人間とは何かについて、4つ続けて載せる2つ目です。
→まおゆう魔王勇者の感想へのリンク
◎「ジョジョの奇妙な冒険」
○ 1986年12月発行の1987年1・2号の週刊少年ジャンプから連載開始で、原作漫画は未読です。
9話までのパート1「ファントムブラッド」は話の進展が早過ぎて、あらすじか総集編を見ている感じ。ベースがあっての総集編ならいいですが、そうでもないのにそんなアニメを見せられてもなあ。
悪役のディオ・ブランドー(cv子安武人)が魅力的なキャラだったので、もう少しじっくり見たかったです。
パート2は、描かれた部分については気にならない程度に段取りを踏んでいて、物語として成立していましたが。
○ 擬音を文字で表示するというのは、タマになら、あるいは、ギャグかコメディとしてならいいのですが、多用すると、比較的シリアスなアニメなんだから変でしょうに。
原作漫画の特徴の一つであるらしい擬音を、(音に出来ているのに文字にしているのもありましたが、)多くが上手く音声化出来ていなかったので、音声化出来なかったけれど表現したかったのでしょうから多少は大目に見ないといけないのかも知れませんが、多用は、もはやコメディですね。
この辺は、ジョジョの大ファンである「ざっく」さんのブログに詳しいです。
→【アニメ】ジョジョの奇妙な冒険 第1話 感想(2012年10月10日)
・その他について
→【アニメ】ジョジョの奇妙な冒険 第2話、第3話 感想(2012年10月21日)
→【アニメ】ジョジョの奇妙な冒険 第4話 感想(2012年10月28日)
○ 「ジョジョ立ち」の各種決めポーズも原作漫画の特徴の一つらしいですが、原作漫画のような感じの絵だとポーズも決まると感じられますが、アニメの絵だと今一つ決まらないというか、コミカル。
過度に格好付けたポーズなので、原作漫画のような格好付けた絵と言うか、ちょっと洒落た絵と言うか、そんなのでないと釣り合わないのでしょう。ディオは比較的サマになっていましたが。
(漫画の絵のままでアニメを作ると、時間がかかって間に合わないからアニメでは書きやすい絵にしたのでしょうけれど。)
(下の左は、2011年5月の朝日新聞に掲載された一面広告の絵とのこと。)
(下はコミックの表紙。)
(下はアニメのポスター。上の絵の方が洒落た絵。)
○ パート2の「戦闘潮流」(10から最終(26)話)でのジョジョ(ジョセフ・ジョースター)(cv杉田智和)のキャラがコミカルだったので、ある意味、擬音とかポーズとかも似合ってきた気がしますが。
パート1よりパート2に話数を多くさいたのは、コミカルな方が世のアニメファンの受けが良いと考えたからとか、敵が多いので「波紋」の戦いを多く描けるからかも知れませんが、どうなのでしょう。
○ スピードワゴン(cv上田耀司)とかナレーター(大川透)とか、ワザや状況を大袈裟な言い回しで説明してくれるので、分かりやすくて助かりますが、そのわざとらしさがクスリと笑えます。独特の言い回しなのも、クスリと笑えます。
これらから、このアニメはコメディとして見た方が良さそうだな、と途中から思った次第。
コメディと思うと、パート2以降はクスリとしながら、まあまあ楽しめました。
それでもパート1は、ジョジョが真面目過ぎてコメディが合っておらず、今一つ。
○ さて、原作は「人間賛歌」を標榜することでも有名な漫画らしいのですが、アニメではどこが「人間賛歌」なのかが今一つ分からず。
パート1「ファントムブラッド」(1から9話)のジョジョ(ジョナサン・ジョースター)(cv興津和幸)は、兄弟のように育てられたディオを最後まで信じたわけではないですし、最後は憎しみをもってディオを殺していますし、よって、命や友情や絆を大切に、ということでもなさそうです。
ジョジョは仲間の人間との絆や、愛する人間や自分の尊厳はとても大切にしていますが。
ディオは石仮面をかぶって「人間」を辞めたから「人間」ではなく、「人間賛歌」の対象外ということなのでしょうけれど。
不屈の精神と自分の誇りを胸に、生き抜き、戦い抜き、愛する人を守り、ということだとか、生れが「人間」かどうかということだとしたら、ディオも「人間」になりますし、それをもって「人間賛歌」と言うには、それが駄目とは思いませんが、少しばかり大袈裟な感じ。
○ 漫画の1巻で作者の荒木さんが、「神様や機械ではなく、人間こそが一番。それがジョジョの根底にある考え方なんです」とテーマを示しているらしいですが、人間が化け物とかと戦って最後は人間が勝つ、ということであれば、結局は主人公が勝つという既にありふれた話でもありますし。主人公が勝つ漫画は、原作漫画が始まった当時はでも珍しくはなかったのでは、と思いますが。
