KZ社の中間グレード(7000円程度)は2019年のKZ-ZSXからその後継機がZAX(2020)で、その後が現行機種のZAS(2021)と続いている。
発売年 |
2019 |
2020 |
2021 |
機種名 |
KZ-ZSX |
KZ-ZAX |
KZ-ZAS |
DD(10㎜) |
1 |
1 |
1 |
BA |
5 |
7 |
7 |
周波数帯域 |
7-40000Hz |
10-40000Hz |
10-40000Hz |
インピーダンス |
24Ω |
24Ω |
24Ω |
音声出力レベル |
111dB/mW |
113dB/mW |
109dB/mW |
重量 |
31g |
27g |
22g |
現行のZASはデザインも仕上げも中華イヤホンから一皮むけた感じになった。音の評価も高いので、今買うならZAS一択かなとも思う。
昨年のモデルZAXは片耳あたり1DD+7BAの多ドラモデル。評価はやたらと高かったような気もする。ZSXよりやや小ぶりで、カナルタイプだが音漏れするというレビューがあった。
一昨年のモデルZSXは片耳当たり1DD+5BAのこれも多ドラだが、翌年のZAXが7BAと進化を遂げるので、スペック的にやや見劣りする。
が、はっきり言って7BAというような多ドライブはオーバースペックのような気もする。
少々古い機種だがZSXのレビューをしてみよう。
パッケージはウレタンに埋め込みでエントリークラス(プラor紙)とは一線を画す
KZ-ZSXは中華イヤホンメーカーの雄KZ社の中間グレードの商品で、7,000円前後で販売されていた。KZといえばエントリークラス(3,000円程度)でベストセラーを多数輩出したメーカーだが、手堅いラインナップで中華イヤホンメーカーのリーダー的存在であるといえる。エントリークラスより上位クラスの国内メーカー品と競合し始めるオーバー5,000円クラスでは圧倒的な品質やコスパが求められる。そして、それをクリアしているのが上記の3機種と言えるのである。中華イヤホンのエントリークラスが国内メーカーの5000円クラスと遜色がないように、この7,000円クラスは国内メーカー品の12,000円クラスを凌駕する質感と性能を秘めている、と思う。(ここら辺の記述はあくまで個人的な感想です)
ガンメタのフェイスプレートはなかなかの質感と重量感
中華イヤホン(特にKZ製)を揶揄する時によく使われる表現に「ドンシャリ」がある。低音域が過剰(ドン)で高音域は量が多いが薄っぺらい(シャリ)という意味合いで、確かにエントリークラスの製品でそのような傾向が強くあったと思う。元気が良い音ともいえるのでメリハリや重低音を求めるユーザーには好ましい傾向だと思う。ただ、一般ユーザー(クラシックも聞きまっせ)には色付けがありすぎると感じられたかもしれない。低音が出すぎるという傾向はKZ社イヤホン全体の特徴でもある。
それは確かだが、このZSXになると様子が変わってくる。中低音を主に受け持つDD(ダイナミックドライバ)と高音域を担当するBA(片耳あたり5個のBAが配置されている)のクロスオーバー周波数の設計が巧妙になされており十分に量感のある低音域と、量感で負けない中高音域を奏ででいる。そして何より定位感が絶妙で、空間の表現が秀逸である。(音響が立体的である)5個のBAは十分に機能していると思う。
ZSXの音(と質感)は明らかにエントリークラスと一線を画している。本格的に聴く人はこのクラス以上で検討するのが吉だと思う。このクラスを聴く人は当然のようにイヤチップの交換やケーブル交換を行うと思うが、それでさらに質の向上が期待できる。
Amazonでの価格は現在5,500円程度だが、タイムセールで3,000円程度の価格で売られたことがあった。(もうぼちぼち市場から消えるのかも知れない)この価格なら断然お買い得と言える。
後継機種との聴き比べをしなければ、十分にメインで使える名機だと思う。