プロ棋士の実力の指標
と言えば、何を思い浮かべられるでしょうか?
段位、勝率、順位戦のクラス、などが一般的でしょうか。
ただ、それぞれ
段位・・・化物並みに強い新人がいても最初は四段。すぐ昇段できるわけではない。反対に、著しく力が落ちた高段の棋士がいても降段することはない。
勝率・・・対戦する相手の水準によって、同じ勝率でも評価は変わる。
順位戦・・・各クラス年2,3名程度しか昇降級しないので流動性に乏しい。B級2組以下は総当りではないので、くじ運にも左右される。
という理由から、単体では棋士の実力を正確に推し量ることはできません。
私は「レーティング」(以下Rと略)なる数値が、最もタイムリーな実力を表すと考えています。詳しい説明は割愛しますが簡単に言うと、対戦相手のRの高低に応じて一局一局の勝敗ごとに変化する数値です。(勝ったときのRの増え幅は相手のRが高いほど大きく、負けたときのRの落ち幅は相手のRが低いほど大きい)
今回は段位とRの関係について調べることにしました。高段ほどRが高いのか、それともあまり相関がないのか!?
まず段位の仕組みについて確認しましょう。
プロの段位は四段からスタートし、昇段規定(順位戦○組昇級、□段昇段後△勝、タイトル通算×期など)に基づいて上がっていきます。そして先ほども触れましたが、一度取得した段位から降段することはありません。一度九段になれば、たとえルールがわからなくなるほど衰えたとしても一生九段なのです。
それでは段位別の平均Rを見てみましょう。
豊島名人や渡辺三冠、羽生九段らA級棋士多くが属する、最高段位九段グループが、唯一の平均R1600台をマークし首位でした。
一方八段以下に関しては四段から八段まで、平均Rに明確な差はありませんでした。即ち段位とRの間には有意な相関関係が認められないということです。
永瀬叡王・王座や、広瀬竜王、稲葉八段、糸谷八段らA級棋士の属する八段グループはもっと高いと予想していましたが、蓋を開けてみればワースト2。最下位は七段グループ。説明無用の藤井(聡)七段に加え、菅井七段、高見七段、斎藤(慎)七段、中村(太)七段ら近年のタイトル経験者、さらにはR上位常連の千田七段。実力者勢揃いのイメージを持っていただけに意外な結果とでした。
実力者が多くいる一方で、平均が高くないということはデータにばらつきがあるということ。色々調べた結果、ばらつきの原因は年代であるとわかりました。
このように、同じ年代の中では段位が高いほどRも高い傾向がはっきりわかります。
他方同じ段位の中では、年代が低いほどRが高く、全体でもその傾向がみられます。(10代だけ平均Rが突出して高いのは藤井聡太七段しか該当者がいないため)
悲しいかな、少なくとも記憶力や体力は若い世代の方が高いのです。(羽生先生も25歳で七冠独占を達成したとき、既に記憶力のピークは過ぎているとおっしゃっていました)
記憶力・体力の差は事前研究の差にもつながりますし、長い対局を乗り切る上でもやはり体力がある方が有利です。そういった理由で、世代間で平均Rの差が生じてしまっているのかもしれません。
とまあ長々と述べてきましたが、今回のデータから言えることを要約すると
「プロの段位とは、実力の指標というよりは実績の指標だ」ということです。
よって、段位から実力を評価する場合は、年齢や勤続年数とセットで考えるべきです。同じ段位でも、例えば5年でその段に到達した人と20年かかった人がいれば、短期間に同水準の実績を積み重ねた方が実力は上でしょうからね。
*この記事における肩書・段位・Rは2019年10月上旬時点で集計したものです。
と言えば、何を思い浮かべられるでしょうか?
段位、勝率、順位戦のクラス、などが一般的でしょうか。
ただ、それぞれ
段位・・・化物並みに強い新人がいても最初は四段。すぐ昇段できるわけではない。反対に、著しく力が落ちた高段の棋士がいても降段することはない。
勝率・・・対戦する相手の水準によって、同じ勝率でも評価は変わる。
順位戦・・・各クラス年2,3名程度しか昇降級しないので流動性に乏しい。B級2組以下は総当りではないので、くじ運にも左右される。
という理由から、単体では棋士の実力を正確に推し量ることはできません。
私は「レーティング」(以下Rと略)なる数値が、最もタイムリーな実力を表すと考えています。詳しい説明は割愛しますが簡単に言うと、対戦相手のRの高低に応じて一局一局の勝敗ごとに変化する数値です。(勝ったときのRの増え幅は相手のRが高いほど大きく、負けたときのRの落ち幅は相手のRが低いほど大きい)
今回は段位とRの関係について調べることにしました。高段ほどRが高いのか、それともあまり相関がないのか!?
まず段位の仕組みについて確認しましょう。
プロの段位は四段からスタートし、昇段規定(順位戦○組昇級、□段昇段後△勝、タイトル通算×期など)に基づいて上がっていきます。そして先ほども触れましたが、一度取得した段位から降段することはありません。一度九段になれば、たとえルールがわからなくなるほど衰えたとしても一生九段なのです。
それでは段位別の平均Rを見てみましょう。
豊島名人や渡辺三冠、羽生九段らA級棋士多くが属する、最高段位九段グループが、唯一の平均R1600台をマークし首位でした。
一方八段以下に関しては四段から八段まで、平均Rに明確な差はありませんでした。即ち段位とRの間には有意な相関関係が認められないということです。
永瀬叡王・王座や、広瀬竜王、稲葉八段、糸谷八段らA級棋士の属する八段グループはもっと高いと予想していましたが、蓋を開けてみればワースト2。最下位は七段グループ。説明無用の藤井(聡)七段に加え、菅井七段、高見七段、斎藤(慎)七段、中村(太)七段ら近年のタイトル経験者、さらにはR上位常連の千田七段。実力者勢揃いのイメージを持っていただけに意外な結果とでした。
実力者が多くいる一方で、平均が高くないということはデータにばらつきがあるということ。色々調べた結果、ばらつきの原因は年代であるとわかりました。
このように、同じ年代の中では段位が高いほどRも高い傾向がはっきりわかります。
他方同じ段位の中では、年代が低いほどRが高く、全体でもその傾向がみられます。(10代だけ平均Rが突出して高いのは藤井聡太七段しか該当者がいないため)
悲しいかな、少なくとも記憶力や体力は若い世代の方が高いのです。(羽生先生も25歳で七冠独占を達成したとき、既に記憶力のピークは過ぎているとおっしゃっていました)
記憶力・体力の差は事前研究の差にもつながりますし、長い対局を乗り切る上でもやはり体力がある方が有利です。そういった理由で、世代間で平均Rの差が生じてしまっているのかもしれません。
とまあ長々と述べてきましたが、今回のデータから言えることを要約すると
「プロの段位とは、実力の指標というよりは実績の指標だ」ということです。
よって、段位から実力を評価する場合は、年齢や勤続年数とセットで考えるべきです。同じ段位でも、例えば5年でその段に到達した人と20年かかった人がいれば、短期間に同水準の実績を積み重ねた方が実力は上でしょうからね。
*この記事における肩書・段位・Rは2019年10月上旬時点で集計したものです。
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