たたらワークス★漫画・ドラマ・小説のネタバレ感想

かたやま和華『探偵はときどきハードボイルド』あらすじ・ネタバレ感想

かたやま和華著『探偵はときどきハードボイルド』あらすじ・ネタバレ感想。
昭和の探偵に憧れる雑司が谷のプライベートアイ・天満桃芳の元に新しい大家として現れたのは犬顔美形男子・端城紅。
コンプライアンス遵守で手柄は警察へ捧げるのが桃芳のやり方だが、無気力無感情でハシビロコウのような紅のおかげで何だかヤバいことに首を突っ込むはめに……。


『探偵はときどきハードボイルド』

著者:かたやま和華
発行:株式会社集英社(集英社オレンジ文庫)


★項目クリックでページ内ジャンプ
(goo blogアプリはブラウザ接続で可能)

『探偵はときどきハードボイルド』あらすじ・ネタバレ感想




『探偵はときどきハードボイルド』登場人物 

●天満桃芳(あんみつ・ももよし)
 雑司が谷の私立探偵
 [ふくろう荘]が住居であり事務所
 昭和64年1月7日生まれ(1月8日から平成)
 会津若松出身

●端城 紅(はしじろ・こう)
 犬顔美形男子で少年に見えるが24歳
 無気力無感情でハシビロコウのよう
 東海林桃子の孫で[ふくろう荘]を相続
 ブルックリン生まれ芸大卒の青年投資家

*☆*・*☆*・*☆*・*☆*・*☆*・*☆*

<紅の家族(名前だけの登場)>
●東海林桃子(しょうじ・ももこ)
 半年前に亡くなった[ふくろう荘]の大家
 紅は会ったことがない
●端城杏奈(はしじろ・あんな)
 紅の母
 18歳で33歳のバンドマンと駆け落ちした
 以後は音信不通
●端城 純(はしじろ・じゅん)
 バンドマンで杏奈とアメリカに渡る
 ニューヨークで現代美術に出会う
 帰国後は音楽を捨て美術商になる

<桃芳の関係者>
●由利大雅(ゆり・たいが)
 黒髪・ボブ・オリエンタルビューティー
 バー[カンパネルラ]の経営者でマスター
 自称「リリィ」、女装家
●星崎 守(ほしざき・まもる)
 [カンパネルラ]のバーテンダー
 もうすぐ還暦

●鴨志田栄悟(かもしだ・えいご)
 雑司が谷警察署の刑事
●小篠麻里鈴(こしの・まりりん)
 あの曲が流行った年(1986)に生まれた
 警視庁組織犯罪対策第六課のエリート刑事
 桃芳にとってマドンナ

*☆*・*☆*・*☆*・*☆*・*☆*・*☆*

<事件関係者>
●溝口木綿子(みぞぐち・ゆうこ)
 元芸者で89歳、生涯独身を貫く
 桃芳にいつもおつかいを頼む
 キャッシュカードすり替え詐欺の被害者

●大船健斗(おおふな・けんと)
 「高橋」を名乗り木綿子を訪ねる
 特殊詐欺の受け子
●枝川(えだがわ)、逸見(いつみ)
 特殊詐欺の仲間だが大船を拉致
●甲斐田比呂(かいた・ひろ)
 [如月コーポレーション]営業三課課長
 暴力団のフロント企業
●笹野(ささの)
 甲斐田の用心棒

******** ******** ********

●真山樹莉(まやま・じゅり)
 桃芳に浮気調査を依頼する専業主婦
 4歳の息子がいるタワマンの住人で27歳
●真山晴喜(まやま・はるき)
 樹莉の夫で33歳、環境デザイナー
 カフェ店員の“葵”と不倫中
●葵(あおい)
 本名:蒲原環(かんばら・たまき)

******** ******** ********

●笠森亜藍(かさもり・あらん)
 14歳・中2
 母・あずさはシングルマザーの小児科医
 母に代わって祖母が面倒をみていた
 祖母が亡くなってグレ始める
●清瀬(きよせ)と美川(みかわ)
 亜藍に金を持ってこさせる
 “野菜”(薬物)常習者



