多摩爺の「こりゃ美味い(その13)」
下関「ふく刺し」 (下関ふく・地理的表示保護制度登録産品)
この国には、滋賀県の近江牛、北海道の夕張メロン、愛知県の八丁味噌、沖縄県の泡盛など、
なんの意識もせず、普段の生活のなかで、飲んだり食ったりすることが可能な食品類のなかに、
農林水産省が地域特産の農林水産物や、
食品をブランド品として保護する「地理的表示保護制度」というものがあって、
これに登録されると・・・ 知的財産権を有するというから、ちょっとばかり格調も高い。
2016年10月、その「地理的表示保護制度」に登録されたのが故郷の逸品「下関ふく」である。
私が子供の頃は、正直言って「ふく」の「ふ」の字も記憶には残っていない。
当時のふるさとブランドといえば、そりゃもう・・・ 「くじら」、それしかないだろう。
私の体は南氷洋の鯨様に、大きくさせていただいたと言っても過言ではない。
その「くじら」が、欧米の意地悪で食べられなくなって、
がぜん勢いを盛り返してきたのが「ふく」だろう。
下関では、河豚(ふぐ)のことを・・・ 「不遇」に繋がることを嫌って「ふぐ」とは呼ばず、
「福」にあやかって「ふく」と呼んでいる。(よって、地元ではひらがな表記が多い。)
東シナ海や、瀬戸内海などで釣られた「ふく」は、
本州最西端の南風泊(はえどまり)漁港に水揚げされると、
仲介が袋に手を入れて買い手の前に来ると、買い手は袋の中に手を突っ込み、
見えないように指を握って買値を伝えて競り合う、他の市場では見かけない袋競りで取引されている。
私は西の人間なので、刺身といえば・・・ 関東の人たちが好む、赤身のマグロではなく、
白身のハマチ、タイ、カレイ、ヒラメの方を好んで食べている。
申し訳ないが・・・ 刺し盛りに白身があれば、間違いなくマグロより先に箸が伸びるだろう。
それは、おそらく・・・ サクサク感の赤身を好むか、
それとも、コリコリ感の白身を好むかの、食感の違いによるものだろうが、
そのサクサク食感と、コリコリ食感の間に割って入ったのが、
しっとり感に、弾力感をプラスした「ふく」である。
「ふく」は、一般的な刺身のように、刺身醤油と山葵で食べるのではない。
若干大きめの小皿に、ポン酢を垂らし、紅葉おろしを溶くと、
分葱(小葱の青い部分)をパラパラと散らせば準備OK
そして・・・ 菊の大輪が咲いたかのように、大皿に盛り付けられた芸術作品(ふくの刺身)から、
花弁を1枚ずつ剥がすかのように、2~3枚箸で摘まんで・・・ ポン酢に浸すと、
「ふく」のしっとり感と、弾力感に加えて、
紅葉おろしのピリッとした風味を、満面の笑みで味わうことができる。
美味い。
最高に美味い。
美味いと、口でいう前に、鼻の穴がポッと広がる一瞬があり、その時点で既に大満足している。
関東の人は、この美味さを知らないんだから、もはや気の毒としか言いようがない。
故郷では、この時期になると、町なかのスーパーの刺身コーナーで、
関東の「マグロ」のように「ふく刺し」をパックで売っていて、お正月の食卓には欠かすことはない。
年明け早々、松の内から首都圏には緊急事態宣言が出てしまい、いささか気が滅入るが、
一日も早く「ふく」にあやかり・・・ 「不遇」の時が去って、「福」が来ることを願ってやまない。
実家の母に頼んで、毎年送ってもらう「下関ふく」のお刺身
私は関東の人間ですが、オットの両親が九州出身なので、結婚してから西日本の味に親しみました。
マグロより白身が好きになったのもその影響ですね。お醤油も取り寄せてます。
コメントをいただき、ありがとうございました。
ふくのお刺身、お鍋、雑炊は、毎年恒例というか、年に一度の贅沢です。
ふくを食べると、お正月が来たって感じになります。
来年は、気分も幸福であれば嬉しいんですが、いったい、どうなるんでしょうか?
因みに私は、早くワクチン打ちたい派です。