今まで、やってきた事を御覧いただくような個展をした後、何をしているの?と、尋ねられると、困っしまいます。春宮は、日本刺繍らしい日本刺繍をたっぷりしたい方ですので、それが出来る着物・帯地がないのです。着物をお召しになる方が軽い着物を好まれるので、目の詰んだ、しっかりした生地がないので、出来ないのです。軽い布地に、たっぷり刺繍をすると、刺繍の重さに布地がもたず、弛みが出てしまうのです。
刺繍組合の理事長さんも、先日、「出来上がったばかりの時は、よかったけれど、弛みというかツレが出てきた…」と、おっしゃっていました。理事長さんは、伝統工芸会に入選している女性が布地の織り目を刺繍する縫い方しか出来ない…と言われて驚いた…と、話しておられました。工芸会は、そのような日本刺繍の縫い方の方ばかり入選させてきたのですから仕方ありません。日本刺繍の縫い方の技法は沢山あるのですが…。刺繍組合に所属なさっている方でも、『刺繍』を生業としている方は3人だけ…との事でした。
皆様、春宮に、「日本刺繍を教えたら…」と、おっしゃいますが、日本刺繍の台・枠を作る所が廃業ばかり、基礎縫いを教えるという事は、しっかり刺せる布地が必要ですがありません。刺繍針も広島の方のかたが、たった一人作って下さっていますが、いつまで可能か…。今時の稽古事は、手軽に出来る物が好まれます。『糸縒り3年さん』(糸の縒りを揃えないと日本刺繍の糸縒り艶が揃わないのです)などと言われる日本刺繍は、「綺麗ね」だけでしょう。
春宮は、月謝を払って、頭を叩かれ、「何を考えて刺している」と蹴られ、針の上げ下ろしや糸使いの加減は、二人羽織のような状態で教えこまれました。今、そのような教え方をしたらパワハラだとかセクハラだとか言われるでしょう。本当を追及するならば、多分、職人さんを仕込むように教えなければ、真の日本刺繍は伝承出来ないでしょう。春宮は、そのような教え方をされましたので、半端な教え方は出来ないと思いますので、しない方が無難です。
稽古事で、いろいろな刺繍をなさった方が最後にたどり着くのが日本刺繍と言われていました。日本刺繍を教える所も少ないです。ないないづくしですので、技は持っていても、発揮出来ないのです。
日本刺繍を中国で、ベトナムで…という状態ですが、日本の四季を知らない人が刺繍するのですから、風情がありません。ミシン刺繍も、日本刺繍風に出来る方は高齢化がすすんでいるそうで、後、数年か…と言われています。コロナの流行が拍車をかけることでしょう。
組合の理事長さんは、お孫さんの七五三の為に『千総』というメーカーの反物を購入なさったそうですが、ミシン刺繍がしてあり、日本刺繍に携わる者としてミシン刺繍は…と、解いたら穴が開き、当て布をして、刺繍なさったそうです。春宮も、頂戴した千総さんの着物が、やはりミシン刺繍でしたので、解いたらガーゼの様になり、刺繍糸で布地を補強して、刺繍し直しました。これが、現状です。
日本という国は、伝統工芸の日本刺繍など、どうでもよいようです。寂しい事ですが、日本刺繍は、絶滅危惧種状態だと思っております!
刺繍のみならず、この国の素晴らしい技術や伝統工芸の危機ですよね。
職人さんの技が冴える町工場も同様らしいです。そんなお話しを伺うと心配でなりません。とある司会者が、国が職人さんや技術者さん、伝統工芸、伝統文化をもっと保護すべきと仰ってました。なんなら公務員扱いにして金銭的に援助するのはどうか?と。なるほどと思った次第です。