吹く風ネット

初恋

“いつのまにかの静けさがぼくに
 淡い恋心を落としていった
 思いもかけないことのように
 君を好きになっていた”


今日、本を読んでいたら、読者の初恋のページがあった。
何気なく読んでいたのだが、そこに書かれていたのは、「幼稚園にいっしょに通っっていた子」「小学校の頃、隣の席に座っていた子」「私は遅かった。20歳の頃、いっしょにバイトしていた人」などという、いつものお決まりパターンだった。
しかし、初恋にはけっこう個人差があるものだ。

「ぼくの初恋はいつなんだろう?」と思うことがよくある。
保育園の頃、ぼくがよくスカートをまくっていた子か?
詳しく覚えてはいないが、あの頃好きな女の子のスカートをまくるというのが流行っていた。
中には先生のスカートをまくった馬鹿もした。
おそらくそのノリで、ぼくはスカートまくりをやっていたのだ思うのだが、はたしてそれは初恋だったのか?

小学校1年の頃に初めてキスをした子か?
1年生の頃は教室の掃除を4年生がやってくれていた。
ぼくは4年生にけっこう知り合いが多かったせいか、よくからかわれていた。
その当時、ぼくの隣の席はYちゃんという子が座っていた。
家が近くだったこともあり、仲がよかった。
ある日、Yちゃんとしゃべっていた時に4年生に捉まった。
「おい、しんた。お前こいつと仲がいいのう。好きなんか?」
「うん」
「好きならキスしてみ」
「いや」
「本当は好きやないんやろう。好きならキスぐらい出来るはずやけどのう」
「好きと言いよるやろ」
「じゃあ、キスせ」
「わかった!」
と、ぼくはYちゃんとキスをした。
Yちゃんは目を閉じていた。
しかし、それでYちゃんと気まずくなるようなことはなかった。
よくいっしょに遊んだものだった。
1年の途中でYちゃんは転校してしまった。
別にその時に寂しさなんかなかったと思う。
意地でやった初キス、はたしてそれは初恋だったのか?

同じく2年の頃、隣の席に座っていた子か?
この子とは、同じクラスの子のあだ名を付けたり、うんこの話で盛り上がったりした。
よく家に遊びに行ったりもした。
しかしそれだけの付き合いだった。
これは初恋とは言えないだろう。

3年の頃、同じクラスになんとなく気になる子がいた。
Kという名前だった。
席が近くだったこともあり、すぐに仲良くなった。
その頃「お嫁においで」という歌が流行ったせいか、よく友だち同士で「おれはあいつをお嫁さんにする」などと言っていた。
「しんた、お前は誰と結婚するんか?」と聞かれると、いつも「おれはKがいい」と言っていた。
ついにはそれを家まで持ち込み、「おれ将来Kと結婚する」と言った。
しかし、はたしてそれを初恋と言うのか?

中学に入って、同じクラスに他の小学校から来た子がいた。
ぼくはこの子とは最初から馬が合い、よくしゃべっていた。
2年になってクラスが変わり、それから悶々とした日が続いた。
確かにこれは恋と言えるだろう。
しかし、これが初恋だったと言えるのか?

さて、どれを初恋と呼んだらいいのだろうか?
いつも悩むところである。
将来自叙伝を書いてくれという依頼があったとする。
その時、もし編集者から「初恋のことは特に詳しく書いてください」という注文がついたら、「いくつか初恋と思われるのがあって、その中のどれが本当の初恋かわからない」と書くしかないだろう。
よく「初恋の想い出は美しいもの」などと言うが、ぼくには上のどれも美しいと思ったことはない。
まあ、楽しかったと思っている程度だ。
本当に美しいと思ったのは、高校に入って、ある人と出会ってからの想い出だ。
しかし、それはもう初恋とは呼べないだろう。


“ぼくの初恋はいたずら好きの風が
 落としていったおかしな夢
 思いもかけないことのように
 君を忘れていた”

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