、演出・栗山民也。S席は8,500円(A席は6,500円)+手数料。その後、兵庫県、宮崎県、愛知県、長野県でも公演予定。
11月12日(土)の昼の回に行きました。山田杏奈さんがメインで、演劇は初というので。なお、TVドラマは一般的に、映画や演劇に比べて無難な脚本になるので、あまり見ようとは思いませんし、長いこと、ほとんど見ていません。山田さん出演のTVドラマも見ていませんが、映画は出演作があれば今後も見る予定です。
2時間程度だと事前に告知がありましたが、2時間弱でした。
田中圭(小浦治の役。勤務先が倒産して失業、やる気がなくなって職探しをあまりしていなかったが、途中から職を見つける。)、
西田尚美(小浦恵子。治の妻だが別居中、治のことを気にかけてはいるようで治の家にタマに来ているので夫婦仲が悪いとまでは思えない描写だが、最後は離婚。)、
山田杏奈(川上優子。治の妹の阿佐子の子で治の家に預けられる。16歳だが高校には通っていない。治に好感は持ったが、恋愛感情と言えるようには思えない。大人の前ではおとなしく真面目にしているが、陰では、タバコは吸うし、言葉使いは良くはないし(年相応?)、男遊びもする様子。)のほか、
松岡依都美(川上阿佐子。治の妹で優子の母。スナックなどの経営をすることが多い様子だが上手くいかず、男にも騙されやすい様子で、借金生活で優子を連れて各地を転々としている様子。)、粕谷吉洋(持田。治の元同僚。)、尾上寛之(陣野。治の元同僚。)、三村和敬(立山。優子のバイト先(コンビニ)の先輩で、付き合うことになる。)、深谷美歩(茂子。陣野の妻。)。
○長崎県が舞台の演劇で、家族や友人などの狭い関係者8人の日常が群像劇のように描かれ、互いに少しのつながりがあり、少しの影響を与えているようないないような。まさに日常である、とは言えるでしょう。夏が舞台ということもあってか、原爆のことは少しだけさりげなく触れられています(1945年8月6日に広島市に、8月9日に長崎市に、アメリカ軍の爆撃機が原子爆弾を投下。)。
演劇の場合は後方の席でも見えるよう、演技(声の出し方や動きや表情など。)は映画(やTVドラマ)に比べて大袈裟になります。それでも、後方の席ではよく見えませんし、本作の場合はそれ程大袈裟な演技ではないので表情があまり分かりません(オープン形式の座席配置だったので540人程度+補助席と推測され、扇のような座席配置で3階まであるので舞台が比較的近いとは言え。)。本作は映画向きなのでは?。
また、映画であれば場面が変わるときに音楽を入れたり、何かの映像を入れたりして唐突さを弱めることが出来ますが、本作の場合は唐突さが残ります。それぞれの群像劇が互いに強い影響を与えているなら唐突感は減るかも知れませんが、少しのつながりや影響を与えている程度なので尚更です。
一方、場面が変わるときの唐突感は(物語が継ぎ接ぎに感じる、といった感じ。)、他の演劇でも感じることがあるので、演劇では仕方ないのかも知れません。演劇を見ることは少ないので、なんとも言えないところはあります。
○全体としてゆったりとした雰囲気で、コメディというわけでもないですし(クスッとなるところはいくつかあります。)、大袈裟なエピソードもないですし、群像劇同士のつながりも弱いですし、声の大きさは演劇としては控えめなためよく聞いていても聞きとりにくいことが少しあったり、ほとんどが長崎弁のため頭の中で方言を標準語に直す作業が必要になることから演劇そのものに集中しにくいです(パンフによると長崎弁に九州各地の方言がまざっている様子。難しい方言や聞き取りにくい方言はありませんが、それでも標準語に直す作業は必要になります。)。やや退屈。
やはり、100人200人の劇場ならまだしも、本作のような微妙な変化を伝えるのは難しいので顔をアップに出来る映画とかの方が良いのではと思いつつ、基本的に静かに進行することもあって映画にしてもヒットするようなものではないと思います。
公式HPの「日々の生活に重く漂う閉塞のもとに生きる人々のやるせなさと慈しみを描き出した」という言い方は少し大袈裟ですが、そういう感じの作品です。尤も、「慈しみ」というのはあまり感じませんでした(上述のように演劇そのものに集中しにくいことから、感じることに気が行きにくいからかも知れません。)。
○なお、2人のみで同居することからして、映画で下着姿になっていますし必要とあればヌードになる気もある山田さんなのでHな方向も想像しましたが(本作で下着になるとまでは想像していません。)、いくつかの衣装のうち1つくらいが薄着でセクシーっぽい感じがあった程度でした。
山田さんは、とても可愛い顔というのとは違い、普通に可愛い童顔といった感じなので、セクシーという表現も少し違うかなとは思いますけれど。いずれにせよ、魅力的な俳優です。
○公式HPから。
「抗いようのない悲哀や乾きが滲む 松田正隆の読売文学賞作品を、栗山民也が現代に投げかける」
「コロナ禍のこの時代に上演する作品として、栗山は、日々の生活に重く漂う閉塞のもとに生きる人々のやるせなさと慈しみを描き出した『夏の砂の上』を選びました。」
「ある地方都市、坂のある街。
坂にへばりつく家々は、港を臨む。
港には錆びついた造船所。
夏の日。
造船所の職を失い、妻・恵子に捨てられた小浦治のもとに、家を出た恵子が現れる。恵子は4歳で亡くなった息子の位牌を引き取りに訪れたのだが、治は薄々、元同僚と恵子の関係に気づいていた。
その時、治の妹・阿佐子が16歳の娘・優子と共に東京からやってくる。阿佐子は借金返済のため福岡でスナックを開くと言い、治に優子を押し付けるように預けて出て行ってしまう。
治と優子の同居生活が始まる。」
【shin】