雑談タイム❕

推しの話、日常の話など。

個性とは

2024-08-25 03:09:00 | 日記
大学時代、流行りの服を着こなして、長い髪を綺麗に巻いた、すれ違った時に香水の匂いがするような女子たちが苦手だった。
自分には、絶対になれない姿だったから。


高校まで、ファッションにまるで興味がなかった私は、大学に入学してからどんな服を着たらいいのか分からず、ほとほと困っていた。
そんな時、トイレや電車で会うのは、前述のようなキラキラ女子。
彼女たちは、女子というには大人になりすぎていて、でも、女性というより「女」だった。

彼女たちを見るたび、コンプレックスを刺激されていた私は、心の中で彼女たちを馬鹿にしていた。

あんなの量産型じゃん。個性、死んでる。

そう思うことで、どうにか自分を保っていたのだと思う。


そんな中、私にも恋人ができた。
私はその彼のことが、世界で一番好きだった。
でも彼は、高額のものを一切身につけない私に、いつも意見していた。


キャンバスシューズを履くなら、コンバースにしてね。偽物は履かないで。
VANSは一足は持っておかないと。
エアフォースワンを履いてよ、あれを履いている女子が好きだな。
カーハートのTシャツを買ったらどう?
ノースとステューシーなら、どっちが好き?

またそうやって、金額のことを言って。安物買いの銭失いって言うんだよ、君みたいな人のこと。



黙れよ。と今は思う。
確かに彼はいつも、高いスニーカーと高いTシャツを身につけていた。
でも彼の垢抜けは、タバコと酒と、抱いた女の数が根源なんじゃないのかなあ、と思ったり。

結局彼とはだめになって、私は地の底まで堕ちた。そこから這い上がるまで掛かった二年の歳月で私が何をしたかと言えば、髪を巻いてみたり、香水をつけてみたり、VANSやナイキのスニーカーを購入したりすること。
結局、彼女たちが羨ましかったのだ。だって、勝つのはいつも彼女たちで、個性を欲しがった私はいつも負けていたから。

でも、彼女たちみたいな服を着ても、自分がどうしても浮いている気がして、自尊心の削られる日々は続いた。



自分らしさとは、一体何なのか?



私はすっかり、わからなくなってしまっていた。

そんな中、私の好きなアイドルの女の子がInstagramの質問箱で、
「自分が可愛いと思ったものを買っている」
と、答えているところを見た。
彼女の着る服はシンプルだけど、あまり人と被らないようなデザインのものが多く、それは彼女の個性の一つになっていた。

その時解った。どうしてあの子たちが輝いて見えるのか。
それはきっと、流行りものの服や綺麗な巻き髪に対して少なからず「愛」があるから。それが幾ら他人と同じであろうと、それが好きだという気持ちがあれば、最終的に彼女たちを輝かせる「個性」になる。


私が好きなのは、ボーイッシュな服装とショートヘア 。
自分が好きだと思った服を着て、自分が好きなヘアスタイルやメイクをしたら、きっと自分に自信が持てるのではないか?



ある人は、私の服装に
「可愛い!」
と言った。
またある人は、同じ服を見て
「おばあちゃんみたい」
と笑った。

全てはそういうことなのだ。
万人受けするものなんて、世の中にひとつもない。



気にしすぎでは?と思う人もいると思うが、私の周りは意外とそういう子が多かったりする。
ある女の子は私に、
「私に似合う服を選んで欲しい!」
と言った。なんでも、垢抜けたいんだとか。
私はその子とショッピングに行き、服を選んだ。
数日後、彼女は彼氏とのデートにその服を着て行った。確かに似合っていたけど、いつも彼女が着ていた古着の方が、彼女を輝かせているように思えた。それが彼女の個性だったのだと思う。




私の服にイチャモン付けていた彼、今でも、私の人生で一番好きだった人に変わりない。彼と付き合っていた頃は、自分が無いも同然だった。
彼に言われたらその通りにして、喧嘩にならないようにとにかく彼に合わせる。
私の法律は、彼だった。彼の言うことは全て正しい。
それって、本当に危険な考えだったのだな、と今なら思う。
だからきっと、当時彼に言われた数々の言葉が、私の心に刺さった棘として、未だに抜けずに残っているのだろう。

『ふたりの世界』

2024-08-22 02:58:00 | 日記
あいみょんの『ふたりの世界』という歌が好きだ。“お風呂から上がったら少し匂いを嗅がせて まだタバコは吸わないで 赤いワインを飲もう”というフレーズが好き。

だけど、その後の“いつになったら私のことを嫌いになってくれるかな”という歌詞の意味がよくわからなかった。
5年前に付き合っていた彼氏と、この歌を聴いていた時、やっぱりそのフレーズで私の頭にハテナが浮かんだ。
「これ、どういう意味だと思う?」
「何回聞いてもわかんないんだよね」
と彼に言うと、
「俺、あいみょんの歌知らないし」
と言われた。そうか、普通はそんなこと気にも留めないか、と何故か少し恥ずかしくなって、その話をするのはやめた。


