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庭で
仄かに
雨が咲いています。
あじさいの花は
雨が咲いているようで
大好きなのです。
アメリカでは
あじさいと言えば
なによりもまず花嫁のブーケ。
それに向こうには
梅雨という梅雨はなくて
あじさいは
初夏の爽やかな晴天に咲く
お日さまの似合う明るい花でした。
ひまわり並みに。
たくさん咲いていたけれど
なんか違うー
といつも思っていた。
あじさいは
雨が咲いているような花なのに。
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関東も
先日ようやくの梅雨入り。
梅雨らしくない降り方ではあるけれど。
雨が咲く小路を
傘をさして歩いていると
これがきっと「紫陽花いろのもののふる道」
なんて思って
三好達治の
美しい叙情詩がよぎるのです。
母よ――
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花いろのもののふるなり
はてしなき並木のかげを
そうそうと風のふくなり
時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕日にむかって
轔々と私の乳母車を押せ
赤い総ある天鵞絨の帽子を
つめたき額にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私はしってゐる
この道は遠く遠くはてしない道
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花いろのもののふるなり
はてしなき並木のかげを
そうそうと風のふくなり
時はたそがれ
母よ 私の乳母車を押せ
泣きぬれる夕日にむかって
轔々と私の乳母車を押せ
赤い総ある天鵞絨の帽子を
つめたき額にかむらせよ
旅いそぐ鳥の列にも
季節は空を渡るなり
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私はしってゐる
この道は遠く遠くはてしない道
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庭では
雨が
仄かに咲いています。
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