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10/2にも取り上げた大崎善生だが、今年の8/1に日経新聞・第40面「文化」欄で掲載された彼の文章は泣かずにはいられない素晴らしいものだった。うっかりしたことに、その記事を切り取りそこなった。機会があればまた探し出して読みたいと思う。
白石一文の「一瞬の光」もそうなんだけど、この作品も40代半ばの著者が40歳前後の人物を主人公にしている。二つの作品には共通した感覚が結構あるように思う。それは「働き盛り」と呼ばれる年齢、だけど人生の折り返しに至った「若さ」への憧憬、それが「恋愛」に投影されて物語になる、そんな感じ。そんな物語が面白いと感じるのは、やはり僕がその年齢にあって、主人公たちと同じように悩んでいるからなんだろう。
「若さへの憧憬」とは大袈裟だけど、20代の頃には対立していた「個と公」の関係を摺り合わせる術を身につけること、敏感すぎた他者への畏れをパターン化した人間像に当てはめて希釈すること、持て余していた性欲が承認の欲求へと変化していくこと、そんなことに寂しさと充実感のアンビバレンツな感覚を覚える世代なのだと思う。