しかし、「人間」とは思えないような戦闘能力を身につけてディオに勝ったジョジョが「人間」なら、石仮面を付けて、人間を辞める、と宣言したディオも「人間」とどこが違うのかが良く分かりませんので、「人間の心」をもったものが「人間」ということなのでしょう。
それなら、外見がロボットでも化け物でも動物でも「人間」と見なされ得る一方、石仮面を付けない「人間」でも凶悪な犯罪者(更生の可能性がゼロの者?)とかだと「人間」ではないと見なされ得ることになります。
そのときでも、ディオは「人間」ではない方に該当するのでしょうけれど。
6話で、ディオによってゾンビとして生き返ったブラフォード(cv津田健次郎)がジョジョと戦う間に「痛み」を感じる「人間」の体・心・魂を取り戻したのを察知したジョジョは、ブラフォードが攻撃を寸止めすると判断して、「人間」を信用して攻撃をよけませんでしたが、こんな状態になったブラフォードは「人間」に該当するのでしょう。
23話でのジョジョも、敵のワムウ(cv大塚明夫)がジョジョの仲間を殺しつつも敬意を払ったのに対して、ワムウを「人間」として扱って敬意を払っていますし。(ただ、ワムウは強い相手と戦いたいだけだったとも言えるので、ジョジョとの戦いの中で「人間」になったのではなく、元から「人間」だったとも言えますけれど。)
「人間賛歌」とは、そういったことなのでしょうかねえ。
漫画ではきちんと描かれているのかも知れませんが、アニメでは時間の都合もあって描き方がたりないといったところでしょうかねえ。
良く分かりませんが。
○ 「人間」とは何か?、何をもって「人間」と言えるのか?、についてはグレーゾーンも多い大きな問題なので深入りはしませんが、
・ 胎児はいつから「人間」なのかとか(受精と同時か、妊娠何週目以降か。受精と同時だと、人工妊娠中絶は合法的殺人になり得る。)、
・ 脳が生まれつきない・ほとんどない「人間」とか(「脳」がないということは「心」がないということ。普通は死産か、生まれて直ぐに死ぬ。)、
・ 殺人鬼の「人間」とか、先天的または後天的に脳に障害があって攻撃抑制ができないから他人を物理的に攻撃する犯罪ばかりしている「人間」とか、
・ 太宰治の名作小説「人間失格」の主人公とか、
・ 生まれつき「人間」の顔とは思えない顔の「人間」とか(相当前、顔がゾウみたいな男を描いた「エレファントマン」という映画がありました。また、地球の人間と同等以上の知性を持った宇宙人が地球の人間と似たような顔とは限りません。更に、昨秋から今冬のアニメ「新世界より」の化けネズミは、もとは人間だったのを人工的に改良してネズミに近づけたわけで、この、「人間」と同等の知性を持つ化けネズミを「人間」と考えるのか、とか。)、
・ 夢も希望も意思もなくして生ける屍のようになった「人間」とか(今冬のアニメ「まおゆう魔王勇者」のメイド姉(cv戸松遥)がメイドになる前の農奴だったときがこれに近い。)、
・ 知性で判断するなら、先天的・後天的な精神障害や器質障害により知性の多くを失ったとかで知的能力がかなり劣る「人間」は「人間」なのかとか、
・ 「心」だったら猿にも犬にもありますし(国によっては、「人間」はそれらを食用にしてきた。)、
・ 鯨類は「人間」並みに利口だから食べるべきではないという人や団体もあるくらいですし、
・ 戦争や争いでよくあるように、自分が正しいと信じるものや国のために、自分と同じ国の人や同じ人種や同じ宗教の人には優しいけれど、他国民や他人種や他宗教の人は遠慮なく、あるいは憎しみを持って平気で殺せる「人間」は「人間」なのかとか(今でも人種差別が根強いアメリカで黒人を平気で殺す白人至上主義の団体とか、第二次世界大戦で数百万人のユダヤ人の非戦闘員を殺したヒトラーのナチス・ドイツとか、マフィアや暴力団の抗争では平気で相手を殺すのに自分の子供や孫には甘く優しい顔をする「人間」だとか。)、
どれがどっちに分類されるのかは考えればキリがないです。
○ さて、バトルについては、「北斗の拳」(少年ジャンプに1983から1988年連載。一部しか見ていませんが、TVアニメは1984から1987年、1987から1988年。)ほどには戦い方が楽しめるというわけでもないですが、あれは別格ですから、「波紋」の戦いはこれはこれで良いと思いますし、それなりに楽しめました。
○ 原作漫画のファンでも原作未読者でも、アニメを気に入った人、気に入らなかった人が当然ながらいるのでしょうが、原作未読の私には、何をもって「人間讃歌」なのかが今一つはっきりせず、アニメのパート1はディオが魅力的でしたが話はつまらない、パート2はシリアスを装ったコメディと考えればまずまずかな、といったところです。
実物大だと思いますが、実物より大きい気がしなくもない。2013年のACEにて。
【shin】
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