時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

幸せになりんさい。

2022年04月16日 | 時のつれづれ・卯月 

多摩爺の「時のつれづれ(卯月の28)」
幸せになりんさい。

「 幸せになりんさい。 金持ちにならんでもええ。 偉い人にならんでもええ。
  今日一日が幸せじゃったと思えるような、毎日を送りんさい。
  明日が来るんを楽しみにできるような、生き方をしんさい。
  親が子どもに思うことは、みんな同じじゃ・・・ それだけなんじゃ。 」

これは直木賞作家・重松清さんの名作「とんび」に記された、数々の名言の中から、
私の心に一番深く刺さった一節である。

記憶が確かなら・・・ あの日も土曜日だったと思う。
未明に熊本で、大きな地震があった・・・ 6年前の4月16日、
息子の結婚式を控えた私たち夫婦は、親族とともに都内のホテルで朝を迎えていた。

北九州からやってきた妹家族は、新幹線が動いていたので、前日に上京できたものの、
中九州から上京予定だった相手方の親族は、前々日の大きな余震によって、
JR久大線が止まり、道路も通行止めになったことから、
時間的に博多駅にも小倉駅にも向かうこと困難となり、残念ながら欠席になってしまった。

息子の結婚式や、披露宴のことが気になるなかで起こった・・・ 想定外の天災だが、
いまとなっては、そんなこともあったと振り返ることができるものの、
嬉しかったことと、地震によって辛い思いをした人々がいたとの思いが交錯して、
素直に喜んで良いものなのかと思うと・・・ いささか複雑な日でもあった。

そんな1日の始まりは、6時過ぎの目覚めから始まった。
ベッドの上から、ぼんやりと天井を眺めながら、なにか考えてるわけでもなかったが、
なにげに思い浮かんだのが・・・ 重松清さんの名作「とんび」の一節だった。

「 幸せになりんさい。 金持ちにならんでもええ。 偉い人にならんでもええ。
  今日一日が幸せじゃったと、思えるような毎日を送りんさい・・・ 。 」だった。

息子には、1学年下に軽度とはいえ、知的障がいがある妹がいて、
小中学校のころは、近隣の同級生やクラスメイトから、なんだかんだと揶揄されていたらしい。
本人から泣き言や愚痴を、聞いたことはなかったが、
息子が感じていた辛さは、親が思っていた辛さよりも・・・ 格段に辛かったはずだ。

そんな息子の苦労を知っていたので、彼が大学を4年生の春に、
就職せずに、バイトで生計を立てながら、一人暮らしで音楽活動をしたいと言ってきたには、
正直なところ驚きを隠せなかったし、戸惑いもあったが、
「わかった。頑張れ。」としか・・・ 言えなかった。

薄々だが、そんな雰囲気を漂わせていたし、
息子の人生だから、息子がそうしたいのであれば、余計なことを言うのは止めて、
信じてやろう
、任せてやろうと・・・ 腹はすでに固まっていた。

そんな息子は、大学時代を通して約10年間、音楽活動を続けたあと、
30歳で一つの区切りをつけ、写真の専門学校に通うと、
偶然にも大学の先輩だった社長が経営するフォトスタジオに就職することができた。

フォトグラファーとして生活をはじめてから、6年が過ぎた年の春だった。
突然「結婚をしたい人がいるんだけど・・・」と言いだすと、
玄関の外で待っていた、彼女(嫁)を招き入れるもんだから、驚くやら、嬉しいやらで、 
天にも昇るような気持ちになったことを・・・ つい昨日のことのように思い出していた。

改めて振り返れってみれば・・・ 見守るだけで、
「そうか。」と「頑張れ。」しか言わない、頼りがいのない父親だったと思う。

なにもしてやれないまま、駆け足で過ぎて行った10代と20代だったが、
30代になると、キチンと人生を設計し、落ち着く場所を見つけてくれていたんだから、
陰に日向にサポートしてくれていた・・・ 女房の功績は途轍もなく大きい。

「幸せになりんさい。」の一節を思い浮かべ、回想に耽っていたら、 
「そろそろ起きようか?」と女房の声がして、
あっという間に・・・ 現(うつつ)の世界に引き戻されてしまった。

