SMILEY SMILE

たましいを、
下げないように…

澄切った・・・

2004-07-23 13:41:56 | 太宰
ああ、暑い・・・。

これからビールを飲むことのいい訳のように、口からこぼれた。

一番搾り

「澄みきった、コク」


ふと、渡辺一夫の太宰さんへの追悼文のタイトルが、思い浮かんだ。

「澄切った切なさ」

太宰さんを表わす、見事な評だと思う。

太宰さんは、こんな渡辺一夫に、死の直前「如是我聞」というエッセイ

で痛烈な批判をしている。渡辺氏もそれに対する申し開き、弁解という

意味もあったのかもしれない。

心の中の事情はともかく、渡辺氏の捧げた花はフォスフォレセンスのよ

うに可憐な花だった。

くじら、ねこ 1

2004-07-21 18:58:10 | くじらねこ
都は、甘ったるいような、少し酸っぱいような空気が、この870年

の積み重ねで、ついには空の色まで変えるようになっていた。その都の

真ん中に、232年もの歴史を持つカフェがあったとさ。


わたくしは、17代目の店主であります。

夕方6時から8時頃は、たいていお暇な時間帯でありますので、常連

の方が、ちらほらいらしては、たいへんおかしな、それでいて何もなら

ないようなお話を、10席ほどのカウンターにどっかりと、まるでじぶ

んのお家の如くお座りになって、うれしそうに語り出すのであります。


くじらさん、は6時になるといらっしゃいます。カウンターの一番奥、

身体に似合わずひっそりとお座りになり、キンキンに冷えたビールを、

とりあえず8.3リットル一息に飲み干されます。その、痛いくらい

の冷たさと、爽快感、一杯目のクラクラ感が体中にゆきわたりますの

に、きっかり13分、かかりますので私は、特注したぴたり13分の砂

時計をひっくり返して、くじらさんに話しかけるタイミングを見計らう

のが、常になっています。

ひとくちに13分と言っても難しゅうございまして10分経過、の一番

いいとき、に話しかけてもお邪魔のようで悪いですし、うっかり話しか

けるのを忘れてしまいますと、気弱にいじけて雑誌など読み始めてし

まっては、気まずくなってしまうのであります。

わたくしとしましても、くじらさんは大切なお客様、常連さんでありま

すので、そんな彼のわかりやすい繊細さを愛しくも思われまして、私が

言うのもおこがましいのでありますが、大事に、させていただいている

のです。


「今日は、なんだか、妙にグリーンだねえ」

と、くじらさんはお空の話からお始めになります。

「左様、今日は一段とグリーンであらせられますね」

私は、空の話をするのが何よりも楽しく、常連のお客様は勿論、一見さ

んであっても、誰彼となく話し掛けてしまい変な顔をされてしまうこと

も、しばしばであります。ともかく、都のお空は格別なのです、様々な

表情を、とりどりの色彩を持っていらっしゃるのです。そして、そ

の色を感じるココロ、言い表すひとたちの感性はこの都にあっても、研

ぎ澄まされているのです。ここ2,3日は大まかに言えば、グリーンで

あらせられましたし、2週前は、玉虫色サイケデリック、恍惚、でありま

した。

「この緑は、どうも憂鬱になる。苦手な色なんだな。ここんとこの濃や
 
かさには閉口だ。どうにもやりきれねえ」

「くじらさん、やっぱり青ですか、オーシャンブルー」

「うん、あお、ね。海の藍、・・・・、その辺の微妙な色合い、ニュア

ンス、空の蒼さではない、深さ、様々なものを呑み込んだ、深淵、生の

みなもと、色というより、根源的な感覚・・・」

くじらさんに海の話をさせると、2時間18分は息継ぎなしで楽にお続

けになり、さらには、感極まって泣き出すと、お店はたちまち浸水の憂

き目に遭うので、すかさず話頭を変えるようにしております。

「ああ、ひつじ君、ね、そろそろお願いしますよ」

当店の専属ピアニスト、ひつじ君に話しかけます。

「夜は、どうしませうか、マイ・ボス」

急に振られたひつじ君は、慌てて煙草を消して、こちらの方に改まって

向き直ります。昼間はバッハの「インヴェンションとシンフォニア

