◎「アルプスの少女ハイジ」(全52話)
1974年の放送ですが、何度もスカパー!で放送し、特にこの1年くらいは毎クールのように放送しているので。
言わずと知れた、基本的に子供向けの、名作アニメです。演出は高畑勲さん、場面設定と画面構成は宮崎駿さん。
両親を亡くして引き取り手がなかったので叔母のデーテ(cv中西妙子)に育てられ、叔母さんももう手放したいとスイスのアルムの山(アルプスの山)のお祖父さん(cv宮内幸平)に押し付け、嫌々だったお祖父さんもハイジ(cv杉山佳寿子)との暮らしが楽しくなり、でも、3年後に叔母さんが再びやってきてドイツのフランクフルトでクララ(cv吉田理保子)の友達にするために嫌がるハイジ(8歳)を騙して連れて行き(お祖父さんは、その方がハイジが幸せかもと迷った。)、なんだかんだでアルムに帰りたいとノイローゼになったハイジ。
クララの父のゼーゼマン(cv鈴木泰明)と主治医がこれはまずいとアルムに返したものの、ハイジに会いたいクララのことも考え、療養になるかもと考え、クララと執事のロッテンマイヤー(cv麻生美代子)をアルムに行かせると。
自然しかないようなアルムと自然が少ないフランクフルト(クララの家からは自然は見えない。)、自然児のハイジと車椅子で周囲に守られているだけの人工的なクララ。
他に、カタツムリが大好きなセントバーナード犬のヨーゼフ、ハイジが特に可愛がっている子ヤギのユキちゃん、ゼーゼマン家の使用人のセバスチャン(cv肝付兼太)など。
彼ら、特にヨーゼフがいい味を出しています。ヨーゼフ、こいつはいいやつですよ。
52話と長いですが、野原を駆け回った子供時代を思い出してほんわかするには最適です。
以前よりは自然に接する機会が減っている昨今の子供が見てどう思うのかは、良く分かりませんが。
とても有名なエピソードを2つ。
○ 26話の水汲み。
ゼーゼマンが久しぶりに帰ってきた際、ロッテンマイヤーがハイジは頭がおかしいと言うので、どうしようかと。まずは冷たい水をくんできてほしいと言ったところ、やけに時間がかかったので心配していると、ハイジがコップに水を持ってやってきて。怒るロッテンマイヤー、どうしたのかと優しく聞くゼーゼマン。
ハイジは、家の水が冷たくなかったのでかなり遠くの水場までコップを持って行ってきたと。
ゼーゼマンは好印象を持って、クララが是非にと言っていることもあるのでしょうけれど、引き続きハイジに居てもらうことに。
ハイジの純粋さがよく表れている話です。
そんな遠いと持ってくるまでに水がぬるくなるだろ、とは言わない、言わない。
○ 48話のクララが立ったところ以降(最終52話まで。)。
牛が近づいてきたので、思わず、驚いて立ったクララを見て、驚きと喜びのおばあ様。
それを聞いて「クララが立った!」と喜ぶハイジ。
そこから自分の意思で立つまでに更に時間を要し、練習、練習。ある程度立ったり歩いたりできることはあっても、怖いクララ。
ペーター(cv小原乃梨子)は立ったかどうかをクララに毎日聞いたり、ハイジも期待していて、クララのプレッシャーになっているところは、純粋さ無邪気さゆえの子供らしい残酷さ(大人より、純粋で無邪気な子供の方が残酷な場合がある旨は以前のアニメの感想でも書きました。)。
50話。「クララのバカ。なによ、意気地なし。1人で立てないのを足のせいにして。足はちゃんと治ってるわ。」云々と泣いて駆け出すと、ハイジを失いたくないから思わず立ってしまうクララ。
51話で、また紆余曲折があったものの、1人で歩けるようになりました。
フランクフルトに居たときは友達はおらず、ハイジが来てからハイジしかいなかったところ、アルムに来てからはペーターも友達。とはいえ、ハイジの方がずっと仲良しですし、というより、クララはハイジに依存しています。
周りが何でもしてくれたし、優しかったけれど、立てたら自分でしなければいけないし、優しくしてもらえないと思ってブレーキをかけてしまうクララの心理というのも上手く描写されています。
○ ハイジが変わらないことによって周りが変わる。
ロッテンマイヤーはクララのためを思って勉強勉強とか、厳しくしているのですが、ひとりよがり。そこは直ったと言えるまでの描写はありませんでしたが、アルムで立てるようになったクララを見て少しは考え直したのでは、と期待。
クララが立つことによって、クララは自立の道をゆっくりと歩み始めたわけです。
人嫌いで変人扱いのお祖父さんもいくらか柔らかくなって村の人々とも関わるようになり、ロッテンマイヤーも少しは変わりそうですし、ペーターはハイジという友達ができて毎日が楽しそうですし、ペーターのお祖母さん(盲目)はハイジと話すのを生きがいのように楽しみにしていますし、クララの主治医もお祖父さんに説得されてクララを甘やかしすぎたと思っていますし、ゼーゼマンとクララのおばあ様は元から良い人なので変わっていないとも言えますが、クララが立てるかもしれないと希望を持ちましたし、クララを甘やかしすぎたと思っていますし。
ハイジの明るさ無邪気さとマイナス思考のクララの対比、自立したハイジと依存心が強過ぎるクララとの対比、アルムの自然と都会のフランクフルトの対比でもあり、自然と同年代の友達がクララを育てた物語でもありましたが、それ以上に、ハイジが変わらないことによって周りが変わるという物語であったわけです。
えっ、ハイジがこのまま大人になったらどうなるのか?、そもそも、このまま大人になれるのかですって?。
そんなヤボなことは、そのときに考えましょうよ。
【shin】
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