『探偵はときどきハードボイルド』あらすじ

昭和のドラマの探偵に憧れている天満桃芳(あんみつ・ももよし)は、コンプライアンス遵守が基本の令和の探偵だ。
常連客・溝口木綿子におつかいを頼まれた桃芳は、木綿子が特殊詐欺に遭っていることに気づく。
木綿子を訪ねて来たのは、銀行協会の高橋を名乗る見るからに胡散臭い男だ。
桃芳は高橋を尾行するが、下校中の小学生が「名たんていのももよしおじさん」を見つけわらわらと寄って来てしまう。
尾行に気づいた高橋は全力疾走。
だが、高橋は逃げる途中で犬顔の美少年とぶつかる。


桃芳は出し惜しみせずに集めた証拠を警察に丸投げし、半年前に大家の東海林桃子(しょうじ・ももこ)が亡くなってから独りで住んでいる[ふくろう荘]に帰宅した。
驚いたことに、高橋とぶつかったあの犬顔男子が台所で夕飯を作っている。
端城紅(はしじろ・こう)と名乗った男は、高橋とぶつかった際にバッグを取り違えたと言う。
バッグの中には、すり替え詐欺の被害者のキャッシュカードが入っていた。


紅は、自分は桃子の孫で遺産分けによりふくろう荘の大家を引継いだと言う。
桃芳は、桃子から娘や孫の話を一切聞いたことがなく……。



『探偵はときどきハードボイルド』ネタバレ感想

中折れ帽、モッズコート、細身のダークスーツに黒系ナロータイ、そしてくるくるパーマヘア。
天満桃芳(あんみつ・ももよし)のファッションは、おそらく松田〇作さんをイメージしてのものだろう。
だが、令和の探偵はコンプライアンス遵守が基本と言うだけあって、ドラマのようなハードボイルドとはいかない。
なんせくわえ煙草で街を闊歩するだけでも白い目で見られる世の中だ。


格好だけは松田〇作の桃芳の主な仕事は、独居老人の買い物代行、商店街の壊れたシャッター修理、近隣の小学校で定期的に防犯対策の講習会を開くなどの地域貢献活動だ。
探偵というより町の雑用係に近い。
そして、張り込み(浮気調査)の際は、メロンパンといちご牛乳が定番だ。
ハードボイルドとは真逆のゆとり具合だ。


そんな桃芳を、新しい大家の端城紅(はしじろ・こう)は“昭和コスプレ探偵”だと揶揄する。
桃芳としてはコスプレではなくせめてオマージュとかリスペクトと言ってほしいようだが、天の邪鬼気質らしい紅はわざと煽っているようだ。


探偵なのか便利屋なのか微妙な桃芳だが場数を踏んでおり肝が据わっている。
暴力団のフロント企業[如月コーポレーション]の甲斐田と渡り合う所は、とても昭和コスプレ探偵とは思えない。
チャラそうに見えて正義感はシッカリ持っている。
別れさせ屋を雇って浮気をでっち上げた依頼人には料金をふっかけているが、後味の悪さを感じるところ、真面目だ。


読みながら、桃芳はちゃんと料金をもらっているのだろうかと心配になる。
お年寄りやちびっ子達に人気があっても収入に繋がっているように思えない。
桃芳は長期間に渡り家賃を滞納している上、400万円の借金まである。
青年投資家の紅は、本来なら桃芳に退居してもらい[ふくろう荘]をマンションにでも建て替えた方が良いに決まっている。
しかし、祖母が賄い付きでふくろう荘を営んでいた為か、大家業を引継いだ紅もたった一人しかいない店子・桃芳の為に食事まで作っている。
可愛げはない紅だが律儀だ。


紅はなぜふくろう荘を継いだのか。
ろくに家賃も払っていない桃芳を退居させようともせず、すり替え詐欺のアジトまで桃芳の為にやって来るなんて好奇心旺盛では理由がつかない気がする。
ツンツンしながらも[天満桃芳探偵事務所]のホームページを頼まれてもいないのに作ったり、桃芳の行きつけだがツケを払っていないバー[カンパネルラ]に挨拶に行ったり、どうしてそんなに桃芳のフォローをしているのか分からない。
続編を考慮してわざと描いていない秘密があるのだろうか。


昭和64年(1989)1月7日生まれの桃芳はギリギリ昭和生まれだ。
翌日の1月8日から年号が平成になった。
紅の周りは良く言えばサバサバ、悪く言えば無機質な感じが漂っている。
対して桃芳の周りは人間関係も懐かしい昭和の雰囲気が漂っている。
そこにツンツンキャラの紅が惹かれる何かがあるのかもしれない。

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

ありがとうございました(人´∀`*)

コメントを投稿するにはgooブログのログインが必要です。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「小説のあらすじ・ネタバレ感想」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事