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演出ノート その2

2011年02月14日 22時16分53秒 | Weblog
2、題材選び・・・子どもたちの「やりたい」がモチベーションを支える

 前回の「雪の女王」は、わたしの長年温めてきた「やりたい」がはじまり
だった。今回は、子どもたちに何がやりたいか聞いてそれをスタートにした。
そのほうが、モチベーションが上がると思ったからだ。

聞いてみると、意外にも「小公女」。「ドラマでやってたのを見て・・・
すっごいかわいそうなんですよ。」ドラマの話で盛り上がる小学5年生の
子どもたち。しだみらいがかわいいとかなんとか・・・。

 わたしは「小公子」は読んだことはあったが、「小公女」は読んだことも
なければ、ドラマもアニメも見たことがなかった。(特にドラマはいらいら
することが多く、見ないのだ。だから、シダミライって誰?って感じなのだ。
オクレてる!)

 みゆきさんは、「わたし、セアラは嫌い。というか、こんな子いるわけない
と思う。こんなひどい目にあったら、普通は、いじけて人間的にゆがむと思う。
でも、いつも清く正しくを全うするなんて、うそっぽい。」と言う。これを
聞いてますます物語に興味をもった。              
        
 教育に携わる者として、その究極の目的は「どんな環境の変化にも耐え、
たくましく生きていく人間」の育成だと思う。そのために、教育ができる
役割は何かを常に考えているから、当然だ。セアラの誇り高い精神を支えた
ものは何だったのか。それを解明し、舞台にして伝えたい。(教育活動の
ヒントになるかも!)

 それに、お金持ちの主人公が一転して全財産と地位を失うなんて、現代の
リスクの高い経済状態にぴったりだ。就職難など、長い苦戦を強いられている
今の若い人たちの状況にも通じるものがある。舞台を見た大人も、現代に重ね
合わせてメッセージを受け取れるものになるだろう。
 

 まずは、本を探して読んだ。面白くてやめられない。一気に読んだ。
 本の挿絵や、翻訳もよかったのかもしれない。これならやってみたいと
思った。演劇作りは長い過程を要する。演出である自分が気に入るもので
なければつらい。

 セアラの誇り高い生き方に、魅了された。

 幼いころ非常に貧しかったチャップリンが、母親のハンナに教えられたという
「ぼろをまとっていても、心は紳士でありなさい。」を思い出した。

セアラを支えたもの・・・
まずは父親の深い愛情。死んでしまっても、セアラの心の中で生き、支え続けた。
次に、想像力。想像力については、合理性を追求する現代社会で失われたものと
して、ミヒャエル・エンデが「モモ」「果てしない物語」でその大切さを訴えた。
想像力はセアラの知性であり、知恵と思いやりのある行動を支えた。

それから、豊かさ。セアラが、本当の豊かさを体で知っているからこそ、弱い者
への思いやりを持ちえたのだろう。福祉に貢献する人というのは、ナイチン
ゲールも、ロックフェラーも、ダイアナ妃も、経済的・社会的に豊かな地位にある
人たちが多い。(蛇足だが、世界的な富豪は、社会貢献しないと一流とはみなされ
ないようだ。格差の大きい社会としての長い歴史があるからこその考え方なの
だろう。日本の大企業が世界の一流とみなされるには、これが課題なのだろうと思う。)
これらを脚本の核としようと決めた。