そんなことを、思い出していた。最近、脱衣所でスマホの音楽をシャッフル再生した状態で入浴するのにハマっているのだけど、お風呂から上がった時にちょうど『ふたりの世界』が流れていた。
5年前の彼のことは、依存するほど好きだったけど、今思えば普通の男子だった。
とにかく、流行っている事や誰かの真似をする人だった。流行りの服を着て、流行りの音楽を聴いて、部屋のインテリアも、流行っているなにか。本当に自分が良いと思ってやっていることは無いように見えた。


また新しく好きな人ができたら、いつになったら嫌いになってくれるかな、という歌詞の意味がわかるかもしれないと思っていたけど、今の彼と付き合い始めても、まだその意味はわからなかった。


彼に期待しすぎている、と気づいたのは、2月頃のことだ。
バレンタイン、花が好きな彼にブーケを渡そうと、バレンタインの1週間ほど前から考えていた。明るい人だから、黄色や赤系の花にして、ラッピングは青系にしてもらおう、メッセージカードも添えよう、なんて考えていたのだけど、実際はバタバタしてメッセージカードは書けなかった。
男性だし、花束貰ったことなんてないかもしれないな、喜んでくれるかな、と少し大袈裟に反応を期待してしまった。実際渡すと、「何、お花?バレンタインだからか。ありがとう」と言う程度だった。
正直、もう少し喜んでくれてもいいのにな、と思った。甘いものを食べないので、バレンタインは何も渡さないつもりだったし、本人にもそう言ってあった。でもお花なら喜びそうだし、と思って渡したのに。
花束のまま玄関に飾っていたので、花瓶にさしたら?とすすめた。しばらくして玄関を見に行くと、花瓶にささってはいたけれど、花をまとめるためのテープがそのままついていて、口の細い花瓶に無理やり差し込んだ感じだった。ブーケの水色の包装紙は、広げたまま散乱している。


なんだか、ガッカリした。
確かに雑な人だけど、貰ったばかりの、しかもいきものである花を雑に押し込んで、ラッピングだって、考えてその色にしたのに、乱雑に放って。
私は、悲しい気持ちを押し殺しながら、根本のテープを剥がし、茎を切った。10本ほどの花は、短くしても花瓶に収まらず、結局プラスチックのコップにさした。彼はスマホからチラリと顔を上げ、切ってくれるの?ありがとう、なんて言って、またスマホをいじった。
私は花を玄関に戻し、彼に
「そろそろ帰るね」
と言った。彼は、うん、と言ってスマホを置いた。いつもは駐車場まで出てきて送ってくれるけど、今日は玄関先までだった。そんなことにも、一々ガックリした。



車のハンドルを握る。
期待しすぎている、と思った。私の気持ちを解ってくれているだろう、こうすれば喜んでくれるだろう、プレゼントは大切にしてくれるだろう、と過剰に期待してしまった。恋愛は、期待はしてはいけないと言うけれど、まさにそう。

ほどほどに愛する。長続きする恋は、そういう恋だ。

と、何かで見た。私はいつも、心にそう誓いながら、結局、気持ちをうまくコントロールできない。
苦くなった唾を飲み込んで、Apple Musicの再生ボタンを押す。Bluetoothで繋がったカーステレオから『ふたりの世界』が流れる。

“いつになったら私のことを嫌いになってくれるかな”

嫌いになってくれたら。嫌いになれたら。
楽なのに。そしたら、そんな変な期待なんか、しないもの。




数日後、彼が暇つぶしに電話をかけてきた。
他愛もない会話の中で、彼がふと
「大きい花瓶、買おうかなあ」
と言った。バレンタインにくれたお花、入りきらないからさあ、と。私が、ああ、うん、とそっけない返事をすると、彼は
「あの時、ちょっと照れちゃって言えなかったんだけど、お花すごく嬉しかった」
と、照れ笑いした。
私は一瞬時が止まったようになって、えー!と笑ってしまった。だってそっけない感じだったじゃん!と言うと、お花もらったのなんて初めてだもん、どんな映画でもドラマでも、女の子にお花もらうシーンなんてないし、、などとごにょごにょ言っていた。

なんだ、あんなに落ち込んだのに。
私は、嬉しいのに涙が出た。



今の彼。器用だけど、少し不器用で、時々そんなふうに私を悩ませる。
けど、きっと『ふたりの世界』の歌詞の意味を訊ねたら、一緒になって考えてくれるだろう。


あいみょんも、そんな恋愛をしたのかな。
期待してはいけない。過度な期待は、いつか身を滅ぼす。
そんな思いを“いつになったら私のことを嫌いになってくれるかな”に込めたのだろうか。

だとしたら、どんな恋愛指南書にも載っていない、お洒落な言い回しだ。
やっぱり私は『ふたりの世界』が好きだなあ、としみじみ思う。