昨夜来からの雨が上がりました。朝から、この季節らしからぬ暖かさです。
第27回は、前回に引き続き、「阿弥陀如来坐像(八寸)」の制作工程の紹介です。
御身体が出来上がると、次に取り掛かるのは「蓮華座」(れんげざ)の制作です。
仏像や仏画に描かれている仏様は、多くの場合、蓮の花弁の台座の上にお立ちになったり、坐っておられます。
この台座を「蓮華台」「蓮華座」「蓮の台(はすのうてな)」と呼びます。「蓮」を「はちす」というのは、花托の部分が「蜂の巣」を逆
さまにした形に似ており、穴がいくつもあるからです。
蓮は汚れた泥の中から清らかな花を咲かせます。仏教の教えでは「泥中の蓮華」(でいちゅうのはす)と呼ばれることもある蓮。そんな蓮
という植物の特徴は、水中の泥に根づいて、水面より上に美しい花を咲かせることです。
このように、不浄である泥の中(「迷いの世界(この世)」)から芽を出し、真っ直ぐに茎を伸ばして優美な花(蓮華はよごれた泥に染ま
らない「悟りの世界」の例え)を咲かせる様子から、蓮は仏教の教えの象徴としてとらえられています。
つまり、「泥中の蓮華」とは 、 ” いくら汚れた環境に身を置いても、その汚さに染まらず、清く生きること ” 。蓮のように「煩悩の汚れの
中でも決して染まらず、清らかで純真な心や姿を保っている人」を例える言葉になります。仏様は悟りを開いて仏となった(成仏した)た
め、その「あかし」として蓮華台に乗っておられるのです。
また、蓮は極楽浄土に咲いている花としても信じられています。仏像では、台座に蓮のモチーフが取り入れられることがよくありますが、
蓮台に複数のパーツが合わさった豪華な台座は「蓮華座(れんげざ)」と呼ばれます。
【蓮華座のパーツと名称】
「蓮華座(れんげざ)」のパーツは上の写真のように組み合わされます。蓮台の内側、蓮弁を貼り付ける部分を蓮肉(れんにく)と言い、
蓮の一枚一枚の花びらを蓮弁(れんべん)、蓮台の下部にあるのが敷茄子(しきなす)、その下が受座(うけざ)、受皿(うけざら)とも
言います。これらを反花(かえりばな)が受け止め、一番下に框(かまち)が配されます。
【反花(かえりばな)の制作】
【蓮台(蓮肉と蓮弁)の制作】
蓮弁は一枚一枚を元木から彫り取った後、全体のバランスを考え、外側に反り過ぎないように内側を細かく削り取りながら、蓮肉の側面の
カーブに合わせ、木工ボンドで固定していきます。
また、蓮弁のサイズは各段ごとに異なるため、二段目以降は、蓮肉の側面のカーブに合わせるとともに、一段目との重なり具合や隙間など
を確認しながら貼り付けていきます。三段目、四段目はこの繰り返しです。
【受座(受皿)の制作】
受座(受皿)の制作もかなり神経を使う細かな作業でした。
敷茄子と框との制作を経て、全部のパーツを組み合わせると「蓮華座」の出来上がりです。
【出来上がった蓮華座】
【御身体と蓮華座との組合せ】(敷茄子と框は未完成状態)
今日はここまでとさせていただきます。
次回はいよいよ関門である光背の制作。悪戦苦闘はまだまだ続きます。
〇 泥中(でいちゅう)に あし取られたるままの わたしである
〇 蓮の種 撒かねば咲かぬ 身と知れよ
〇 我はさあ 何処(どこ)に座るや 針の上
訪問感謝。最後までお読みいただき、ありがとうございました。 それではまた次回に! 合掌