学生時代の友人からよく聞かれる言葉だ。
確かにあまり本は読んでなかった。読んでいたのはほとんどマンガだった。マンガといっても、いろいろなマンガを読みあさっていたわけではなく、同じマンガを繰り返し繰り返し読んでいたのだった。
その最たるものが『あしたのジョー』で、これに関しては100回以上は読んでいるだろう。他に読んだものといえば、『ゲゲゲの鬼太郎』『夕焼け番長』『男一匹ガキ大将』『天才バカボン』『柔道賛歌』くらいでだ。
活字のほうはといえば、超能力ものを何冊か読んだ程度だ。前にも書いたと思うが、高校入試前は主要5教科の勉強はせずに、超能力の勉強ばかりやっていた。そう、超能力で高校入試を目指したのだ。
合格はした。しかし、それは超能力の力によるものではなく、運の力によるものだった。
他に、中学時代に読んだ本といえば、三島由紀夫の『葉隠入門』だった。この本に『忍ぶ恋』という章があった。「好きな人が出来ても打ち明けるな」というものだった。
それを読んで以来、ぼくは忍ぶ恋を実践するようになった。が、そのおかげでジレンマに悩むことになる。まあ、そのジレンマが歌や詩になったのだから、忍ぶ恋は葉隠を読んだせいではなく、ぼくの宿命だったのだろう。
高校に入ってから、例の『ノストラダムスの大予言』を読んだ。当時(1973年)この本は大ブームとなった。「1999年7の月に人類が滅亡する」という内容が衝撃的だったのだ。
しかし、それを本気にする人は、少なくともぼくの周りにはいなかった。「この本は1999年8月に読む」と言って、わざわざこの本を購入しながら、その時読まなかった友人もいる。
鎌倉時代の末法思想ブームといい、日本人は基本的にこういうのが好きなのだろう。結局は、何も起こらなかった。
ところで、その時期ぼくは、文芸ものに関してはほとんど読んでいない。文芸もので読んだものといえば、夏目漱石の「坊っちゃん」と富田常雄の『姿三四郎』だけだ。
中学高校を通じて、何度か読書感想文の宿題が出ることがあったが、そういう時でも、ぼくは気に入らんという理由で読まなかった。で、宿題はどうしたかというと、図書館に行き、あらすじを抜き出して「~と思いました」と書いていた。が、提出したことはない。
見てきたように、中学高校を通じていえば、数えるくらいしか本を読んでいない。だからその時期しか知らない友人は、「おまえ、学生時代に本なんか読みよったかのう?」という質問をするのだ。おそらく彼の持つぼくの印象は、「ギターばっか弾いて、いっちょん勉強せんバカ」なのだろう。
が、ぼくはその後、そう高校卒業を境として『読書の虫』とあだ名されるくらいの、読書好きになる。しかし、何でそうなったのかは、ぼくにもわからない。
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