」や、「ゴルトベルグ ヴァリエーションズ」を演っていただいており

ましたから、夜はお気楽にボサノヴァでも・・・、と思っておりました

が、話の流れから、思わず出たのが、

「・・・とりあえず、BLUE IN GREENを・・・」

「ああ、マイルス」とくじらさん。

「いや、あれは、エヴァンズでせう」

ひつじ君は、微笑って言うと、ピアノに向って、鍵盤を掴んで、祈るよ

うに大真面目に弾きはじめました。

お店の雰囲気が、すっと、沈んで落ちつくのがわかるようです。

私は、ゆっくりライトダウンをいたします。



百景(3/10)

2004-07-21 17:23:24 | 
21、歯が、欠ける

22、こたつ、こたつ

23、流刑

24、汗が落ちた

25、「さあね」とひきがえるは言った。

26、傘、さす。辺りを見渡せない

27、月は、スポットライトのように

28、ワインを自販機で買うような・・・。

29、ミュート

30、ねこも、なにか言った



太宰さんは詩の人

2004-07-21 15:40:46 | 太宰
「私は、詩人というものを尊敬している。純粋の詩人とは、人間以上の

もので、確かに天使であると信じている。だから私は、世の中の詩人た

ちに対して期待も大きく、そうしてたいてい失望している。天使でもな

いのに詩人と自称して気取っている変な人物が多いのである。」

~「散華」

または、(当時の)詩自体を

「散文をただやたらに行をかえて書いて読みにくくして、意味ありげ

に見せかけている」~「郷愁」

と言い切ってもいる。

「私は、中原中也も立原道造も格別好きではなかったが、津村だけは好

きであった」~「同」

私は、津村信夫を読んだことがない、というか、中也も立原道造もほと

んど知らない。不勉強・・・。

太宰さんは他人の気障はお嫌いのようで、自分は十分気障で、三島に

「田舎者のハイカラ趣味」などと言われてしまっている。

まあ、太宰さん自身、「他人の甘さにはめくじらを立てるくせに、自分

の甘さを美徳のように考えたがる」と言ってるけれど。

私が、やたら改行するのは、気取ってるから・・・?

いや、単純に、この方が、読みやすいと思うから・・・。


兎も角、太宰さんは、小説家というより詩小説家という言葉が似合う。

この現代に到るまでの愛され方にしても。

詩小説といえば、プーシキンの「エウゲーニイ・オネ―ギン」を太宰は愛していたよう

です。

ひたすら待つ太宰さん

2004-07-21 15:09:14 | 太宰
太宰さんは、ずっと、待ってます。

今も、この今も。

「満願」
「走れメロス」
「待つ」
「斜陽」

待つということは、信じるにも通ずる。

祈り?

それは、果たして来るのか?来ないのか?

いや、来る来ないは問題ではないのかもしれない、

「なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に」~走れメロス

「もっとなごやかな、ぱっと明るい、素晴らしいもの」~待つ

待つということの、ドキドキ。

待たされるということの、不安。

待たせるということの、焦燥。

そういった感情の中で日々生きている。

でも、もっと、恣欲を超えた所にも何かあるような気がしてならないんだ。







お休み

2004-07-20 04:20:15 | 
ちょっと、本業が忙しいので、記事を書けないっす。
いろいろ書きたいことがあるんだけど・・・。
今も、こうやっていい訳みたいなこと書いてるのでもいっぱいいっぱい。
日課の巡回も軽く流して・・・。コメントも出来ない。

ホント、燃え尽きる人の気持ち、わからんでもない。
でも、自分は、まだ、燃えてもいないですけどね!
明日はお店で徹夜なので、何も出来ない。
もどかしいわ・・・。

好意

2004-07-18 03:36:38 | 
恋愛と情熱とは、消え去ることがあっても、

好意は、永久に勝利を告げるだろう

~ゲーテ


この言葉、納得はいかないのだけれども。

永久の勝利・・・。

少し悲しい意味も含んでいるんだろうか?


