前回は、MMT理論が正しいかどうか分からないので、政府が国債を引き受けたり、実質日本銀行券を「刷り増し」(実際の手続きは、パソコンのキーボードで数字を入力するだけの作業となるが)したりするとヤバいよねってことで、BIにはお金のようでお金でないクーポンを使ってみては?と提案した。なぜ国債引き受け、日本銀行券の刷り増しがヤバいかっていうと、生産されたもの以上に消費が行われることになれば、ものすごいインフレになるからだ…で、これはクーポンによって解決するのだろうか?
実際のところ、政府が直接クーポンを発行して人びとに渡すと、それは日銀券と同じように使われる(ただし「資本」として使われることはない)。クーポンは直接、消費に使われることになるから、消費が増えることには違いがない。そこで生産されたもの以上に消費が行われるならば、ものすごいインフレになることには変わりがない。せっかく配ったクーポンもただの「紙切れ(電子データ)」となるわけだ。だからクーポンにこだわることにインフレ防止の意味はない。
ただ「ものすごいインフレ」って来るのだろうか?
前回書いたように、日本の財政は赤字国債(特例公債)の発行で27兆6千億円賄っている。2018年度末で国と地方を合わせた長期債務残高は1100兆円を超え、対GDP比では196%と高水準である財務省のHP(pdf)がこうした状況が長年続いているにもかかわらず、日本の金利水準はゼロに張り付いたまま…いつまでたっても日本国債はデフォルトする気配が見られないし、ものすごいインフレも起こる気配がない…MMT理論が正しいかどうかはともかく、GDPの2倍の「借金」があっても破綻しないのは、国民経済内でどこかつじつまが合っている、すなわち「国の借金は民間の資産」になっているということがあるだろう。また、このぐらいの国債発行では、日本が持つ生産力を上回る「消費力」なんてまだ出てきていないということも考えられる。
MMTでは「マクロ的な供給不足からインフレを起こすような場合」には増税を行って、市中からお金を回収することになるが、その前に、日本にどのくらい生産力があって、どれだけ国債発行(もしくは日銀券刷り増し)ができるか計算できればいいかも知れない。そんな計算ができない、難しいからこそ、MMTでは通貨発効を政府が中央銀行を通じて行い、インフレになったら(なりそうだったら)増税で回収するという方法をとっているのだろう。
増税で回収と書いているが、何もインフレが起こる(起こりそう)な時にやるばかりではない。BIをやった場合、働いていて賃金収入がある人からは所得税という形で回収すればよいし(BIの分も含め税務署に申告する)年金制度の1階部分は必要なくなるので、その分の保険料もチャラにして増税で取ればよい。そうすれば、実質BIを配るのは非労働者に対してのみである。日本の就業者数はおよそ6600万人総務省統計局だから、月6万円のBIを配るのを4000万人とすると、1ヶ月2兆4千億円、1年で28兆8千億円となる…あっ、だいたい現行の国債発行額ぐらいに近づいた。なんとかなるカモしれない。
おまけ…いすみ鉄道大多喜駅