20歳の春にまったくの未知だった東京に飛び込んでから一年、ようやく東京生活に慣れた頃だった。それとなく仲間が出来、その仲間と飲みに行ったり、ドライブに行ったり、彼らの家を泊まり歩いたりして親交を深めていった。
ところが、彼らと別れた後、楽しい気持のまま帰宅するのだが、下宿に戻るとなぜか物悲しい。何かが違うんだな。しっくりこないんだな。そして最後には、
「ぼくが東京の人間ではないからだ」
という結論に到った。そういう時に書いた詩がこれだ。
『ひとりぼっち』
気がついてみれば、いつもひとりぼっち
気楽につきあっていけそうな皆さんですがね
振り向いてみれば、誰もいなくなってね
そんな毎日がぼくをつつんでる
寂しいというのが、本音なんだけど
いつもひとりっきりで強がってみてね
ひとりぼっちなんですね、もともとが
そうそう、どこへ行ってみたってね
だから今だけは、笑っていましょうよ
ね、今夜はとてもビールがおいしいんだから
ひとりぼっちの部屋で乾杯してね
青春、ああこれがぼくの青春でしょうよ
寂しげな街が、ぼくによく似合う
なんてかっこいいこと言っているけど
つまり、ひとりぼっちのいきがりでしてね
さよなら、また明日逢いましょうよ
気がついてみれば、いつもひとりぼっち
そんな毎日がぼくをつつんでる
→ ♫ひとりぼっち
結局ぼくの中の『ひとりぼっち』は、東京を離れるまで解消できなかった。しかし今は、それがいい思い出になっている。
ところで、詩の中にある「ビールで乾杯」だが、当時飲んでいたのは日本酒で、一度開けると飲み切らなければならないビールと違って経済的だったからだ。ということでバイトでお金が入れば一升瓶(二級酒)を買っていた。詩に「ビール」と書いたのは、つまり、ひとりぼっちのいきがりでしてね。
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