私が、好意を持っている人には、逆に苦手意識を持たれている気がす

る・・・。これも業かしらん。


負けたよ・・・

2004-07-18 02:48:47 | 
私は、これでも野球をやっていたんです。

高校生まで。

で、地方予選。

母校である、日比谷高校は、一回戦負け・・・。

このブロックでは、注目されてたんですが、如何せん相手は、同じ都立

江戸川高校。ここも注目されてたようで、いきなり一回戦で当たってし

まったのは、不運・・・。

これで、このブロックは、関東一高と江戸川が当たるのか・・・。

うちの高校は、都立ではなかなか強い方なんですけどね。

強豪私立には、敵いません。

私の時も岩倉、正則学園に負けました・・・。

彼らの夏は、終わった・・・。


おわりの、そしてはじまりのうた

2004-07-17 02:19:57 | 
「すべてのことは、もうわかってしまっているんだろうか」

渋谷

発車を待つ手すりに寄りかかって、ぼんやり

気がつけば、渋谷川を見下ろしていた

一回きりの旅へ

「我ながら馬鹿な考えだ」

代官山

無駄に広い美容室

「でも、もしそうだとしたら、僕らはどうする

 消化試合?永遠に続く暇潰し」

祐天寺

降りてゆく人たちを横目に開く本のページ

「言いすぎたジョーク?」

学芸大学から都立大学での高架から見渡す、閑静な住宅地

桃源郷?いや、まさか

「すべては出揃ってる

 あとは、それぞれから生まれて来る変奏曲

 それがいやだったら、ドレミから始めよう」

自由が丘

「ぬるま湯、ガムシロたっぷりのカフェグラッセ
 
 わかったつもりの深刻なお顔だこと」 

田園調布

地下に潜る

生まれ変わったこの駅で、古い路線に乗りかえる

「新しいものを僕らの手で!

 自己満足なんて蹴飛ばそう

 だから、一度、深く潜るんだ

 夜中に古い墓を暴くように」

沼部

さびれた駅で降りる

新幹線の下をくぐる

高速が駆け抜ける、音

「もっといろんなものを、見よう

 研ぎ澄ませ、感覚を

 見せ掛けだけのスピードや、

 積み重なっただけの情報に

 軽く挨拶だけして」
 
 多摩川の土手が見える

 僕は上る
 
 境界に広がる空間に踏み込む

 この世界に在る、実感を握りしめる

 そして、好きなうたを口ずさむ

 ~DOLPHIN SONG

 

 





カレーライスとニーチェの「悲劇の誕生」

2004-07-16 14:48:24 | 
壊れたお料理ロボットさんは、カレーが大好き。
で、カレーを食べる、食べる。ああ、おいしい。そして、汗、汗。

なぜ、こんなに暑いのにカレーを食べるのだろう。
科学的?な説明はいらない。

ニーチェ曰く、そこには、

「自分から恐ろしいものを求めるといった当たって砕けろ式な勇敢さをそなえている場合が、ひょっとしたらあるのではなかろうか?」

いや、ただ勝手に結び付けただけです。

でもね、台風とか、雷にドキドキする子供の気持ちにも、ほら。

自ら、恐怖を、悲劇的なものを欲する感覚。

本当に好きなこと

2004-07-16 13:28:24 | 
趣味は?
「えー、音楽鑑賞と読書です。」
なんて、面接をすると、
「ホントかよ」
と思います。
ちょっと意地悪して、突っ込んだ話をしてしまったりも。
「詩を書くことです」なんてのは、素直な答えで微笑ましいです。

本当に好きなことは、なんでしょうね?

それが、知りたいのです。

それこそが、あなたである証拠なのですから。

「で、あなたの趣味は?」

音楽鑑賞と読書です・・・。

言葉や音からその人の魂を感じることが、好きなんです。