おそらく、良い夢を見ていたんだと思う。
夢ならば、もう少しだけ、このまま声をかけずいてほしかった。

もう一つだけ、触れておかねばならない大事なことがある。
4月16日は・・・ なんと、なんとだが息子の誕生日でもある。

偶然にも重なってしまった、結婚式と、誕生日と・・・ 熊本の地震
早いもので6年の月日が流れ、気がつけば二人の孫にも恵まれ、幸せな日が続いている。

今日は嫁もお休みだといってたので、
きっと、家族でランチにでかけるんだろう。

本音を言えば、一緒にお祝いしたいんだが、まずは家族を大切に愛情を注いでほしい。
年寄りは金は出しても、出しゃばってはいけない。
こればっかりは、しっかりと弁えておかなきゃ・・・ 嫌われてしまう。

「 幸せになりんさい。
  親が子どもに思うことは、みんな同じじゃ・・・ それだけなんじゃ。 」

結婚記念日、おめでとう。
誕生日、おめでとう。
なんだか気恥ずかしいが、家族を大切にして・・・ しっかり、ガンバレ!

コメント (8)    この記事についてブログを書く
« 悲劇だが他に選択肢なかった。 | トップ | 逝きし世の面影 »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (けいこ)
2022-04-16 06:12:02
息子さん、、お誕生日おめでとうございます。

ご両親の姿を見られて成長され ここまで来られたのですね。
そしてお嫁さん とても出来た方と思います。
これからの息子さん御一家にご多幸あれ!と心から言わせてください。

我が家の二人の息子たち、、それぞれ抱えてるものありますが支え合っているのが 不出来な母の私にはありがたく思ってます。(神社仏閣巡り続けます。)
いつも為になるブログをありがとうございます。
返信する
Unknown (霧子)
2022-04-16 07:14:23
多摩爺‥いつも呼び捨てでごめんなさい。。
なんか他人のような気がしないんです(__)

息子さんのお誕生日そして結婚記念日
おめでとうございます

心優しいステキなご両親に育てられ幸せな息子さんですね
これからの多摩爺のご家族に幸せあれとお祈りいています。

いつもありがとうございます。。
返信する
Unknown (多摩爺)
2022-04-16 08:39:50
けいこさん、おはようございます。

現役時代の私は、地震・雷・火事・親父みたいな、家庭を顧みない、仕事一筋の人間だったと思いますが、
いまじゃ炊事・洗濯・家事・親父として頑張っています。
不思議ですね、気づき一つで人って変われるし、それが苦にならないんだから・・・ ホントに不思議です。
人生は後半戦が面白いと言えるような、生き方をしていきたいと思っています。
返信する
Unknown (多摩爺)
2022-04-16 08:44:02
霧子さん、おはようございます。

是非、多摩爺と呼んでください。
ときどきですが、女房もそう読んでいます。
リタイアしてからはサンデー毎日ですから、楽しいことや、そういった話題がないかと日々探し求め、
それを文章にすることができれば、嬉しいなと思っています。
返信する
沁みました (cobamix)
2022-04-16 23:04:24
今日は、いつも以上に心に沁みました
返信する
Unknown (多摩爺)
2022-04-17 06:48:26
cobamixさん、おはようございます。

人生いろいろです。
冬は必ず春となるでしょうか。
私は一番苦労した人が、一番幸せになるんだと思っています。
返信する
Unknown ( kazukomtng)
2022-04-17 15:56:03
母親にとって、我が子は、まさしく、自分の腹を痛めて産んで育てた子なのですが、
光陰矢のごとし。
気づいたら、それぞれの道を歩いています。
育てる事も修行。
育てられる事も修行だったかと。
出しゃばらず、、、
はい、肝に銘じます。
くちこは、威圧感満載なので要注意です。
返信する
Unknown (多摩爺)
2022-04-17 18:55:47
くちこさん、こんにちは

仰ること、良く分ります。
子どもと言っても、既に経験豊かな大人ですから、威圧的にならず、適度な距離感が必要だと思っています。
「頑張りましょうね。」じゃなくて・・・ 「我慢しましょうね。」ですね。
返信する

コメントを投稿

時のつれづれ・卯月 」カテゴリの最新記事