時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

エースの矜持と長崎の社会正義

2024年08月11日 | 時のつれづれ・葉月 

多摩爺の「時のつれづれ(葉月の49)」
エースの矜持と長崎の社会正義

たくさんの感動とともに盛り上がった「パリオリンピック2024」も・・・ あと1日になった。
沸きに沸いた興奮に、つられた訳じゃないと思うが、
列島では地べたまでもが興奮し、大きな揺れを引き起こしてしまい、
お盆休みを控え「さぁ、出かけるぞ。」というタイミングで、交通網に多大な影響がでているらしい。

そんな興奮が冷めやらぬ先週末、
「あれっ?」と違和感を持つような二つの出来事を、思いがけず目にしたので、
思いの丈を少しだけ述べてみたい。

その一つは、先週末の「パリオリンピック2024」でのワンシーンで、
卓球男子団体の3位決定戦で、惜しくも敗れた日本チームのエース張本選手のコメントと、
陸上男子200メートルで3着に入った、アメリカのライル選手のレース後のコメントである。

メダル至上主義ではないと思いつつも・・・ つい、メダル獲得数に目が向いてしまうなか、
潔しを旨とする選手がいる一方で、例えマナー違反であろうと、ルール違反でなければ、
他人の迷惑など、どうでも良いと考えるメダリストがいたことを、どう捉えれば良いのだろうか?

オリンピックの魔物に、好かれたかどうかは分からないが、
準決勝に続いて、3位決定戦に敗れた・・・ 卓球男子ニッポンのエース張本選手は、
試合終了直後のインタビューで、唇を噛みしめ「僕が勝っていたら・・・ 。」との言葉に続けて、
「(ともに戦った)2人の選手は、責任を感じる必要はない。」とのコメントを残した。

一方で100メートルを制し、200メートルで2冠を狙ったものの、3着に敗れたライル選手は、
レース直後に、二日前にコロナウイルスに感染していたことを明かし、
他の競技者に感染させる可能性があると知りつつ、医療スタッフなどと共謀して隠蔽していたことを、
競技終了後、悪びれることもなくコメントすると・・・ 車椅子に乗って競技場を後にした。

張本選手の、敗因の責任を自ら被ろうとするコメントは、いかにも日本人らしいと思うものの、
ルールに違反してないんだから「問題ない。」と、平然と開き直るライル選手を見て、
こういったシーンの、一コマだけを切り取って論評するのは、国民性もあって困難を極めるが、
生活に恥の文化が根付くこの国では、常識的に考えられない行動だと思う。

ただ思うに、結果がともなわなかったときの、言動や振る舞いには、
一人のアスリートとしてではなく、
一人の人間としての・・・ 生き様というか、人間性が見えてくるから興味深い。

言い訳せず、責任を背負おうとした張本選手の敗因は、
いったい、どこにあったのだろうか?

専門的な知識のない素人が、ああだこうだと言っても仕方がないが、
技術的な問題だったのか、いや戦略的な問題だったのか、いやいやメンタル的な問題だったのか、
とってもクレバーな選手だけに、その答えはすでに見つけているのだろうが、
4年後には、笑顔でコメントしてほしいと願うのは・・・ 私だけではないだろう。

そして、もう一つ覚えた違和感は・・・ これは、こじつけになるかもしれないが、
先週末(9日)、長崎市で行われた原爆の日の「平和記念式典」で、
式典を主催した長崎市が、ロシアとベラルーシに加えて、イスラエルを招待しなかったことを捉えて、
この国を除くG7の各国が、式典への大使出席を拒んだことである。

こちらも、あくまでも個人的な見解と前置きさせてもらうが、
「平和記念式典」という位置づけを・・・ 被爆国という視点で捉えた、日本の思考と、
加害者であったり、第三者の視点で一つのセレモニーとして捉えた、世界の思考の違いが見えてきた。

私自身は、長崎市がいまリアルに戦争を続ける当事国に向けて嫌悪感を示し、
平和式典への招待にはそぐわないと、意思表示をするのは当然ことだと思っている。

長崎市は政治的な意図はなかったというが、それは後付けの詭弁であって、
誰が見ても、政治的な意図があったのは明らかだと思うが、
果たしてそれが・・・ 問題だったのだろうか?

政府や閣僚が、こういった対応を取るのは、絶対に無理だと思うし、
出席を拒んだG7諸国だって、わだかまりを抱えたままの欠席だと思う。
そんな中での長崎市の対応は、現状の世界情勢に一石を投じるという意味合いから捉えれば、
むしろ「よくやった。」と、見えないところで拍手した閣僚もいたんじゃなかろうか?

