
死の側より照明(てら)せばことにかがやきて
ひたくれなゐの生(せい)ならずやも
——齋藤 史
紅葉を詠んでいるわけではないのに
紅葉の季節になると
この歌が
胸を過ぎる。
ひたくれなゐに燃えあがる、秋。
凍える冬を前にして
その身を捧げるように
赤く赤く
ほんのつかの間
赤く燃え立ち
惜しげもなく散る樹々。
紅葉には
桜や
花火にみる
刹那の輝きがあって
奥深く
厳かで
神聖なその情景に
気づけば
居ずまいを正している。


もみじの
ひたむきな赤
痛ましいほどに ひたむきな
その赤に
爪先から
心の襞まで
染めあげられて
思わず目を閉じる
それでもなお
まぶたの裏までが赤く
いま流せばきっと
涙すら赤いと
そう思う
ひたくれなゐの秋

死の側より照明せばことにかがやきてひたくれなゐの生ならずやも
——齋藤 史
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