実家の裏庭の隅に生えている樫の木。
物心ついたときから
どーんとそこにあって
普段、あまり気にかけない。
でもわたしに深く刻まれている
「実家の音」のうちの幾つかはこの木。
風の強い日に
たくさんの葉を揺らして立てる葉音が
ざざ、ざざざ、と
波音のようだったり。
ドングリが
物置小屋の屋根に当たって
こつん、こつん、と
ひっきりなしに音を立てたり。
ずっと昔から
わたしに寄り添うように
淡々と、優しく、聞こえてきた音。
湯船につかっているとき
お布団の中
本を読んでいるとき
飲み物を飲んでいるとき
ときには
ざざ、ざざざ、と。
ときには
こつん、こつん、、、こつん。
意識して聞いているわけではないのに
わたしに沁み込んでいる音。
反対側から見上げると
別の木みたい。
先日、父と祖父が
そろそろ大々的に剪定をしようと話していて
あらためて振り仰いでみた。
同じ裏庭で
プラムの花が咲いていました。
気づいたらもう満開。
プラム。
すもも?
梅とも桜とも桃とも
ちゃんと違う
白い花。
白くて
無垢で
どこまでも清らか。
汚れのない美しいもの。
初夏に
甘酸っぱくて
みずみずしい果実を実らせる。
ルビーのような赤で艶のある皮。
なかは黄色くて。
思い出すだけで…
酸っぱい。
pure [pjúər]
ピュア。
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