ただ一つだけ残念だったのは・・・ 「戦争当事国は、平和式典に招待しない。」と、
論点を明確にした上で一線を引き、毅然とした意思を示せば良かったと思うものの、
政治的な意図のあるなしで、論点を曖昧にし、巧みに凌いだといえば、そのとおりだが、
ここんとこは「ちょっと残念かな?」と思っている。

この国の人間が当たり前だと思っている、ニッポンの常識は、必ずしも世界の常識ではなく、
時と場合と、それぞれがおかれた立場によっては、非常識となることもあるらしい。
然は然り乍ら(さはさりながら)、けっして責任転嫁をせず、潔い国民性を、
私は多としたいが・・・ 如何なものだろうか?

アスリートであろうとなかろうと、為政者であろうとなかろうと、
人には立場立場で求められる役割があり・・・ 果たすべき責任がともなう。

様々な思いがあることは承知しているし、それを批判するものではないし、
私は古い人間なので、勘違いしているかもしれないと思いもするが、
張本選手が涙ながらに語った、エースとしての矜持と責任感、
長崎市が圧力を感じながらも貫いた、被爆国が訴求する社会正義に・・・ つい、ホロリときた。

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パリ・オリンピック 2024 メダリスト一覧 ( 金20 銀12 銅13 )

・大会2日目(7月27日夕刻~28日早朝)
 金 柔道 女子48キロ          角田夏美
 銅 〃  男子60キロ          永山竜樹

・大会3日目(7月28日夕刻~29日早朝)
 金 柔道 男子66キロ          阿部一二三
 〃 スケートボード 女子ストリート    吉沢恋
 〃 フェンシング 男子エペ        加納虹輝
 銀 スケートボード 女子ストリート    赤間凜音
 〃 水泳 男子400メートル個人メドレー 松下知之

・大会4日目(7月29日夕刻~30日早朝)
 金 スケートボード 男子ストリート    堀米雄斗
 〃 体操 男子団体            日本
 銅 馬術 総合馬術団体          日本 (自称・初老ジャパン)
 〃 柔道 女子57キロ          舟久保遙香
 〃 〃  男子73キロ          橋本壮市

・大会5日目(7月30日夕刻~31日早朝)
 金 柔道 男子81キロ          永瀬貴規

・大会6日目(7月31日夕刻~8月1日早朝)
 金 体操 男子個人総合          岡慎之助
 銀 柔道 男子90キロ          村尾三四郎

・大会7日目(8月1日夕刻~2日早朝)
 銅 フェンシング 女子フルーレ団体    日本

・大会8日目(8月2日夕刻~3日早朝)
 銀 フェンシング 男子エペ団体      日本
 銅 バドミントン 混合ダブルス      渡辺勇大 、東野有紗

・大会9日目(8月3日夕刻~4日早朝)
 銀 柔道 混合団体            日本
 銅 卓球 女子シングルス         早田ひな 
 〃 バドミントン 女子ダブルス      志田千陽 、松山奈未
 〃 フェンシング 女子サーブル団体    日本

・大会10日目(8月4日夕刻~5日早朝)
 金 フェンシング 男子フルーレ団体    日本
 銅 ゴルフ 男子             松山英樹

・大会11日目(8月5日夕刻~6日早朝)
 金 体操 男子種目別 鉄棒        岡慎之助
 銅 〃  男子種目別 平行棒       岡慎之助

・大会12日目(8月6日夕刻~7日早朝)
 金 レスリング 男子グレコ60キロ    文田健一郎
 銀 スケートボード 女子パーク      開心那
 銅 レスリング 女子68キロ       尾崎野乃香

・大会13日目(8月7日夕刻~8日早朝)
 金 レスリング 男子グレコ77キロ    日下尚
 銅 〃     女子50キロ       須崎優衣

・大会13日目(8月8日夕刻~9日早朝)
 金 レスリング 女子53キロ       藤波朱理
 銀 セーリング 混合470級       岡田奎樹 、吉岡美帆

・大会14日目(8月9日夕刻~10日早朝)
 金 ブレイキン 女子           湯浅亜実(AMI)
 〃 レスリング 女子57キロ       櫻井つぐみ
 〃 〃     男子フリー57キロ    樋口黎
 銀 スポーツクライミング 男子複合    安楽宙斗

・大会15日目(8月10日夕刻~11日早朝)
 金 陸上 女子やり投げ          北口榛花
 〃 レスリング 女子62キロ       元木咲良

 銀 高飛び込み 男子           玉井陸斗
 〃 卓球 女子団体            日本
 〃 レスリング 男子74キロ       高谷大地 
 〃 近代五種 男子            佐藤大宗

・最終日(8月11日夕刻~深夜)
 金 レスリング 男子フリー65キロ    清岡幸大朗
 〃 〃     女子76キロ       鏡優翔


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